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早稲田が先駆者になる! 男子ハンド部・松信亮平コーチが描く「大学スポーツの今とこれから」

早稲田大学男子ハンドボール部

コーチ:

松信亮平(まつのぶ・りょうへい)さん

同大学同部出身。在籍時代は関東学生ハンドボール・秋季リーグで最優秀新人賞、春季リーグで優秀選手賞や特別賞を受賞、インカレでは優秀選手に選出。2008年に日本ハンドボールリーグのトヨタ紡織九州へ加入、2013年に琉球コラソンへ移籍。主将及び選手兼コーチを務めながら2021年シーズンに引退。2024年、同部コーチに就任。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 目指すは、日本一
  • “早稲田らしさ”を常に意識
  • 活動は学生主体

「ハンドボールをやりたい」。強い思いで受験した部員ばかり

大学ハンドボールの草分け的存在として名を馳せる早稲田大学男子ハンドボール部。日本ハンドボール協会の設立と同じ1938年に創設され、日本一を目標に掲げながら今日まで積極的に活動を続けています。

同部ご出身で実業団でも活躍され、引退後は家業の畜産業をしながら競技の普及活動を行っているコーチの松信亮平さんに、部の特徴や学べること、大学ハンドボールの課題などをお聞きしました。

ー 今年2024年4月よりコーチに就任されました。再び同部に戻って来られて、部や部員の方々の雰囲気をどう感じていますか。

2021年シーズンに現役を引退し、家業である畜産業を継ぎました。現在も地元の茨城でそれを続けながら、平日週1回と土日に指導をしています。東伏見の練習場まで片道2時間かかりますが、何とか時間を見つけて来るようにしています。

部員は総じて目的意識が高く、ハンドボールに対して真摯に取り組んでいる印象です。早稲田大学はスポーツ推薦をほとんど取らないので、この競技をやりたいという強い意思がある学生が受験を経て入部しているからとも言えます。

とはいえ、僕ら世代よりもすごく真面目ですね。それは、コロナ禍やコンプライアンス遵守など、彼らを取り巻く環境が変わったことも大いに影響していると思います。

ー何名の方が在籍されていますか。

今は27名です。定員は設けていません。学年によりバラつきはありますが、僕が在籍していた頃もそのくらいの人数でした。現在はその半数が寮に入り、生活を共にしています。寮は希望して枠が空いていれば入ることができます。特に1年生は優先的に受け入れています。

指導や活動の核となる“早稲田らしさ”、“学生主体”とは

ー指導方針を教えてください。

監督は“早稲田らしさ”を強調して指導を行っています。早稲田らしさとは、建学の精神に則り、「当たり前のことを当たり前に行う」ことです。

うちの部で言うと具体的には、学生が主体となり、それぞれが自主性を持って何事もアグレッシブ、かつひたむきにプレーをすること。
例えばルーズボールに対する姿勢なら、ワンチャンスをモノにする。そのためには、チーム一丸となり泥臭くチャレンジし続けよう、ということを共通認識にしています。

ー学生主体とは、具体的にどんなことを行っているのでしょうか。

僕らの頃から、練習メニューは4年生が考え、部員への説明や指示出しも4年生が率先して行っています。ただ、いくら賢い学生たちとはいえ、社会人1年目にも満たないわけです。そう考えると、足りないところが多々みられるので、早い段階でもっと高いレベルの戦術や考え方に落とし込ませるべきだと思うんですね。

指導者が長きに渡り同じ戦術を組むのと、学生自らが考えたことを積み上げていくのでは、どちらがいいのかは一概に言えません。ですから、その間を取って提案していくことが、コーチとしての僕に求められていることかなとは思います。

他に主将と副主将も4年生が担っています。下級生の役割としては、モップかけや水回りの掃除などを行っていますが、僕は近くにいる人、気づいた人がやればいいと思っています。それが一番、練習をスムーズに進められますよね。

実業団で所属していた琉球コラソンでは、部活よりももっと練習時間が限られていました。与えられた時間をいかに上手に使うことができるか、そのためには年齢や序列は関係なく、掃除等はみんなが行っていたんです。率先垂範ではないですが、そういった考え方や慣習が自然と広まればいいなと思います。

自分から選手と距離を縮めようとは思いません

ーそれらを踏まえて、目指していることを教えてください。

全員が同じ方向を向く。具体的には日本一になることですが、これをみんなが目指して戦うことが一番大事なことだと思っています。

また、大学生って大人でもなく子どもでもないような、でもやっぱり大人なのかな(笑)。とにかく、どのように接していいのか非常に難しい年代です。

だからこそ、選手ひいてはひとりの人間としてどうあるべきかという姿勢をしっかり伝えていきたいです。それは、社会人になってから自分を守ってくれると思うので重視しています。

そして、早稲田大学に入ってよかったと思えるような4年間になるよう、サポートに努めたいですね。

ー選手との接し方はどういったことを意識していますか?

年齢や立場の違いはありますが、ひとりの人間として接することを意識しています。それは振る舞い、言葉遣い、声がけ、全てに共通してですね。

ですから、本音で話すことが一番だと思っています。ただ、時には何かに包んで話すべきこともあると思うので、その時の状況や選手に合わせるようにしています。

そうは言うもののコーチになったのは4月からで、しかも週1回しか来ないおじさんなので(笑)、コミュニケーションはそこまで深く取れてはいません。回を重ねるごとに距離は少しずつ自然と近くなっているかなという感触はありますが、自分のことをこう思ってほしいとか、自分から距離を縮めようとか、僕にはそのようなエゴはないです。

ただ卒業後に振り返って、この大学で4年間頑張って良かったなと思ってほしいんです。みんながそう思えるチームになるようにしていかなければならないという責任を感じています。
また、OBとの関係性を作っていくことも大事だと思うので、その部分も心がけていきたいですね。

ー部員の方々の経験、未経験の割合はいかがですか。

今は全員、経験者です。中学までは他の競技をやっていたけれど、高校からハンドボールを始めた選手が多いと思います。

もちろん、もっと小さい頃からやっている選手もいます。彼らはボール捌きやハンドリングがやはり慣れているというか、ちょっと違いますね。ですが、高校から始めて日本リーグに行く選手も一定数います。

むしろ遅く始めた選手の方がモチベーションが高いかもしれません。というのも、高校ともなると自分の意思で選択しますよね。つまり好きであることを前提に、いろいろ観察や研究もして、吸収するのもすごく早いんですね。

ですから、始める年齢は関係なく、逆にいろいろなスポーツを経験してハンドボールに辿り着いた方がメリットがあると僕は感覚的に思っています。

大学スポーツの今とこれから

ー続いて、大学スポーツについてお聞きします。大学の部活動は社会に出るための学びの場とも言えますが、今後の展望としてはどのようなことをお考えですか?

変わるべきところも多くあるのでは、と思っています。選手は、プレーすることがもちろん最優先事項ですが、それをしながらいろいろなことができると思うんですね。

僕は選手時代から、SNSやstand.fmを行っていました。また、オリジナルTシャツを販売し、その売り上げで購入したボールを幼稚園や保育園に寄付したり、東日本大震災の時もチャリティーでTシャツを作ったりすることもしていました。

そのような社会貢献や、競技の普及発展につながる活動を大学の段階から行ってもいいのではないか、と思います。変わりゆく世の中に合わせて、大学スポーツも新しい提案をしていけたらいいですよね。その先駆者としてうちの部が切り拓いていけたらいいなと思います。

いろいろなことができるのは選手だけではありません。うちの部のスタッフは、広報やOB連携、試合運営など6つの部門に分かれて活動しています。組織化されていて、それぞれで社会に役立つスキルを身につけられます。

大学スポーツは他の学生と違うプラスアルファが生まれやすいと言えます。社会に出た時に自分の強みにもなると思いますね。

ー大学スポーツを一つのビジネスとして収益を生み出そうとしている動きも見られます。これについてはいかがでしょうか。

ハンドボールも、試合観戦にチケットを購入していただくことは間違いなくやるべきだと思います。ただ、メインターゲットが保護者の方々なので数は限られますし、実現のためにクリアするべき課題がいろいろあります。

それでも行う意義はあると思うので、例えば公式戦ではない、早慶戦や練習試合等でトライしてみるのも手だと思います。“大学スポーツでもお客さんは入る”という実績を作れたら、変化が起きるのではないかなと。

今よりも少しだけ金銭的な余裕が生まれることで、できることは間違いなく増えます。ですからまずは、支えてくれる方々を含めて、一人ひとりがちょっとだけ幸せになれるくらいのお金を作れたらいいなと思います。

ー最後に、このチームで学べることや得られること、気づき等を教えてください。

伝統あるチームなので、他大に比べて縦のつながりが強いと思います。20代から40代くらいまでのLINEグループがあるのもなかなかないですよね。何かあったら、先輩など多くの方々に助けてもらえる雰囲気というのはあります。

そして我が部は大学スポーツに限らず、もっと広い意味でこれからのハンドボール界をリードしていくチームのひとつだと思います。技術も人としても確実に成長できて、有意義な4年間を送れると思います。

選手との関係について「積極的に関わろうとは思わない」とおっしゃった松信さん。
ですが、「部員たちは後々振り返って、この大学で良かったと思う4年間を過ごしてほしい」と幾度も発言され、取材中も側で練習をしている選手のみなさんのことを常に気にかけていました。何より、平日にお仕事を終えてから2時間もかけて指導に来られるという行動そのものが、部に対する深い愛情の証でしょう。強固な縦のつながりも得られる、充実した4年間を過ごせそうですね。貴重なお話をありがとうございました。


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