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「笑顔で勝とう!」県大会上位の実力校、広島・神辺旭高校男子バレー部の“考えるプレー”

広島県立神辺旭高等学校男子バレーボール部

顧問:

前岡佑一朗(まえおか・ゆういちろう)さん

同校同部出身。小学5年生でバレーボールを始め、大学までミドル選手としてプレー。卒業後、神辺旭高校に臨時教員として赴任し、男子バレーボール部の顧問としてバレーボールに関わっている。現在就任4年目を迎える。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 勝負の中に楽しさを忘れない
  • 選手が自ら考えてプレーする
  • 将来のための生きる力が身につく

広島県福山市にある広島県立神辺旭高等学校は、体育科があり学校をあげてスポーツに力を入れています。男子バレーボール部も学校の指定強化スポーツに選ばれており、2024年度はインターハイ、天皇杯ともに県予選ベスト8に入りました。そんな男子バレーボール部を指導するのは、同校卒業生の前岡佑一朗先生。男子バレーボール部の強さの秘密と今後について取材しました。

同校出身の指導者が教える「バレーボールは楽しい!」

ー前岡先生は同校出身だそうですね。

約10年前、同校の男子バレーボール部でミドルブロッカーの選手でした。バレーボールをはじめたきっかけは、小学校5年生のとき。家の近所にバレーボールチームがあったからです。当初は「身長が伸びれば良いな」くらいの軽い気持ちだったのですが、楽しさに引き込まれて、大学卒業までバレーボールを続けました。

ーそこから教員になられた理由はあるのでしょうか?

ずっとバレーボールに関わりたかったので、長く携われる仕事を…。と考えたときに教員という選択肢が出てきました。もとから教員になりたかったというより、バレーボールを求めたら教員になっていた、という流れですね。
大学のときの教育実習先も神辺旭高校でした。私が生徒だったころお世話になった先生と再会することができ、その先生が声をかけてくださったことでこの学校へ赴任することができました。

ーそんな前岡先生が思う男子バレーボール部の特徴を教えてください。

選手としてプレーしていたころから「本当に楽しそうにバレーボールをするチームだね」と言われることが多かったです。もちろん、スポーツなので勝ち負けがあるため、楽しいだけではいけません。けど、「勝ちたい!」だけではなく、「笑顔で勝とう!」ということを私も部員に伝えています。

みんなバレーボールが好きで入部しており、嫌いでやっているわけではないので、最後まで楽しみながらプレーしています。

ー指導するうえで力を入れていることはありますか。

最近は、「自分で何かを考える」ということが苦手な子どもたちが増えてきたように感じます。しかし、バレーボールで勝つためには、戦略が必要です。私が作戦を10伝えても1理解できるかどうか…という場面もあります。
そこで考えるのをやめずに、2でも3でも良いから、少しずつ自分たちで戦略を考えて理解するクセをつけてほしいです。ここはまだまだ指導の途中なので伸びしろがあると思います。

また、部員のほとんどが中学バレー経験者なので、基礎は中学校のときにできている選手が多いです。勝ちたいなら自分に足りないものを考えなければいけません。高校バレーでは、中学校の基礎からどう自分をアップデートしていくか、体の使い方や自分のカラーを出していくフェーズに入ります。
その「自分はこうしたい!」が、より鮮明に出るのが高校バレーな気がします。なので、これまでより自分で考える機会は増えるはず。

そして、バレーボールを通して「生きる力」を身につけて卒業してほしいと思います。自分で考えて行動することや3年間厳しい練習に耐えることは、社会に出たときに自分が困らない人格を作ってくれると信じています。

ーバレーを通して人間力も高められそうですね。現在はどんな部員が在籍していますか?

現在は3年生3名、2年生4名、1年生9名で構成されています。部員の中には呉市など市外から通っている選手もいます。
ほとんどは経験者ですが、なかには未経験から3年間やり切る選手もいますよ。

写真提供:広島県立神辺旭高等学校男子バレーボール部


 
ーレギュラー、ベンチ、ギャラリーになる選手が出てきますよね。接し方で工夫やケアなどはされていますか?

どこにいても同じチームであり一緒に戦うことに変わりはないと思っています。また、レギュラーに選ばれないということは、ひとつの「挫折」を経験する機会になり得ます。社会人になる手前の高校生という時期に挫折を経験するのは、ある意味良いのかも。

私が入部するときには、親に「3年間球拾いをする覚悟はあるのか」と言われました。つまり、3年間レギュラーになれなくてもいいのか、ということです。私なりにその覚悟を持って入部しましたが、やはりレギュラーになれず、また部での自分の立ち位置を理解できなくて、本当にしんどかった思い出があります。その後、ありがたいことに1年生の冬から出場機会を与えてもらったので、そこから意識が変わりましたね。

勝ちたいという思いが強くなったこともそうですが、お世話になった先輩たちを勝たせてあげたいと思うようになりました。

ベンチでもギャラリーでも、挫折した経験が頑張るきっかけになれば良いですね。

創部2年で全国大会へ導いた故藤井先生の教え

写真提供:広島県立神辺旭高等学校男子バレーボール部


 
ー創部からわずか2年で全国大会出場に導いたのが故藤井修先生ですが、当時の教えを受け継いでいますか?

残念ながら、私は藤井先生に直接お会いしたことはありません。ですが、教えは受け継がれていますね。藤井先生が常におっしゃっていた「切に生きる」を部訓に掲げています。「切に生きる」とは、目の前の現実を一生懸命に生きるという仏教の教えです。それは最近新調した横断幕にも書いています。

ただ、今まで良かったものはきちんと残すけれど、新しくて良いものは取り入れていこうと選手にも話しています。やはり時代の流れに合わせて、古くなったものは更新していくべき。そのあたりの思考は柔軟です。

ー部員の卒業後の進路を教えてください。

進学と就職が半分ずつくらいです。なかには、プロのバレーボール選手になる人もいます。少し上の世代だと、V3のチームに加入している人もいますよ。

ーでは、最後にどんな選手に入ってほしいですか?

元気が良い選手に入ってほしいです。実際に中学校でプレーをしている姿を見て、勧誘することがありますが、元気がある選手を選んでいます。

性格でいうと、ガッツがある人が向いていると思います。ほとんどが経験者ですが、未経験だからと言って入れないわけではありません。その場合は基礎からなので練習も厳しいと思いますが、未経験からレギュラーになった選手もいます。

とにかく「やる!」と決めたらやり切るガッツがある選手と一緒にバレーボールを楽しみたいです。そして、引退してもずっとバレーボールを好きでいてほしいですね。

体育科があり、体育館2つとトレーニングルームを備えている神辺旭高校は、スポーツに本気で取り組む生徒にとってありがたい環境が整っています。校内ですれ違う生徒は、みんな大きな声で挨拶をしてくれ、バレーボール以外の場所での成長にも期待できそうです。
また、前岡先生は「指導することも楽しいですが、自分がバレーボールする時間がもっとほしい(笑)!」とも。バレーボールというスポーツを本当に愛しているのだと思える取材でした。


広島県立神辺旭高等学校男子バレーボール部
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