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狙うは「九州リーグ」昇格! 社会人サッカー パスチャライズ福岡 川本夏実代表兼監督のチーム改革

パスチャライズ福岡

代表兼監督:

川本夏実(かわもと・なつみ)さん

1983年生まれ、福岡市西区出身。小学校1年生でサッカーを始める。東福岡高校3年時に第80回全国高校サッカー選手権大会に出場。関東学院大学卒業後、2011年にパスチャライズ福岡に入団し、2022年に監督に就任。現在は代表兼監督として、九州リーグ昇格を目指している。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 九州リーグ昇格を目指す社会人サッカーチーム
  • 選手がプレーに専念できる環境を整備
  • 団訓は「サッカー人である前に人であれ」

福岡県で活躍する社会人サッカーチーム、パスチャライズ福岡。2024年9月現在、福岡県1部リーグで2位につけるなど、着実に実績を重ねています。実力主義と環境整備に力を注ぐパスチャライズ福岡は、九州リーグ昇格を目指しています。
今回は、チームを率いる川本夏実代表兼監督にお話を伺い、チームの現状から将来の展望まで、幅広く語っていただきました。

サッカー競技歴と監督就任までの道のり

ー川本代表のサッカー競技歴を詳しくお聞かせください。

小学校1年生のときにサッカーを始めました。小学生の頃は、サッカー以外にソフトボールや水泳もやっていて、平日の放課後や土日はほとんど運動で埋まっていました。土日にサッカーとソフトボールの試合が重なったときは、サッカーが優先でしたが、時間帯によっては両方参加することもありましたね。サッカーを優先したのは、Jリーグブームだったことが大きいです。

中学校からはサッカーに専念し、アビスパ福岡のU-15で1年間プレーしました。しかし物足りなさを感じたことと、通っていた中学校の部活で有名な先生が指導すると耳にしたので、2年生のときにアビスパを辞めて、部活でサッカーを続けました。
その後、東福岡高校に進んで全国大会を何度か経験し、卒業後は関東学院大学でプレーを続けました。

ー大学卒業後から現在のチームに関わるまでの道のりを教えてください。

大学卒業後は一般企業に就職し、サッカーはきっぱりとやめました。日々忙しく働いていましたので、サッカーをするどころではなかったというのが正直なところです。

しかし、20代半ばから後半になると仕事にも慣れてきて、プライベートも落ち着いてきたので、またサッカーをやりたいという欲が出てきました。会社員時代はサービス業に従事していたので土日は休めずにサッカーができる環境ではなかったのですが、27歳で会社を辞めて独立したときにサッカーも再開しました。

再開したときは、まだ20代でしたしそれなりに経験も持っていたので、すぐにプレー勘も戻ると思っていましたが、実際にやってみると全く動けませんでした。サッカーをやるからにはちゃんとやろうと、そこから10キロくらい体重を絞りました。
その後28歳のときにパスチャライズ福岡に選手として入団し、翌年からキャプテンを任されました。

ーキャプテンとして、チームをどのように導いてきましたか?

キャプテンのオファーをいただいた際に「福岡県リーグで上位を狙いたいので、実力主義に切り替えられるのならキャプテンを引き受けます」と話し、それが受け入れられたのでキャプテンに就任しました。

当時のチームは福岡市リーグの1部に所属していましたが、どうせサッカーをやるならもっと強くしたいと思いました。それまでは練習や試合への参加率を重視して、試合に出場するメンバーを決めていたのですが、それを実力主義に切り替えました。一時的に選手の入れ替わりがありましたが、結果としてチームの競争力が高まりました。

30代後半までキャプテンとして約10年間チームを率いた後、2022年に監督に就任しました。現在は代表兼監督として、チームの運営全般も手掛けています。

監督業は会社経営と同じで「やったことが結果に出る」

ー川本代表のモチベーションの源泉は何ですか?

両親とも体育教師で、父親が野球部、母親がバレーボール部の顧問だったんです。その影響で指導したりチーム組織を作ったりするのが、好きだと思うんです。サッカークラブの代表は大変なことばかりですが、全然苦に思いません。逆に、自分の息子でもおかしくないような年齢の選手たちがのびのびサッカーしているのを見るだけでも楽しいなと感じています。

ー監督の面白さはどこにありますか?

私は会社を経営しているのですが、会社経営と同じように、良くも悪くもやったことがシンプルに結果に出るところです。戦術の変更や選手起用の判断が試合結果にすぐ反映されますし、チーム内の意思疎通が上手くいけば選手たちのパフォーマンスにも顕著に影響します。

写真提供:パスチャライズ福岡


 
ーチームの特徴を教えてください。

選手全員が戦術を理解し、同じ方向を向いてプレーしているのが特徴で、この特徴が今季の好成績につながっています。私個人は、選手がストレスなく戦え、あとはサッカーができるような環境作りを心がけています。

ーチームの活動スケジュールをお聞かせください。

シーズン中の週末は公式戦やオープン戦など、ほぼ試合を行っています。
平日の全体練習は、グラウンドの確保が難しいこと、選手それぞれが仕事に就いていることなどの理由で行っておらず、各選手とも個別練習などで調整しています。

当たり前のことを確実に行うことが我々の強み

ー川本代表が選手への指導で特に重視していることはありますか?

キャプテンを中心に、グループLINEでのミーティングなどを通じて、チーム方針や戦術の共通理解を図っています。
また、試合後には必ず試合の映像を見返し、改善点を選手たちと共有しています。これは意外と他のチームではできていないことではないでしょうか。当たり前のことを確実に行うことが、我々の強みの1つだと考えていますし、共通理解が生まれる一番の要素だと思います。

写真提供:パスチャライズ福岡


 
ー選手との接し方で心がけていることを教えてください。

試合に出ていない選手へのケアを特に重視しています。出場している選手は自然とモチベーションが上がりますが、出場できていない選手のモチベーションを、技術がある状態で保つことが重要だと考えています。

また、試合中はベンチに座らずに、晴れでも雨でも常に一番前に立って、選手と同じ目線で試合を見るようにしています。これは私の信念の一つで、選手たちの細かな変化や違和感を察知するためにも重要だと考えています。良いプレーをした選手は積極的に褒めることも心がけています。

プロとは全く異なる社会人サッカーの難しさ

ー社会人サッカーの難しさについて、どのようにお考えですか?

社会人サッカー選手はプロ選手と異なり、それぞれの選手が異なる環境や状況でチームに所属しています。突然の転勤や、子どもの誕生など、人生の変化に直面することもあります。そういった中で、いかに選手たちのモチベーションを高く保ち、チームとしての一体感を作り上げていくかが難しいところです。

写真提供:パスチャライズ福岡


 
ー選手がプレーしやすい環境の整備について特別な取り組みはありますか?

今年から新たに専属マネージャーを置きました。水の補充やビデオ撮影など、これまでは試合に出ていない選手が行っていた仕事をマネージャーが担当することにより、彼らの負担を減らしました。スタメンだけがうまくてもチームとしては強くなれませんし、夏の暑い時期に戦えなくなるので、ベンチメンバーの底上げも大切だと考えています。

専属のカメラマンやトレーナーも今季から採用しました。費用は掛かっていますが、これらのことがここまでの好成績につながっているんじゃないかと思います。

これらの取り組みは、1つ上のカテゴリの九州リーグ昇格を見据えたものです。昇格してから環境を整えるのでは遅く、先に環境を整えておかないと勝てないと考えました。選手たちには今年、これから2~3年のうちに環境を整えると宣言したんですが、1年目で九州リーグという目標が現実的な位置にいることから、早急に環境を整えました。

九州リーグ昇格を見据えて運営基盤を強化

ー九州リーグ昇格を目指すにあたってはどのような課題がありますか?

大きく分けて二つあります。ひとつは資金面です。九州リーグでは遠方への遠征も増え、交通費、宿泊費、食費などが都度かかります。
もう一つは、選手の仕事との両立です。現状では週末2日間を完全に空けられる選手が半分もいません。九州リーグに昇格すると、土日2日間かけての遠征が増えるため、仕事との両立が今以上に難しくなります。

これらの課題を解決するために、チームの運営基盤を強化し、選手たちが安心してサッカーに打ち込める環境を整えることを目的に、チームを一般社団法人化しました。

これまでも企業からのサポートを受けていましたが、九州リーグに上がるためにはさらなる資金が必要です。一般社団法人化することで、協賛企業の獲得がしやすくなります。

また、サッカー以外の地域貢献活動も行う予定です。子どもたちのサッカーチーム運営を手伝ったり、協賛企業のイベントをお手伝いしたりすることで、社会貢献活動にも力を入れていきたいと思っています。

団訓「サッカー人である前に人であれ」

写真提供:パスチャライズ福岡


 
ー将来的にはどのようなチーム運営を目指していますか?

実業団チームのような形態を目指しています。一般社団法人で選手たちを雇用し、普段は社団法人の仕事をしながらサッカーができる環境を5年以内に作りたいと考えています。それにより、選手たちが仕事とサッカーを両立しやすくなり、家族からの理解も得やすくなるでしょう。
私個人は、監督業は誰かに代わってもらい、一般社団法人の代表として、選手のプレー環境を整える側に回りたいと考えています。

ーどのような選手に入団してほしいと考えていますか?

「サッカー人である前に人であれ」が私たちの団訓です。現在は「来る者拒まず」で選手を受け入れていますが、初めにチームの方針をしっかり伝えた上で、それに共感できる選手に入ってもらっています。

どうせ身を削って人生をささげるなら、人として素晴らしい人に入ってほしいし、そうでなくても、パスチャライズ福岡に入れば、人間的にも成長できるという環境を作っていきたいと思います。

もちろん、上手い選手に入ってきてもらいたいですが、サッカーだけでなく、人としての志を持つ人に入ってきてもらいたいですね。サッカーの技術だけでなく、人としての成長も大切だと考えているので、挨拶や掃除など、基本的なことをしっかりできる人間性を重視しています。

川本代表の言葉からは、パスチャライズ福岡の環境づくりへの熱意が伝わってきます。選手一人一人の成長を重視し、サッカーと仕事の両立をサポートする体制、そして人間性を大切にする姿勢。これらが融合することで、チームは着実に進化を遂げ、高い目標に向かって歩みを進めています。選手がストレスなくプレーできる環境を整えながら、チームの強化と人間的成長の両立を目指すパスチャライズ福岡。彼らの九州リーグ昇格への道のりは、単なるサッカーの挑戦を超えた、社会人アスリートの新たな可能性を示すものとなりそうです。


パスチャライズ福岡(Passcharise)
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