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実はすごく合理的なのです…松戸高校陸上部・蓑和監督「“みんな仲良し“が好成績を生む理由」

松戸市立松戸高等学校陸上競技部

監督:

蓑和廣太朗(みのわ・こうたろう)さん

同校同部出身。中学から長距離を始め、高校時代は全国高校総合体育大会に3年連続出場。進学先の東洋大学でも関東インカレ出場などで活躍。卒業後は教員として主に松戸市内の中学校で陸上競技部を指導。2023年に同校へ赴任、現職。指導の傍ら選手としても競技を継続中。視覚障害者のガイドランナーも務めており、2017年世界パラ陸上ロンドン大会では銅メダル獲得の和田伸也選手を併走。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 目標は、全国高等学校駅伝競走大会出場
  • “日本一、笑顔が似合うチーム”がモットー
  • 「陸上が好き」な気持ちを重視

県大会出場の常連、松戸市立松戸高等学校陸上競技部。特に長距離において“憧れの部”として受験する生徒も多く、最近は昨年赴任した監督・蓑和廣太朗さんの指導により、大会ごとに多数の部員が自己記録を更新する好成績を収めています。スポーツ推薦を取らない公立校ながら、結果を出し続ける強さの秘密や魅力、指導方針などを蓑和さんに取材しました。

日本一、笑顔が似合うチームにしたい

ー小学校まではサッカーをされていたとのことですが、陸上競技に転向したきっかけと、長距離に魅了された理由を教えてください。

本当は中学でもサッカーを続けるつもりでした。ですが当時、中学の陸上競技部の先生から声をかけてもらいまして、逃げられないというか(笑)、右も左もわからぬまま言われた通り走り始めて今に至っています。


写真提供:蓑和廣太朗さん

 

短距離は得意でしたが、長距離はむしろ苦手だったんですよね。その思いもあって練習が本当にキツくて、指示されたメニューをこなすことだけで精一杯でした。ですが次第に、市内大会で優勝や県大会で入賞できたり、タイムをどんどん縮められたりして、嬉しいという感情が湧いてきました。それが原動力となり現在も続けられているのだと思います。

松戸高等学校は私の母校です。在学時にご指導いただいた恩師のようになりたいと思い教員を目指し、指導者として再び戻ることができました。部は、全国高等学校駅伝競走大会出場を目標に掲げています。


写真提供:蓑和廣太朗さん

 

ー練習を拝見しました。真剣さはもちろんありますが、みなさん楽しそうですね。

男女一緒に練習をしていて、非常に仲が良いと思います。昨日も大会がありましたが、部員全員で全力を尽くして応援していたのは、うちの部だけだったと思います。

私は“日本一、笑顔が似合うチーム”を目指しているんです。勝敗は常に付きまといますが、最終的にはやっぱり笑顔で締め括りたい。それを心がけながら指導しています。

いわゆる強豪校って、練習は男女別、監督も異なることが多く、監督がひとりで男女をまとめて見るというのは、全国トップレベルでは無いに等しいんですね。それでも、私はスタイルを変えるつもりはありません。このまま高みを目指していきます。

余談になりますが、今年のバレンタインの時に、女子部員1人1人が男子部員1人1人に手作りチョコを渡したんですね。そうしたら、今度はホワイトデーに男子全員が女子部員に手作りのお菓子をあげたんです。

私にもくれたのですが、もらった嬉しさだけではなく、部員たちの行動に対しても心が温まりました。すごくいいなぁと思いますね。

挨拶は3年生から…チーム作りが上手くいくルール

ーチーム作りが上手くいくコツはあるのでしょうか。

挨拶や声かけは、3年生から下級生にすることを意識しています。一般的には逆ですよね。1年生は先輩より先に挨拶をしなければいけない、準備をしなければならない。そういう慣例が多いと思います。

ですが、入学したばかりでただでさえ学校や授業に慣れていないのに、部活でもさらに追い討ちをかけるようにいろいろなことを課せられるって、かなりしんどいと思うのです。なので、1年生はとにかく練習に集中できるよう、心に余裕がある2年生、3年生が積極的に働きかけましょう、ということにしています。

先輩から声をかけてもらうと1年生は嬉しいし、部の風通しが非常に良くなるんですよね。チームの雰囲気がぐっと明るくなるのを実感しています。

また、練習後は「お疲れさま!」という意味合いで、先輩後輩関係なく、みんなでハイタッチし合うようにしています。それをすることで、練習がキツくても最後は笑顔になれるんです。

ーこのようなことはいつ頃からされていますか。

8年ほど前から行っています。帝京大学ラグビー部の監督の方の本を読んだことがきっかけです。

当時、帝京大ラグビー部は全日本で何連覇もしている圧倒的な王者でした。そういった強豪がこのようなことを実践していることに感銘を受け、すごく理に適っていると思い取り入れました。

ー蓑和さんと部員のみなさんとの距離感も程よい印象です。親しき仲にも礼儀あり、という言葉がピッタリ合いそうです。

練習中は厳しいこともありますが、練習以外の時間では近い距離感で何でも話し合いますね。

とはいえ、あまりに近すぎると大事な時に結果が出せなかったり、甘えを言い訳にしたりすることも出てくるので、本番の時にしっかり勝負するためにもそこは気をつけています。練習後に一人ひとりと対話を心がけて、コミュニケーションを取るようにしています。

ー怪我や不調など、悩みを抱えている選手への対応はどうされていますか。

少しでも痛みや違和感があれば、休ませるようにしています。みんな走ることが好きなので練習したい気持ちはわかります。ですが、1、2日休めば良くなるものを、我慢して続けた結果、1、2か月痛みが残ってしまうのでは大きな差になります。そのようなことを説明して、無理をさせないようにしています。

結果を出し続ける、強さの秘訣とは

ー2年前までは中学校で指導されていました。中学生と高校生への接し方の違いを教えてください。

中学生の方がより密にコミュニケーションをとっていましたね。例えば100教えたいことがあれば90くらいその通りにやらせていました。ですが現在では、100教えたいことがあれば私の考えは50くらいに留めて、あとの50は自分たちで考えて取り組むように指導しています。

ー競技面での指導方針もお願いします。

“動き作り”と言って、体の動かし方や使い方をトレーニングに取り込んでいます。具体的には、腕の振り方や足の接地ポジション、タイミングを反復して体に覚え込ませています。

これを行うことで効率のいいフォームにつなげていきます。やるやらないでは、成長の度合いに大きな差が出ると思うので、重点的に行っています。

ー強さの秘訣や結果を出せる理由はどこにあるのでしょうか。

「陸上が好き」という気持ちを持続できるかどうか、だと思います。走ることを「やらされている」と感じると、嫌な気持ちが芽生えたり、タイムが伸びなくなったり、しんどいと感じてしまいます。

好きであればたくさん練習したいですし、向上心を持って練習を重ねれば、必ず強くなっていきますよね。部員みんなが好きという気持ちを抱き、それが代々続けば部全体のレベルアップになると思います。

ですので、選手が走ることをずっと好きでいられるようにすることが私の役目だと思っています。そのためには、指導だけでなく環境作りも重要だと考えます。それもあって“日本一、笑顔が似合うチーム”を目指しているんですね。今はアットホームな関係を築けているので、部員たちは受け身ではなく、走ることを自ら楽しんでいると思います。

「陸上競技部に入りたいから」という受験理由も多い

ー練習日と入部方法を教えてください。

基本的に月金土は朝練のみ、水は午後練のみ、火木は朝練と午後練を行っていて、日曜がお休みです。高校の部活にしては少ない方だと思います。

入部に関しては、公立校なのでスポーツ推薦はありません。基本的に一般受験になります。千葉県の公立高校は入試科目に実技試験を実施している学校もあり、本校も行っています。合唱部希望なら歌唱したり、野球部なら野球のプレーをしたり、陸上なら走ったり、ですね。

実技試験を受けて入部した生徒が多いですが、実技を受けていなくても入部したいという生徒もいます。そういう生徒でも努力をして駅伝メンバーになっています。長距離は努力次第で結果がかなり変わるので本当に3年間で大きく成長しますね。

現部員のうち、中学も陸上競技部だった生徒もいますが、サッカーやバスケ、剣道、柔道など別競技からの転向者も多数います。今のうちのエースは、中学時代は野球部だった生徒です。

別競技からの転向理由は、ありがたいことにうちの部に入りたいからということが結構多いです。この部を目指して、学校を受験してくれています。
陸上が好きで、ここで走りたいと思ってくれる生徒はみんな大歓迎です。

ー目標は全国高校駅伝出場とのことですが、同競技には箱根駅伝という有名な大会もあり、毎年多くの人から注目を集めています。駅伝の魅力はどういったところにあると思いますか。

ひとりでは成し遂げられない目標をみんなで共有し、それを全員で達成した時はひとりよりも何十倍も嬉しい気持ちになれる。それが駅伝の持つ魅力だと思います。

また、結果が出なかった時は、ひとりで浸るよりもみんなで悔しんだ方が次への活力にもなります。勝敗抜きに、チームスポーツの良さというのはそういった面にあるのではないでしょうか。

ー最後に、松戸高等学校陸上競技部で学べることを教えてください。

この先プロや実業団に入って競技を続けられるケースはごく少数です。だからと言って陸上競技が将来に繋がらないかと言えば、決してそうではありません。

競技を通して、社会で生きていくための最低限のマナーや礼儀を身につけられます。何より、仲間の大切さを感じられることが大きいと思います。

もちろん、アスリートとしての技術向上や成長も見込めるので、ここから箱根駅伝や、女子であれば全日本大学女子駅伝対校選手権大会出場を目指して、大学へ進学してもらいたいですね。夢を叶えられる進路につながるよう、私は全力で指導します。

ー練習見学時間はちょうど夕方にかかる頃。柔らかな陽光に照らされて、みなさんの笑顔がよりいっそうキラキラと輝いて見えました。それは「好きこそ物の上手なれ」の言葉の如く、好循環が生んだ賜物とも言えます。好きなことに精一杯打ち込める充実した3年間を送れそうです。貴重なお話をありがとうございました。



松戸市立松戸高等学校陸上競技部
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