千里金蘭大学卓球部
監督:
吉田和也(よしだかずや)さん
兵庫県伊丹市出身。広島県の近大福山高等学校でプレーした後、近畿大学に進学。卒業後は卓球のコーチをしながら、27歳の時に卓球場を開設。現在は千里金蘭大学卓球部の監督を務める一方、登録者1万人を超えるYouTubeチャンネル「神戸TCチャンネル」も運営している。
ひと目でわかる! チームの特色
- 卓球を好きになって卒業してもらう指導
- 監督は全日本にも出場する現役プレーヤー
- 新しい歴史を創れる
7年前まで関西学生リーグ4部に所属していた千里金蘭大学卓球部が、今年の春季リーグ戦で悲願の1部初昇格。さらに秋季リーグではいきなり関西5位にまで駆け上がり、関西学生卓球界で台風の目となる活躍を見せています。
チームを率いるのは、神戸TCの代表として卓球コーチを務めながら、卓球YouTuberとしても活躍している吉田和也監督です。
そんな千里金蘭大学卓球部の躍進を支える吉田監督に、チームの雰囲気や歴史、今後の目標などについて伺いました。
すべてが“初” 新しい歴史を創れるという魅力
ーどういうきっかけで千里金蘭大学に関わるようになったのでしょうか?
実は、大学時代の恩師だった折戸栄さんが、近畿大学をお辞めになった後、千里金蘭大学の卓球部を率いていたんです。そんな中「年齢的に難しくなってきたから、次を頼みたい」と声をかけられたことをきっかけに、千里金蘭大学での指導に携わるようになりました。
ー千里金蘭大学の良さはどこにあるとお考えでしょうか?
まだ歴史の浅いチームだからこそ、すべてを自分たちで作り上げられる点です。高校まで強豪校に所属していた選手が多いので、それぞれの母校で培った良い部分を組み合わせながら、練習を作り上げています。
例えば、ウォーミングアップの方法や試合前の準備などをみんなで出し合い、良いと感じたものは実際に練習に取り入れてきました。
ー1部昇格も“初”で歴史を創りましたね。
1部に昇格したタイミングでいろいろな物を新しく作りました。
関西の1部校はリーグ戦で試合前に校歌を歌うのですが、千里金蘭大学はそもそも校歌がありませんでした。そこで急遽大学に依頼して校歌を作ってもらい、音程を合わせるところから練習しましたね(笑)。
また、部旗もなかったので、その機会に作りました。1から創り上げていける点は、新鮮で魅力的だと思います。
結果を出させてあげるために「全て教える」指導方針
ー監督として意識していることはありますか?
千里金蘭大学に入学してくる選手は、高校時代は主力ではなく、補欠や3番手、4番手だった選手が大半です。
そうした選手は、厳しい練習のわりに結果を出せず、卓球そのものが嫌いになっているケースも少なくありません。
僕自身は卓球が大好きで、幅広い世代に「卓球を好きになってほしい」という思いで指導しています。だからこそ、千里金蘭大学の学生にも卓球を嫌いなまま卒業していってほしくない。むしろ好きになって終わってほしいと意識しています。
ー好きになってもらうためには、どういうことが大事なのでしょうか。
楽しみながら成長してもらうことは忘れないようにしながらも「結果を出させてあげること」を最優先しています。
卓球の楽しさは、やはり勝利にあると思うんです。例えば、高校まで負けていた選手にやっと勝てたときなどに、楽しさを感じるはずです。勝ち方を知ってもらうことで、最終的に卓球を好きな状態で終わってくれたらいいなと思います。
勝たせるためにやれることは全てやって、教えられることは全て教えるというのが、千里金蘭大学の選手に対する僕の中の指導方針ですね。
たぶん意見が割れると思いますけどね(笑)。「そんなに指導者が全部言ったら良くないやろ」って。
ー確かに、「教えすぎない」「自主性を重んじる」という指導方針はよく聞きますが、「全て教える」は初耳でした。
もちろん「教えすぎない」というのはめちゃめちゃ大事だと思っていて、子どもたちの指導では割と意識はしています。
でも、大学4年間で卓球に一区切りをつける選手も多いですし、そもそも自分で考えて結果が出ているなら、レギュラーとして高校時代から戦っていたと思います。
大学では、自分で考える力をつけるというよりは、逆に全て教えて結果を出して、卓球の楽しさを知って卒業して行ってもらう方がいいなと思っています。
ー素晴らしい考え方だなと感銘を受けました。
実際、大学卒業後に卓球を辞めるつもりだった選手が、勝てるようになったことで「もっと卓球を続けたい」と実業団への進路を選んだケースもあります。
もともと卓球が嫌いだったり、続ける気がなかったりした選手が、勝つ楽しさや卓球の面白さを知って、競技を続けてくれるのは、指導者として本当に嬉しいことですね。
自身も現役でプレーすることが指導に活きている
ー吉田監督がまだ一般カテゴリーの試合に出ているという経験も指導に活きていますか?
全日本選手権も含めて試合に出続けているので、トップ層のプレースタイルの流行や用具の変化を敏感に感じ取れています。
自分自身が経験した“今の卓球”を基に、実際の試合で効いた戦術、サービス、考え方などを全て選手たちに伝えているので、指導にも説得力が出ているのかなと思います。
ーご自身の卓球場で幅広い世代を指導されていることも、大学生の指導に活きていそうですね。
初心者や子どもたちを教えているので、選手に合った戦型を判断できたり、多彩なプレースタイルの指導にも対応できたりしているなと感じています。
千里金蘭大学に入ってきてくれたからには、他校のエース級に勝つまでに育って欲しいと考えているので、4年間ではそこに間に合わないと判断した場合は、戦型を変更させています。
例えば、両面裏ソフトラバーで高校3年生までプレーしてきた選手であっても、取りにくいボールが出る表ソフトラバーを使ってもらうなどです。実際に私が監督に就任してからフォア面に表ソフトラバーを使うように戦型変更した選手が3人います。
ー結果を出させてあげるためにという部分で一貫していますね。
試合が始まったらベンチからのアドバイスしかできないので、選手たちの勝率が1%でも上がるよう、試合以外でも徹底的にサポートしています。
例えば、試合当日の送迎もその一つです。学校まで車で迎えに行って会場まで送り届け、会場では練習相手をし、試合後も選手たちを車で送っています。
選手たちも「ここまでしてもらったらやらなきゃいけない」と意識が高まっていると思うので、全力でサポートするというのは続けています。
さらに有名な強いチームへ
ー新しい歴史を創ってきた、今の最上級生にかけたい言葉はありますか?
4年間ありがとうと伝えたいです。
今の4年生は、大分の明豊高等学校から2人、宮崎の日南学園高等学校から中国人留学生が1人入学してくれました。
彼女たちが引っ張ってくれたおかげでチームが大きく変わって、初めてインカレに出場できてそこから4年間毎年出場できるようになりました。
社会人になっても、「努力を続ければ良いことがある」ということを忘れずに頑張ってほしいですね。
ー今後どんなチームを目指していきたいですか?
関西学生リーグ1位を目指すという目標があります。
千里金蘭大学はまだ歴史が浅く、知名度も高くはありませんが、少しずつ成績を上げて1部に定着し、さらに有名なチームへと成長させたいです。私自身はSNSやYouTubeを活用しているので、それらを活かしてチームの良さをどんどん発信していきたいです。
これからも真面目に取り組むときは全力で、でも楽しさを感じることを忘れずに指導をしていきます。
高校時代から実績のある選手たちが将来的に加入してくれれば、1位を目指せるチームにもなれると思っています。アットホームで楽しい雰囲気ながらも強いチーム作りを目指して頑張っていきます。
関西学生リーグ1部に昇格し、ここ数年で凄まじいスピードで実力をつけてきている千里金蘭大学卓球部。その背景には吉田和也監督による楽しさを追求しながらも結果を出すためにすべてを教えるという指導方針がありました。今後も活躍していくチームの成長に注目です。
チームが気になったら…
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