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長野 佐久相撲クラブ・大井岳夫監督「生きていく上で大切なことを学べる相撲」

佐久相撲クラブ

代表・監督:

大井岳夫(おおい・たけお)さん

長野県出身、長野県佐久市在住。中学時代に元大関・霧島に憧れ相撲の道を志す。新弟子審査は体格が及ばず大学で相撲をすることを目指す。明治大学体育会相撲部へ当時唯一の一般試験から入部。学生時代は東日本体重別選手権3位。全国大会ベスト8。2012年にわんぱく相撲佐久場所を立ち上げ、2016年佐久相撲クラブ創設。佐久相撲甚句会の代表も務める。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 相撲を通じ礼儀や思いやり、強い精神力を育む
  • 出身者が他競技でも全国レベルで活躍
  • 相撲好きが増え地域の相撲活性化に貢献

長野県東信地域(東エリア)唯一の相撲団体である佐久相撲クラブ。指導をするのは、人生の岐路を相撲愛で切り拓いてきた大井岳夫さんです。相撲は体の大きさだけではなく、気持ちの強さも勝敗を分けます。その気持ちを育むことを大切にしている大井さんに、相撲と子どもたちへの思いを語っていただきました。

―大井監督が相撲をやることになったきっかけを教えて下さい。

写真提供:佐久相撲クラブ


 
テレビで大相撲をよく見ていて霧島が大好きでした。自分もやってみたいと思ったのは中学生のときですが、体重と新弟子基準(75kg以上)に開きがあり新弟子審査は受けられませんでした。そして相撲部のある高校へ行こうと思ったのですがうまくいきませんでした。

そこで「大学では」と強豪の明治大学に進学しました。合格発表後すぐに合宿所へ電話をしたのですが入部はスポーツ推薦者のみでした。しかし何度も連絡し、情熱だけで入部を認めてもらいました。大きなタイトルは取れませんでしたが充実した学生生活でした。

―佐久へ移住が第二の相撲人生でしょうか。

17年前、当時住んでいた都内から移住後、しばらくして佐久青年会議所へ入りました。入会の理由のひとつは青年会議所が主催する「わんぱく相撲(※)」を佐久でも開催したかったからです。
その後、佐久でわんぱく相撲大会を立ち上げ、2018年からは県大会・全国大会へも出場できるようになりました。

移住当初から定期的な指導や活動にも興味がありました。ただ、はじめたきっかけは子どもたちからの依頼です。

2016年にわんぱく相撲の参加者から「もっと練習がしたい」と依頼を受けました。そこで「3人集めたらいいよ」と言ってみたら、本当に集めてきたんです。びっくりしましたがとても嬉しかったです。

※小4~6年対象の大会。全国大会は男子は両国国技館、女子は全国各地で開催。

写真提供:佐久相撲クラブ


 
―2016年の始動から振り返ってみていかがでしょうか。

3名でスタートしたものの、メンバーは増減を繰り返し、一時は存続が危ぶまれることもありました。しかし、保護者や支えてくれる方の応援でなんとか継続できています。

対象年齢は明確に設けていませんが、主な参加者は小学生です。近隣に相撲部のある中学や高校はないので、卒業後に相撲を継続することは難しいですが、相撲がきっかけではじめた柔道やレスリングで全国大会に出場する選手もいます。相撲経験が別の競技で活かされていることは嬉しいですね。

相撲クラブとしては昨年、団体で念願の県大会優勝ができました。チームが一丸となってレベルやタイミングが合わないと成せないことなので、これまでを振り返り感慨深くなりました。

写真提供:佐久相撲クラブ


 
―指導をするなかで大切にしていることを教えて下さい。

礼儀、人の話を聞く、挨拶、そして相手への思いやりです。
稽古をすることで力が強くなります。でもその力は“自分のためではなく人のために使う”ようにしてほしいと伝えています。
また私自身の経験から、たとえ自分より体が大きい相手でも気持ちを強く持てば十分勝負になり、ときには勝てることだって少なくないと感じています。どんな相手でもひるまず向かう強い気持ちを育くむ稽古も行なっています。

その稽古とは、稽古前にまず今日はどのような稽古をしたいか、何を克服したいかを一緒に考え共有する場を設けています。稽古も立ち会いを重視した反復練習など、少し負荷をかけたものも大切にしています。いつでもできるだけポジティブな言葉で、気持ちを引き出すことを心掛けています。

―県内での相撲の盛り上がりはいかがでしょうか。

県内では佐久のほか、木曽や飯田、塩尻、長野、駒ケ根に相撲クラブがあります。南信(長野県の南エリア)がチーム数が多く盛んな地域です。50年前に木曽がやまびこ国体の相撲会場となり、土俵が作られました。以降も室内土俵が整備されるなど県内トップクラスの環境が整っています。だからこそ御嶽海のような力士も誕生したのだと思います。

相撲クラブのある東北信(長野県の東北エリア)はチーム数が少ないので、出稽古は中南信(同県中央、南エリア)へ行くことが多いですね。

写真提供:大井岳夫監督


 
―地域には相撲ファンやサポートしてくれる人もいらっしゃるそうですね。

佐久地域には相撲や格闘技ファンだけでなく、たくさんの人が集う人気店の『相撲料理・ちゃんこ鍋 大鷲』があります。元大鷲で店主の伊藤平さんにはときどき練習にも来ていただいたり、何かとサポートをしてもらっています。

またその大鷲へ相撲好きが集まって、地域の「相撲甚句」の会も定期開催しており、コアなファンの結束が深まっています。

先日は大相撲佐久場所が県立武道館で開催されました。身近に相撲を体感できる場が増えてきて、ファンも少しずつですが確実に多くなっていますね。

―これからどのようなクラブを目指したいですか。

もちろん勝てる強いチームになれるといいとは思います。でも、子どものスポーツではもっと大切なことがたくさんあります。それを学べるのが相撲だと思っています。

指導者数が限られているので、稽古中も上級生が下級生の面倒を見ることが多く、コミュニケーションを取るなかで全体的なレベルアップを図れる雰囲気になっています。

「相撲が好き」「体を動かしてみたい」と少しでも興味を持ってくれる人とやっていきたいですね。
また自分自身の体が動くうちは一緒に組んでたくさんのことを伝えたいです。実は個人的にも国民スポーツ大会を目指すつもりです。子どもたちと一緒になって日々鍛錬を積んでいます。

ー人生の岐路を相撲をベースに切り拓いてきていますね。

その通りです。好きになって実際にやってみて、相撲を通じて心身共にたくさんのことを学んできました。体づくりだけではありません。礼儀や思いやる気持ちなどたくさんあります。自分で何かを決めるときに必ずあったのは相撲への思いです。進路の決定にはじまり、大学での住まいも合宿所と、相撲中心に過ごした学生生活。そして移住先での活動から今日に至るまで、人生のベースに相撲への思いが必ずありますね。子どもたちにも相撲を通じて、たくさんのことを感じ学んでほしいです。

オリンピックメダリストが自身のベースとなった競技として挙げたことでも話題になっている相撲。今回話を聞くなかで印象的だったのは「自分の力を人のために使う」という言葉です。体を大きくする、力をつける、それは自身のためだけであってはならない。勝負の世界でありながらも人を思いやる心づくり。礼儀や心を育める相撲の尊さや、地域に根づかせていきたい思いを聞くことができました。佐久でも地方巡業が開催され、本物を見る機会にも恵まれています。少しでも興味があればぜひ体験してみてはいかがでしょうか。


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