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18年ぶりに出雲駅伝出場の名古屋大学陸上部「全員の意識が変わった」走力アップに向けた練習方法とは?

名古屋大学陸上部長距離パート

長距離パートコーチ:

林 育生(はやし・いくお)さん

豊橋科学技術大学の陸上競技部に所属。卒業後、2012年に名古屋大学職員となり、2013年から長距離パートコーチに就任。

パート長:

吉原 諒(よしはら・まこと)さん

名古屋大学4年生。中学から陸上を始め、10年目。個性豊かなメンバーをまとめ、パート長を務める。

ひと目でわかる! スクールの特色

  • 陸上も勉強も手を抜かない、全員の基準が高い。
  • メリハリのあるチーム
  • 学生とコーチが仲良し

昨年の全日本大学駅伝に続き、今年2024年10月14日に開催される出雲駅伝への出場が決まっている名古屋大学陸上部長距離パート。

昨年の主力メンバーの大半が残り、まだまだ強力な力が揃う中、今年はチーム全体の走力底上げに力を入れてきました。
いよいよ始まる出雲駅伝。強豪の関東勢をはじめ、関西勢ともどう戦っていくのか。

国公立大学の中でも旧帝大としてくくられる日本の超難関大学で、まさに文武両道を体現する彼らを取材しました。

”努力する”こと、”頑張る”ことに対する基準が高い

1列目真ん中・吉原 諒さん。写真提供:名古屋大学陸上部長距離パート


 
ーチームや選手の特徴を教えてください。

 高校から勉強の成績トップはもちろんのこと、陸上競技においても県大会入賞や東海総体出場など成績優秀な選手もいます。そんな集団なので、これまで負けや挫折の経験があまりなかった選手が、自分より秀でた存在に気づき、戸惑うこともあるようです。

ただ、そこでトップを取り続けたいと奮起する選手が多いので、「誰よりも速くなりたい」「トップでいたい」という思いから自主練で走りこむ選手もいます。

経験者が多いですが、未経験でも主力に次ぐ勢いで活躍している子もいます。本気で練習に取り組めるのなら、未経験者も基本的にウェルカムです。

あと、ここで競技を続けるために大学院に進学する子もいるんです。学生だから出場できる大会もあり、少しでも長くここで競技をする時間を伸ばしたいなら、大学院の制度をうまく利用して2年間の時間を作ることもできます。

吉原 選手目線から見た特徴としては、みんな、”努力する”こと、”頑張る”ことに対する基準が高いなと感じています。勉強もして、陸上もして、バイトもして、と自分にいろいろなものを課していて、外から見ると過酷に見えることも過酷と感じてないんじゃないかな。すごくタフですね。

その点、陸上だけできればいいやと考えている子はあまりいなくて、勉強も陸上もやるのが当たり前というスタンスです。

普段はかなりワイワイとにぎやかに元気にやっています。学校近くに下宿しているメンバーもいるので、大学近くの公園で一緒に朝練するくらい、仲はいいです。

あと、みんなで厚底シューズの研究もしています。とても高価なので誰かが履いてるものを試し履きしてみて、自分の足に合ったら「よし、じゃあ買ってくるわ」と(笑)。一緒にいて楽しいです。

ーすごくメンタルが強い印象ですが、競技中においてはいかがですか?
 
吉原 そこが難しいところで、試合となるとまた違ってくるんですよね。正直なところ、本番に弱い子も一定数います。緊張もそうですし、まじめな子が多いので自分で自分に「タイムを出そう」「結果出さなきゃ」とプレッシャーをかけてしまうことがあるんです。そこはチームの中でも1つ課題としてあります。

―練習メニューはどのように作っていますか?

 元々は僕がメニューを立てて、選手のレベルに合わせてグループ分けもしていましたが、今はほとんど選手たちの選択に任せています。選手たちは陸上に対して非常に熱心で、自分たちで練習メニューやその効果を調べたり、自分のコンディションを考えて、練習内容(本数やレストの取り方)を調節できるので安心して任せられます。

練習内容はチームMTGによって全体で決まるので、その内容に口を挟むことはあまりありませんが、絶対に行ってほしい練習のときやオーバーワークになりそうなときは声を掛けるようにしていますね。

メニュー等、選手に任せているとはいっても選手とのコミュニケーションは大事にしています。チームにおいてどこを目標にして、今やるべきことは何か、逐一共有してチーム内で同じ意識を持つようにしています。ケガやメンタルケア等も気にかけて選手1人1人と会話するようにしています。

吉原 そうですね、林さんとは先輩後輩のような近い距離感で関わってます(笑)。

メニューはまずパート長の僕が作ってMTGで提案し、メンバーからの意見を聞いてチーム全員で決めます。メニューの内容はチームで揃えますが、負荷のかけ方や回数はそれぞれの目的や目標によって調節していますね。

チーム内でトレーニングに関する勉強会等は行っていませんが、個々で研究する人がいるのでそれぞれの知識やコーチからのアドバイス、チーム目標も鑑みてそこに見合ったメニューを設定するようにしています。

メニューについてもそうですし、目標共有のためにも僕たちはよくMTGするんです。この時、3、4年生はいいのですが1、2年生は素直な子が多く意見をあまり言いません。なかなか考えが見えづらいのが少し懸念点です。なので、この先もっと上下の関係なく、意見の言いやすいチームにしていくのはもちろんのこと、上に対してズバッと自分の意見を発信できる子にも入ってきてほしいなと思います。

いよいよ駅伝シーズンがスタート

ー出雲駅伝への意気込みとチームの仕上がりは?

 関東勢とどう戦うかというより、一番のライバルは関西勢ですね。昨年の成績から、今年は関西地区が2枠、中国四国地区が3枠出場権を持っています(※)。まずは成績枠が回ってくる13位以内でゴールすることが目標です。そうすると東海地区に来年もう1校出場枠が与えられるので、東海代表としてその1枠を持って帰ってきたいです。

吉原 個人としては、1km3分のペースを崩さず走り切ること。その結果が個人順位についてこればいいなと思っています。

チームの状態としては、今年の6月、全日本大学駅伝の予選会で棄権となってしまったところから、チーム内の7番手8番手がいないということが課題でした。そこで、チーム全体の底上げをしなければならないという結論にまとまりました。

この課題を長距離パート全員で共有し、個々が高い目標と緊張感を持って取り組んできたこと、夏から駅伝シーズンにかけてのメニューを組み直したことで今、全員の力がさらに伸びてきていると実感しています。

特に全日本、出雲の出走メンバー以外が、今年に入って「自分もメンバーになって走るんだ!」という気概をより強く持って練習に取り組むようになったので、個々の伸びがチームにも還元されています。チーム内の雰囲気も練習中と練習外とのメリハリがつくようになり、とてもいいです。

チーム一丸となって臨み、東海地区に来年の出雲駅伝の出場枠を増やして帰ってきたいと思います。

※出雲駅伝では、【北海道、東北、北信越、関東、東海、関西、中国四国、九州】の各地区学連ごとに出場するチームを独自の方法で決めています。東海地区の場合は東海学生駅伝で優勝した大学が出場できます。
出場校は各地区学連の基本枠8校と、前年の成績によって決められる成績枠12校(年により地域ごとに枠数が増減)を合わせて20校までが本戦に出場できます。

勉強だけでなく、競技力も底知れぬ強さを見せる名大陸上部長距離パート。そこには勉強にも陸上にも自らに課するベースの高さが見受けられました。選手とコーチの間の信頼の厚さも練習時に表れていました。
いよいよ今週末に迫った出雲駅伝。みなさんのこれまでの成果が発揮されるよう応援しています。


名古屋大学陸上競技部
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