AKS TC
代表:
赤司健槙(あかし・けんしん)さん
千葉県立船橋高等学校から順天堂大学へ進学、在学中の同大学院スポーツ健康科学科でスポーツバイオメカニクスについて研究。大学在学時よりAKS TCのコーチを務め、2024年4月代表に就任。
コーチ:
赤司啓彰(あかし・ひろあき)さん
国際武道大学卒業後、佐賀県内で中学校教諭を務め、長年陸上部で監督として指導し、全国大会で多くの入賞者を指導した。2014年に千葉へ拠点を移し陸上指導を再開。現在は松戸市内の中学校に勤務しながらAKS TCのコーチも兼務。ここ数年では、全日本中学校陸上競技選手権大会において、走高跳・優勝、4×100mR・第5位の成績をはじめ、全国・関東大会での様々な種目での入賞者を輩出している。
ひと目でわかる! チームの特色
- 指導者に学校の教員も参画する陸上クラブ
- 短距離・フィールド種目を軸に各種目の専門コーチが揃う
- 陸上を楽しむことと人格形成を重視
千葉県松戸市で約10年前から活動を始め、多くの大会で好記録を連発し、存在感を示しているクラブチーム、AKS TC。代表の赤司健槙さん(以下、代表)と、健槙さんのお父様で同市内の中学校教論を務められているコーチの赤司啓彰さん(以下、コーチ)に取材しました。
他にはないチームの特徴は、「部活動とクラブチームのハイブリッド」であること。その強みやお二人の指導方針、運動部活動の地域移行についても語っていただきます。
“ハイブリッド型” 陸上クラブ、数あるメリットとは
ー「部活動とクラブチームのハイブリッド」とは。チームの特徴を教えていただけますか。
代表 簡単に言えば、専門分野に長けた経験豊富な指導者の中に、学校の先生も複数いる陸上クラブチームです。
そもそも私たちのクラブチームは、陸上を本気でやりたいと思う子が目標にチャレンジできるように、心置きなく、陸上ができる環境を整えることをモットーにしています。上達して大会等で結果を出してくれるのはもちろん嬉しいですが、まずは陸上の楽しさを知ってもらうことを大事にしています。
クラブチームということもあり、様々なレベルの生徒が集まっているので、なかには県大会優勝、関東や全国大会に出場する子も複数います。そのようなレベルの子たちとともに練習することで、他の子たちも記録がたかまっていき、チーム全体で成長していきます。また、練習にはOBOGとして来る大学、高校生もいて、彼らから刺激を受けて上達しています。
対象は中学生で、この年代だとほぼ全員が初心者からのスタートです。真っ新な状態で始めるからこそ、経験を摘んだ指導者が絶対的に必要です。私たちのチームは、短距離・フィールドを中心とした種目ごとに、専門性の高い経験豊富なエキスパートを揃えています。では、そこになぜ教員の方々がいるのか。
ハイブリッドたる所以の背景としてはまず、クラブチームと学校の連携についての問題があります。これまで、クラブチームと学校の連携というものは非常に取りにくいことがありました。こういった問題は、子どもたちにとって大きなデメリットにつながりかねません。その解消のためにも、学校とコミュニケーションが取りやすい教員に入ってもらっています。
コーチ 運動部活動の地域移行も絡んでいます。部活動に代わり、外部指導者や民間のクラブチームが受け皿になることはいいのですが、成長期である子どもたちへの教育という観点では、補いきれない部分があるかなと。やはり学校教育に携わる人の参画が必要なのではと思います。
代表 しかし、それは部活動になるのではないかと言ったらそうではありません。今まで、部活動は言ってみればボランティアで、あくまでも好意で成り立っているものでした。しかし、本来教授というものには、サービスとして対価が発生するはずです。そこに対価が発生してこそ、初めて責任が伴うと思うのです。
ですから私たちは月謝をいただく代わりに、必ず中学生にとって、良い指導者を揃え、環境を整えることを約束しています。そういったギブアンドテイクを実現できる形を考えた時に、たどり着いたのが、この部活動とクラブチームのハイブリッド型でした。
加えて、部活動の地域移行は長時間勤務等、教員の負担を減らすための取り組みでもありますが、部活指導をやりがいと感じ教員になった方も一定数いる状況です。彼らのモチベーションはどうなるのでしょうか。そういった教員の方々のお役に立てたらという思いもあります。
すなわち、私たちのチームで教えることができるのは陸上の技術、技能だけではありません。陸上をとおして、学校生活や挨拶等、人としての基本的・社会的な礼儀についても身に着けられるよう子どもたちには、よく話しています。
中学生が身につけるべきは「引き出しを増やすこと」
ー活動開始の10年前は、まだ運動部活動の地域移行が取り沙汰されていない頃です。当初からこのような形を取られていたのですか?
コーチ そもそもAKS TCの原点は、実は約20年前に始まり、場所も千葉ではなく九州なんです。もともと私は佐賀で教員をしており、その学校で陸上部を見ていました。部活動って、専門外の先生が顧問をやることもありますよね。近隣の中学ではそのようなケースが結構あり、他校の生徒たちが私のところへ教わりに来ていたんです。
学校の垣根を超えて、陸上を頑張りたい子を指導するという環境は、ここでできたと言えます。
そこから10年前に千葉へ移り、陸上指導を再開し今に至ります。先述したように最初は少人数でしたが、口コミが広まり、昨年は参加者が100人くらいになったんですね(笑)。
その人数に対して指導者が1人や2人では、十分に教えることができないというのと、ちょうど全国大会にクラブチームが参加OKとなったこともあり、今年2024年4月にクラブチーム化しました。現在は55名の中学生が所属しています。
ー短距離がメインとのことですが、どんな種目を練習できるのでしょうか。
代表 短距離は言うまでもなく100m、200m、400m、ハードルです。フィールド競技の走幅跳、走高跳、投擲である砲丸投、円盤投、ジャベリックスローもやっています。それぞれに指導者がつく形で、計6名のコーチが見ています。時々、日本選手権で活躍しているような選手もゲストで指導に来てくれます。
1つの種目で高いレベルを目指すというよりも、将来につながる引き出しを増やしてほしいんですね。100mの選手が100mだけ速く走れるのではなく、いろいろな種目に対応できる体と能力を持つことができる選手になってもらいたいのです。とはいえ、100mに秀でた子を否定しているわけではありません。それはそれで素晴らしいことだと思います。
私たちのチームは、いろいろな種目を広く経験してもらい、スキルの引き出しを増やします。各種目の技術はもちろんしっかりと指導しますが、より専門的で深い知識やスキルは、高校や大学といった次のステップで学んでもらえればいいかなと考えています。
それもあって、私たちのチームは4種競技で関東や全国大会に行く選手が複数名おり、それにチャレンジする子どもたちが増えてきています。
コーチ その子が何に向いているか、中学生の時点ではまだ未知数じゃないですか。みんなさまざまな可能性を秘めている。だから、遊び感覚でいろいろ挑戦するんですよ。
例えばチーム内で7種競技会を開催し、みんなで得点を競って、勝った負けたと言い合いながら、そこから芽生えてくる子もいるわけです。この芽生えた才能を次のステップにつなげることを可能にするために、私たちはどの種目でも教えられる環境を用意しています。
「陸上を楽しむこと」の本当の意味
ー練習場所と活動日、メンバーのお子さんについても教えてください。
代表 おもに松戸運動公園陸上競技場で練習しています。基本は毎週水土で、土曜が日曜になったり、新たに別曜日が加わったりと多少の変動はあります。松戸が使えない場合は、埼玉県の三郷でも行っています。
対象地域は限定しておらず、負担にならない程度に来られる人はぜひ参加してくださいといった感じです。遠方だと、野田や柏から来ている子がいます。
ー目指している選手像や指導方針もお聞かせください。
代表 みんなに応援される選手の育成を目標にしています。それには、何事にも謙虚で、陸上と真摯に向き合い、楽しむ姿を見せること。そして、人として正しいことを、当たり前のように行うこと。そういったことを、いつも言うようにしています。
コーチ ここに来たら楽しく陸上ができると思ってほしいですね。仲間も増えるんですよ。いろいろな学校の子が集まっていますが、みんな仲良しでちょっとうるさいくらいです(笑)。
代表 やはり、この先も陸上を続けていってほしい思いは強いですね。それには、父の言うように楽しいと思えることが大切だと思います。精神的に負担を感じる練習は続きません。指導者はみな陸上の魅力を知っているからこそ、陸上の面白さに気づいてもらえるような指導をしていけたらいいと思います。
練習内容は、個々のレベルに合わせて指導をしています。また、自分の体を正しくコントロールする等、成長期に必要な力をつけることを重視しています。
コーチ ただ、楽しさの意味を履き違えてほしくないんです。もしかしたら「楽」というイメージがあるかもしれないから。ですが、楽をしていたら強くはなりません。時にハードワークも行うこともありますが、子どもたちはその辛さ、きつさを楽しんでいるんです。
なぜなら、乗り越えた後の自分の姿をイメージできているから。先輩たちが「今頑張っておけば、こうなるぞ」と伝えてあげるんです。それを描きながら過酷な練習に立ち向かえば、苦難は楽しさに変わるのです。
コーチ それに、中学生は競い合いたい年頃というか、お互いが向上できるようなライバル意識が強いのかもしれません。例えば、100mを専門にしている中2男子が6人いるのですが、彼らはまさにいい例であり、常に競い合っていて面白いです。
市の大会等は決勝にこの6人がダーッと並ぶんですね。大会ごとに「今日は俺が勝った!」と言い合っていて(笑)、勝負の楽しみを味わっています。キツい練習も同様で、すごく楽しそうなんですね。もちろん度が過ぎないよう、私たちでコントロールしますが、切磋琢磨する関係が自然と作られています。
長年の指導で見えてきた「伸びる選手の特徴」
ー中学生年代ならではの雰囲気がアスリートとしての成長にうまく作用しているとのことですが、それを踏まえてお子さんたちへの接し方で意識されていることはありますか。
コーチ 「持ち上げて持ち上げて持ち上げて、少し落とす」。そんな感じですね(笑)。
そこそこ実現可能なことを伝えています。普段から様子を見ていたら、これくらいまでできるな、ということが経験上わかるので、それを短期目標としてあげています。そうすれば、自分でイメージを描くことができて、それを達成することで、自信が身につきます。その成功体験の繰り返しで、どんどん成長していきます。
これを重ねると信頼関係も生まれます。私の言ったことが実現できると、「この人の言うことは本当だ」と思ってくれます。
ちょっと調子に乗ってきたなと思ったら、ドンと落とします(笑)。ですが、これはその子の性格や精神状態にもよります。みんなの前で注意しても大丈夫な子、今は悩んでいるから落とすのはやめた方がいい子。私は教員ということもあり、そのあたりを見極めて接しています。
代表 私は真っ向から否定しないようにしています。それをしてしまうと、今の子たちは一瞬で崩れてしまう。「自分はできる」という気持ちを持たせてあげないといけないのかなと思います。
ーお子さんひとりひとりにドラマがあると思いますが、指導されてきたなかで特に印象深いエピソードを教えてください。
コーチ 約6年前の話になりますが、私の部活動の部員が僅か男子4名だった時期がありました。その4名がリレーで全国5位になったんです。
全国大会となると競技場が広すぎて、監督である私の声が届かないんですね。リレーというのは、風の強さや向き等、天候の変化に合わせて急遽調整が必要になる場合もある。それが、全国大会という大舞台で起きたのです。
これまで私の指示で動いていた彼らはどうなるかなと不安にかられましたが、現場の状況や風を読み、コミュニケーションを取りながら、彼らだけで対応できたんです。これまでの積み重ねで、私の言っていることを理解してくれていたんだという嬉しさと、それを全国大会決勝の場でやってのけたという誇らしさで、胸がいっぱいになりました。
また、走高跳で飛躍的な成長を遂げた子のエピソードも忘れられません。入りたての中学1年の頃はもちろん、2年の終わりになっても全然目立ちませんでした。ですが、彼はこの頃から熱心に自分の種目を研究し出したのです。
動画を見たり、いろいろな研究をしたうえで練習に参加するんです。練習メニューも自分で考えるようになりました。次年度、県で1位でかつ全国大会の標準記録を突破し、全国大会に出場することができたのです。そして見事、全国優勝を果たしたんです。
ー最後に、多くの子どもたちを見てこられたうえで「伸びる子の特徴」というと、何だと思いますか。
コーチ 「素直に聞くことができる」ですね。あとは、走高跳の彼のように「自分で研究する、勉強する」。柱としては、この2つだと思います。言われた通りに従うのではなく、主体性を持って行動することに意味があると思います。
代表 それに加えて、何でも吸収して「自分のものにしてやる!」という強い気持ちを持つことが、成長につながるのではないかなと思います。そして、「自分のものにするためにはどうすればいいのか」と、そこまで考えることも重要です。これらを身に着けた子は、さらに伸びしろが多くなると思いますね。
ぜひ、AKS TCに入って、陸上にひたすら打ち込んでほしいと思います。私たちが、全力でサポートします。
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