八戸工業高等学校卓球部
総監督:
大山 幸雄(おおやま ゆきお)さん
2000年に八戸工業高校に定時制の教員として赴任。長期休み期間に卓球部の練習を手伝ったことがきっかけで、全日制勤務に移行した際、卓球部監督に就任。監督4年目には青森県学校対抗でチームを県ベスト4に導く。そして2024年のインターハイでは女子学校対抗に初出場しベスト8入賞を果たした。
ひと目でわかる! チームの特色
- 3年計画でインターハイ出場
- 人間力と自主性を育む
- チーム運営の最適化
青森県八戸市にある八戸工業高校卓球部は、公立高校ながらも2024年のインターハイ女子学校対抗に初出場し、ベスト8入りを果たした勢いのあるチームです。
この快進撃の裏側には、チームをまとめる大山幸雄総監督の苦労やさまざまな試行錯誤、工夫がありました。
卓球部の手伝いから始まり、監督へ
ー大山総監督の経歴についてお伺いさせてください。
2000年に八戸工業高校に赴任した際は、定時制の勤務でした。全日制に通っている生徒が卓球を頑張っているということで、長期休みに練習を手伝ったのが、卓球部に携わったきっかけです。
その2年後に全日制の勤務になって、本格的に監督として活動することになりました。
ー全国王者の青森山田高校をはじめ、実力校が揃う青森県でしたが、当時の八戸工業高校はどういうチームだったのでしょうか?
監督に就任したばかりのころは、地区予選でも勝てない選手ばかりでした。
しかし、選手たちと一緒に練習をする中で、地区予選を突破できる選手が1人、2人と増えてきて、次第に県大会でも1回戦、2回戦と勝てるようになっていきました。
そして監督として4年目の時に、学校対抗の団体戦で青森県ベスト4に入ることができました。
6年目には、ようやく東北大会に出ることができ、そこから青森県の上位に定着できたという感じのチームです。
指導で大事にしている人間力と自主性
ー指導する際に大切にしていることはありますか?
将来、社会の中心で活躍してほしいという願いから、人間力を高める指導を心がけています。
卓球の技術だけではなく、人間力や自主性の育成をサポートすることで、社会に出ても通用する力を身につけさせてあげたいですね。
ー生徒たちが人間力と自主性を育むために具体的にはどういうことに取り組んでいますか?
週に1回、部全体で大きなミーティングを開いています。
そこでは選手が主体となって、各自の課題を洗い出して振り返り、次の週の練習をどうしていくかを決めます。
私はミーティングに参加はしているのですが、見守っているだけで、基本的には生徒たちに任せています。
3年計画で掴み取ったインターハイ
ー初出場でランク入りとなったインターハイについてもお伺いさせてください。
青森県予選から1戦1戦が大変でした。
試合前から「この学校はきついな」「うまくいかない試合もあるだろうな」と想定していましたが、予想以上に苦戦しました。
特に県予選の準決勝では、何回も相手にマッチポイントを握られて、あと1点で負けるという展開が続きました。なんとか勝ち抜けましたが、1戦1戦が本当に厳しい青森県予選でした。
ー無事予選を通過できた時はどのような心境でしたか?
最後の一本を取った時には自然と涙が出てきました。
2023年も決勝戦でギリギリ負けていて、2024年にようやく全国へたどり着けたというところで、安心した感じがしました。
もともと「3年計画でインターハイに行こう」と活動してきた中の3年目だったんです。
3年目の夏のインターハイ出場を目標に、逆算して設定した目標を全てクリア。奇跡のようなストーリーを紡いで、大成功で終えられました。
ー3年計画でのインターハイ出場だったのですね。
中心選手の三國海藍や小鹿杏梨ら、高校3年生の選手たちは小学校、中学校の頃から八戸工業高校に練習に来ていて、一生懸命頑張っていた子たちです。しかし中学校の3年間で、全国大会に進めた選手はいません。
そんな中、三國、小鹿らが高校を選ぶ際、「八戸工業高校でインターハイに行きたい」と言って進学してきてくれました。
その心意気に応えたいと思い、1年目、2年目、3年目と細かく大会の目標を設定。そのためのサポートを全力で行い、彼女たちもそれに応えて、目標を全て達成してくれました。
ー「インターハイ出場」という目標を達成しただけではなく、ベスト8で全国ランク入りまで成し遂げました。
八戸の高校が卓球でインターハイ学校対抗に出場するのは初めてのことで、インターハイ前に市長のところに表敬訪問をさせていただきました。
市長から「次の目標は?」と聞かれた際、選手たちは「インターハイベスト8です」と目標を掲げたんです。
そこで3年計画のその先の新たな目標設定がされて、選手たちがそこに向かって進んでいった結果だと思います。
“チーム八戸工業”で成し遂げた初出場ランク入り
ーインターハイでの選手たちの戦いぶりはいかがでしたか?
初戦は、東京都代表の早稲田実業との対戦でした。どちらも初出場ということでメディアにも注目していただき、非常に緊張感のある試合になりました
また、相手校のデータがほとんどないなか、なんとか情報を集めて分析して、当日の試合を迎えました。
選手たちは初戦ということもあり、動きが固かったのですが、なんとか切り抜けて勝ってくれました。
そこからの試合は、場の雰囲気にも慣れたのかしっかりと準備ができ、3年間見てきた中でも1番強いんじゃないかと思うくらいのプレーをしてくれました。
ーインターハイ初出場でランク入りできた要因はどこにあると思いますか?
3年計画の中で築き上げてきた“チーム運営の最適化”が1番の要因だと思います。
ーどう組織化されたのでしょうか?
それまでは指導から事務作業、遠征対応まで全て一人で担っていましたが、リソース面を考えると限界があり、一部を専門家に任せることにしました。
例えば、フィジカルはスポーツトレーナー、メンタルはメンタルトレーニングコーチに指導を依頼するといった形です。
また、卓球部は男女に分かれているので、それぞれに1人ずつ監督を任命し、私が総監督という立場で全体を統括する立場になりました。結果的に“チーム八戸工業”で戦えたことが最大の要因です。
ー初出場でランク入りという歴史を作って卒業していく3年生たちに、どのような言葉をかけたいですか?
この3年間、体力的にも精神的にも大変なことがたくさんあったと思います。目標を1つ1つ達成していくことも、決して簡単なことではなかったはずです。
しかし、周囲のサポートもあり、重圧を乗り越えて目標を達成、インターハイでランク入りできました。
インターハイが終わった直後は、彼女たちの成し遂げたことの大きさを実感できていなかったのですが、落ち着いて振り返ってみると、とんでもないことをしたんだなと改めて感じました。
「本当によく頑張りました」と伝えてあげたいです。
ーこれからのチームの展望を教えてください。
今回のチームは、3年計画を掲げて楽しく卓球に取り組み、インターハイでも勢いに乗って勝ち上がることができました。
では次のチームはどうしていくのかと考えたときに、日々卓球は進化していきますし、選手たちも変わっていくと思います。
なので、枠にはめることなく、私自身もいろいろなアンテナを張りながら、その時代のニーズに応えられるように、常に新しい八戸工業を意識してチーム作りをしていきたいと思っています。
八戸工業高校卓球部の「チーム運営の最適化」を行うことで、チーム力の底上げをし、3年計画でインターハイ初出場に導いた大山幸雄総監督。人間力と自主性を育むことを目的とした指導を行い、チームを強化してきました。大きな結果を残し、次なる目標に向けて努力を続ける八戸工業高校卓球部のこれからが楽しみです。
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