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駅伝の世界は戦国時代…箱根駅伝出場を目指す麗澤大学・山川監督が明かす「決意と執念」

麗澤大学陸上競技部

監督:

山川達也(やまかわ・たつや)さん

福井県立美方高等学校、中京大学在学時は全国高校駅伝、出雲駅伝など数々の主要大会に出場。卒業後は愛知・弥富高等学校(現・愛知黎明高等学校)の教員を務める。2010年に麗澤大学陸上競技部のコーチに就任、2017年より現職。青山学院大学陸上競技部の原晋監督とは大学の先輩後輩の関係。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 目標は、箱根駅伝出場
  • 4年のスパンで実力を確実につけられる
  • 競技を通して社会性も身につく

箱根駅伝に絶対出たい! そんな選手ばかりです

箱根駅伝出場を目指す麗澤大学陸上競技部。創部から約20年が経ち、積み重ねた練習の成果は着実に現れています。特に山川さんの監督就任以降は成長著しく、2018年には予選会12位、2019年は11位(どちらも次点)、昨年2023年も15位と、本戦出場まであと一歩の位置に台頭してきました。

ご自身も競技経験者である山川さんに、チームや駅伝の魅力、指導方針、そして箱根駅伝への思い等を取材しました。

ーコーチ時代も含めると約14年、同部を指導されています。どんなチームでしょうか。

1学年10人くらい、総勢40人ほどで活動しています。これは他大チームと比べると少ない方だと思いますね。大学自体、小規模にこだわっていまして、学生ひとりひとりとしっかりコミュニケーションを取ることをモットーとしています。陸上競技部もそれに則った形です。

私はもともと高校の教員で、大学に生徒を送る側の立場でした。進学する卒業生は充実した大学4年間を過ごしてもらいたい、活躍してもらいたいという一心でしたので、それらを叶えられる環境だなと思いますね。

但し、小規模でコミュニケーション重視というとアットホームな感じを想像されるかもしれませんが、うちの部はそう捉えてほしくない、とお伝えしたいです。

ー具体的に教えてください。

それではやっぱり勝てません。そんなに甘くないということです(笑)。学生駅伝というのは、日本におけるアマチュアスポーツの中で一番厳しく、プロに近い世界と言えます。斬るか斬られるかの下剋上、戦国時代と言っても過言ではありません。

居心地の良さというのは、上下関係やオフの時間には作ったほうがいいかなと思いますが、練習中は常に真剣勝負です。「自分がリードして、箱根駅伝初出場を決めてやる!」という強い意志と覚悟を持った選手を望みます。

ーそういった学生さんが集まっているんですね。

例えばキャプテンの鈴木康也選手は高校時代、箱根駅伝出場校をはじめ、複数の大学から声がかかりました。ですが、自分の力で箱根への切符を手にしたいという志を持って、うちに入部してくれた選手です。

彼のような、高校の時から既に能力の高い選手が箱根未出場の大学に来てくれるのは稀ですが、みなそういった思いで練習をしています。

大学4年間で、大きく成長できる選手とは

ーみなさん、どのような経緯で入部されるのですか?

基本的にスカウトです。私とコーチ2人の計3人で全国を回って声をかけています。ただ、スカウトも争奪戦です。箱根駅伝優勝校でも同じようなことをやっていますので、声をかけたらOKをもらえる、というような簡単なものではありません。当然ながら逸材ほど、スカウトマンからの注目は高いです。

ですから、正直なところ、インターハイや全国大会で活躍している選手がうちに来てくれる可能性はけっこう低いんですね。ということを踏まえて、大事なポイントとなってくるのが「伸びしろ」です。結果だけではなく、そこまでの過程も見て、4年かけて変わる可能性をある程度見極めます。ですから、伸びる、化けるといった要素を秘めた選手をスカウトするようにしています。

ーでは、伸びしろがある選手の特徴を教えてください。

そういう選手は高校と同じスタンスで練習を続けても、勝てないと思うんです。4年間かけて箱根駅伝に出られるようになるには、さらにストイックな練習を積まなければなりません。

ですからいつも事前に、そのような厳しいことを説明するのですが、それを受け入れて頑張れるかどうか、ですね。うちの部に来てくれるのはとてもありがたいのですが、そういった気持ちを持てないのなら、「来ない方がいい」とも伝えるくらい重要視しています。

ー入部してほしい選手に、あえて厳しいことを伝えるんですね。

ここ数年、予選会での次点が続いているので、入りたいと言ってくれる学生がちょっとずつ増えています。嬉しいことですが、入部したらこちらにお任せというか、手厚く面倒見てくれると、そういう風に捉えている学生もなかにはいるんですね。

また、メディア取材を受けることも多くなり、それ自体はいいのですが、一部分だけに注目をされて、それが全てと印象づけられていることも一因です。

例えば、「コミュニケーションを大事にしています」というコメントだけが流れたり、寒い日にたまたま温かい飲み物を作っている場面が放送されたり。それらは事実ではありますが、部を象徴するようなことでもないんです。

これらから、自分が困難に直面したらどこかで助けてくれるっていう心理が働いている学生がいるんですよ。もちろんサポートはしますが、最終的には本人だと思います。ですから、スカウトをしたうえで、現実的なことをきちんと伝えるようにしています。

箱根に出場しても、ほとんどの選手は走れないのが現実

ー監督が就任されてから、さらに好成績を収められています。

本戦出場まであと一歩という次点が多いんですよね。悔しさも大いにあります。ですが、コーチ時代に思いを語って連れてきた選手たちがメインで走るようになり、結果を出してくれました。

ー指導では、どのようなことを大切にしていますか。

伸びしろの話につながりますが、入学時点では発展途上にある選手ばかりなので、4年間でしっかり力をつけられるように指導しています。

最初は、土台作りに時間をかけます。地道なトレーニングが多く、野球で言ったらキャッチボール、サッカーならパスのような基礎的なものですね。プログラムを組んで、毎日同じ距離を走ります。ある一定の期間を経て、少し距離を伸ばしていく。そこから、チャレンジできる選手に対してはさらに距離を上げていくというようなメニューになります。

ー練習日や場所について教えてください。

活動日は月〜土で、それぞれ朝と午後に練習があります。全員が寮に入っていて、朝は5時半から約1時間半、午後は17時頃から約2時間ほど行っています。土曜は大学がないぶん、スタートが10時と16時半頃からになります。日曜日は、大会がなければ基本的にお休みです。

3レーンの400mトラック、1周1050mのロードコースといった練習場、そして寮もキャンパス内にあるので、移動の負担はありません。また、同敷地内にショートコースのゴルフ場もあり、朝練で使用したりしています。環境や設備はかなり充実しています。

ー箱根駅伝出場を目指すなかで、技術以外にも身につけてほしいことはありますか。

箱根駅伝に出場できたとして、部員全員が憧れの舞台で走れることが一番いいのですが、ランナーになれるのはほんの一部、たった10人です。全体を見ても、200人しか走れません。

出られない選手の方が多いと考えると、掲げた目標に向かって前進するなかで、社会に通じる力を養ってもらうことが、サブテーマのような意味合いになるかなと思います。それは、挨拶ができる、時間を守れるといった基本的なことのほかに、悔しい思いをしても再びチャレンジしていく姿勢も挙げられると思います。

箱根駅伝出場は、麗澤大学の夢

ー部員への接し方で気をつけていることを教えてください。

選手ひとりひとりに応じることですね。ただ、正解はないと思っています。競技のレベルも感性も違いますし、故障や伸び悩みなど、抱えている問題もさまざまなので。その都度、対応を変えていかなければならないと思っています。

ですが、例えば伸び悩んでいる選手へ私が何度も言葉をかけても、結局は自分で這い上がらないといけない時の方が多いと思うんですよ。スカウト時にも厳しくお伝えしていますが、箱根駅伝を走りたいならば、1番を目指さないといけません。それには、やはり本人の覚悟が最も大事なことになってきます。もちろん私は指導で、大学は環境設備などでアシストはします。ですが結局は、自分との戦いになると思います。

何度も言いますが本当に厳しい世界なので、一般的な大学の部活動ではないですね。

ー箱根駅伝はもはや国民的行事のごとく多くの人から熱い支持を得ています。だからこそ出場する価値があり、各大学間で熾烈な争いが繰り広げられているとも言えますが、根底にあるのは学生スポーツであるということ。このことについてはどう思われますか?

おっしゃる通り学生スポーツなので、「社会に出るための学びを得ること」が大前提にあると思います。ですが、これだけ注目を浴びるとなると、大学をあげての競争にもなります。学生も箱根駅伝に出たくて、うちを選んでくれているわけです。

ですから、そのバランスをどう取るか、私自身いろいろと思うところはありますが、そこはしっかり勝負しなければいけないと思っています。

ー最後に改めて、箱根駅伝への思いをお願いします。

箱根駅伝出場は、麗澤大学の夢なんですよね。「大学名入りのユニフォームを着た選手が、箱根でタスキをつなぐ姿をいつか見たい」という願いから部が設立され、そこからずっと目標に掲げてきました。数ある運動部のなかでも唯一の強化部として、大学が最も力を入れているのです。

職員も教員もOBもみんな熱を入れて応援してくれています。卒業生でも何でもない私ですが日々頑張れているのは、周囲の方々の温かさのおかげです。本当にいい方々ばかりなんです。ですから、みなさんの期待に応えたい。一緒に喜べる日を作りたい。その思いを胸に奮闘しています。今は正直、悔しい思いの方が多いので、何とかそれを歓喜に変えたいです。

ー穏やかな口調ながらも、箱根駅伝やスカウトについてお話しする際の山川さんからは、夢を実現させるための揺るぎない決意と燃えたぎる闘志を感じられました。駅伝をメインとする陸上競技部は、一般的な大学部活とは異なる世界です。強い覚悟と意欲が必要ですが、その気持ちがあれば、今まで見たことのない景色を望めるに違いありません。貴重なお話をありがとうございました。



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