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創設47年の卓球クラブ・宮古Jr.「卓球以外の当たり前のことも大事に」小林みちる代表の思い

宮古Jr.

代表:

小林 みちる(こばやし・みちる)さん

戦型はカットマン。学生時代は淑徳大学短期大学部にてプレー。卒業後は、全日本選手権など主要な大会に選手として出場する傍ら、出身クラブの「宮古Jr.」にて小中学生の指導にあたる。全日本卓球選手権マスターズの部・30代女子で日本一に輝いた実績を持つ。2023年全日本卓球選手権女子シングルスベスト32に入った小林りんご(桜丘高等学校→青山学院大学)を娘に持つ。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 創設47年の歴史あるチーム
  • 「卓球を好きになってもらいたい」という代表の思い
  • 卓球に限らず、体力や人間力を磨けるクラブ

岩手県宮古市を中心に小中学生の卓球プレーヤーを育成するクラブチーム「宮古Jr.(ミヤコジュニア)」。現在、代表を務めるのは、このチーム出身の小林みちるさんです。
小林さんの娘・りんごさん(青山学院大学)、息子・レオさん(盛岡第三高等学校)も宮古Jr.で育ち、全国の舞台で輝かしい成績を残しています。

今回は小林さんに、チームの特徴や大事にしている指導方針についてお話を伺いました。

創設47年の歴史あるチームで指導歴は37年

写真提供:宮古Jr.


 
ー小林さんの指導者になるまでの経歴を教えていただけますか?

私は6歳で卓球を始めて、地元の中学校を卒業後、盛岡にある私立高校でプレーしていました。

その後は東京の淑徳大学短期大学部で2年間プレーし、卒業後は地元に戻って働きながら卓球の指導をしています。戦型はカットマンです。

ー大学卒業後も全日本マスターズ30代の部で日本一になるなど、選手としても成績を残されていますが、指導歴としてはどれくらいになりますか?

36歳までは選手として活動していて、地元から国民体育大会(現・国民スポーツ大会)や全日本卓球選手権に出場していました。

選手としてプレーしながらも、土日と平日の仕事が終わった後19時までは子どもたちの指導も並行して行っていました。そのため、指導歴は今年で37年目になります。

ー宮古Jr.はいつ立ち上がったチームですか?

私が10歳の時に母と同じチームの方々で立ち上げて、創設から47年になります。

小中学生のときは私もチームに混ざって練習をしていました。今ほど練習日数は確保できていなかったようですが、小中学生何人かで練習していた記憶があります。

写真提供:宮古Jr.


 

子どもたちに卓球を好きになってもらうことが一番

ーチームの雰囲気や練習について教えていただきたいです。

主に学区内の小中学生が所属していて、今は15人ほどの選手がいます。兄弟みたいな雰囲気で、とても仲良く活動しています。

練習は平日4日間で各2時間、土日は半日練習です。自分たちの練習拠点がないので、小学校や中学校の体育館を借りて活動しています。卓球台の準備から片付けも含めて2時間なので、練習時間はそんなに長くはありません。

ー雰囲気づくりや指導にあたって気を付けていることはありますか?

子どもたちに卓球を好きになってもらうことが一番だと考えており、そこを重視しています。

加えて、今は子どもたち1人ずつと面談をして、目標を聞いています。目標自体が定まっていない子もいれば高い目標を持っている子もいるなどさまざまなので、その声を基にチーム全体の練習や指導のバランスに気を配っています。

また、私自身は卓球の技術指導に長けているわけではないので、卓球以外の部分も含めて指導にあたっています。

ー卓球以外の部分というと具体的にはどういうところでしょうか?

例えば、チームで行動するので、「ルールを守る」「思いやりを持つ」「上級生が下級生をお世話をする」「キャプテンが全体を見る」といったことです。

また、私は昭和の人間なので、「練習に来たら靴をそろえる」「挨拶や返事をする」「片付けなど仕事を自ら率先してやる」という基本的なことは厳しく指導しています。卓球以外の当たり前のことも、しっかり身につけてほしいという思いがあります。

ーどこに行っても役に立つ人間力の部分ですね。

正直に言うと、ここで練習しているだけで卓球で食べていけるようになるのは難しいと思うんです。

だからこそ、どんな世界でも必要となる挨拶や気遣いといった部分については口酸っぱく言っていますね。

写真提供:宮古Jr.


 

愛娘・小林りんごも推す“体力作り”

ー関東学生リーグや全国でも活躍する小林りんご選手の原点が宮古Jr.ということですね。

私と主人、母の家族総出で卓球の指導に携わっていた関係で、どうしてもりんごが小さい時から練習に連れて行かなければなりませんでした。

上のお姉さんたちに可愛がられながら、よく練習していましたね。

ーりんご選手に事前にヒアリングしたところ「宮古Jr.の体力作りについては聞いた方が良い」と教えてくれました(笑)。

おそらく縄跳びのことですね(笑)。

練習時間が短いこともあり、ランニングの代わりに縄跳びをほぼ毎日行っています。

市内の小学校の縄跳び大会では、卓球クラブなのにいつも上位に食い込んでいて、卓球クラブなのか縄跳びクラブなのか分からないくらいです(笑)。

ー短い時間でも工夫して体力づくりを行うための縄跳びトレーニングですね。

3分間に何回跳べるか、という部分でスパルタに競い合っています。

りんごもレオも2人とも縄跳びが得意だったので、今の生徒たちにも「レオは500回くらい跳んでたよ」と言って発破を掛けています。卓球クラブなのに(笑)。

写真提供:宮古Jr.


 

卒業生が帰って来られる場所として残していきたい

ークラブにはどんな選手に入ってきてほしいですか?

卓球だけでなく、いろいろなトレーニングをやっているので、身体を動かしたい、運動能力を高めたい小学生のお子さんがいたらぜひ見学に来てください。

ちなみに運動に自信がない子も歓迎です。宮古Jr.で練習を重ねていけば体力はしっかりとついていくので。実際に縄跳びもできなかった子が、市内の大会で賞状をもらえるまでに成長した例もあります。

ー今後のチームの目標もお聞かせください。

宮古市も他の地域同様、子どもの数が減少していて、団体戦を組むために中学生6人を集めること自体が難しい状況です。

でもやっぱり指導者として、全国中学校卓球大会の団体戦出場というのは大きな目標として掲げています。

ーこれまで出場されていなかったとは意外でした。

歴代の女子で一番可能性のあるチームができたなと思ったタイミングで、東日本大震災が起きて、大会自体が中止になってしまいました。

そのときは震災の影響で、卓球も含めて1か月何もできなくなって、子どもたちは目標を見失ってしまったんですよね。

でもそのときに卓球メーカーや実業団、関東学連などが復興支援としてチームに訪れてくださり、強い選手と一緒にプレーしたり触れ合ったりできて、子どもたちに元気が戻ったことは印象深かったですね。

ー長い歴史でさまざまな経験をされていますね。これからも歴史を積み上げていくかと思いますが、今後のチームとしての展望はどう考えていますか?

実は、私を含めて指導者は全員ボランティアなんです。年齢とともに体力面での不安も出てきているので、指導ができなくなった時のことは最近よく考えています。

ボランティアでやり続けてくれる人を探すことは、今の時代難しいかもしれません。ですが、50年近い歴史もあるので卒業生が帰って来られる場所として、チームを残していきたいという思いがあります。

私は普段の練習で子どもたちからもらうパワーが元気の源です。後継者も探しながら、まだまだ指導を続け、宮古Jr.での卓球を通して子どもたちの成長を手助けしていきたいと思っています。

写真提供:宮古Jr.


 

インタビューの中で、選手1人1人の体力や礼儀など卓球以外の部分も磨いて、選手の成長を手助けしていた小林みちるさん。競技力向上に注目されることは多くありますが、それ以上に子どもたちにとって大事なことは何かということを考えさせられました。多くの指導者にとっても役立つ貴重なお話をありがとうございました。


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