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“卓球を支える”立場でも活躍できる人材を。3年ぶりの全国3位・静岡学園高校卓球部の覚悟と思い

静岡学園高等学校卓球部

監督:

寺島大祐(てらしま だいすけ)さん

1982年生まれ、静岡県出身。中学1年から卓球を始め、沼津東高校から筑波大学へと進学。静岡学園高校卓球部の監督として、2021年のインターハイ学校対抗で同校初の全国ベスト4入りを果たし、2024年のインターハイでは3位入賞を成し遂げた。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 静岡を代表する卓球強豪高校
  • 高校とクラブの2拠点で強化を図る
  • 「卓球界への人材輩出」を目指しTリーグと連携

2021年のインターハイで初のベスト4に入賞し、2024年のインターハイでも3位と近年着実に実力をつけている静岡学園高校卓球部。
アシュラSDというクラブチームとも連携し、卓球部の強化を行っています。
今回は静岡学園高校卓球部の寺島大祐監督にお話を伺い、その強さの秘密や今後の展望に迫りました。

苦しい期間を乗り越え3年ぶりのインターハイ3位入賞

ー2021年のインターハイで創部初の3位入賞から3年ぶりに2024年大会で3位に入りました。同じ3位でもまた違った思いがあったのではないでしょうか。

2021年の3位は、コロナ禍で大会が中止になった1年を過ごした後だったので、自分の中でも後悔しないようにフルパワーで準備しました。

でも全力を出した反動なのか、一時は燃え尽き症候群のようになってしまいました。

ー初の3位入賞のあと、そのような状況になっていたのですね。

当時は家族のことや学校での役職の変化など環境が大きく変わり、目の前のことに忙殺され、なかなか歯車がかみ合わず辛かったですね。

その結果、一時期は県内でも通用しない状況になってしまい、そこでようやく目が覚めて「しっかり頑張らなければ」と思いました。

ーそこから何か変えたのでしょうか?

自分がタスクを抱え込みすぎたことが1つ原因としてあったので、「自分がやるべきこと」と「他の人に任せるべきこと」を分けました。

すると少しずつ心に余裕が生まれ、時間はかかりましたが、もう一度本気で日本一を目指そうという覚悟が決まったんです。

ー覚悟が決まった一番の要因は何ですか?

上位進出を狙っていた2023年のインターハイで、大分県代表の明豊高校に大敗したことです。

その際、外部コーチの小林修平さん(Tリーグ・京都カグヤライズ監督)と話し合って、「本気で目指さなければ、日本一にはなれない」「中途半端な気持ちで目指すくらいなら本気で目指した方が楽だよ」と言われたことが大きな転機となりました。

当初はなかなか踏ん切りがつかなかったのですが、小林さんと話しているうちに「自分の目標は日本一だ」と改めて思い直し、全てを懸けて本気で日本一を目指す日々が始まりました。

ー全てを懸ける覚悟を決めたわけですね。

もちろん、その前から日本一を目指して戦っていたつもりではいました。
ただ、コロナの影響でチームの成長が途絶えてしまったり、子どもも生まれ家庭も慌ただしかったりと、「これぐらいでいいか」という気持ちがどこかにあったのも事実です。

再度「日本一を目指す」と決意してからは、全てを懸けて目標に向かう覚悟が決まりました。目標が明確になったことで、あとは突っ走るだけだと思えて、気持ちが楽になりました。

ゲーム性を取り入れた練習で競争意識を植え付ける

ー練習中はメニューを細かく指示されていましたね。

試合に近いのはゲーム形式やオール形式の練習ですが、それだけではどうしても頭打ちになります。
そこで、サービスから3球目まで、レシーブから4球目までなど、技術やラリーの特定の部分のみを取り出して、強化するようにしています。

集中して反復することで技術をインプットし、最終的に試合や試合形式の練習でアウトプットできるようにしています。

ー練習中も得点をつけて、ゲーム性を持たせていることも印象的でした。

得点をつけることで基本練習から競争させています。勝てば上のレベルの選手と練習できるようにすることで、選手たちの意識も自然と高まるように工夫しています。

もちろん全てにゲーム性を取り入れるわけではありません。状況やその日のチームの雰囲気を見て、臨機応変に判断しています。

豊富なスタッフが揃う静岡学園卓球部

ー練習場所がアシュラSDというクラブチームと高校の2拠点あるというのも面白いなと思いました。

部員が増えてきたことから、2拠点で練習するシステムを色々試してきたんです。

その結果、普段から競争意識を持たせることが効果的だと感じました。そこで、学校ではレギュラー含む上位陣、クラブチームではそれ以外のメンバーといった具合に、選手のレベルに合わせて練習場所を分けています。プロ野球の1軍、2軍で拠点が違うようなイメージです。

ー拠点が違うことで選手のモチベーションが下がることはないのでしょうか?

高頻度で部内リーグを行い、積極的にメンバーの入れ替えを行っています。

また、アシュラSDは一般のお客様も通う卓球場なので、川口育寛コーチ(明治大学OB)、片倉優瞳コーチ(埼玉工業大学OB)をはじめ、経験豊富な指導者が常駐しています。

レッスンの隙間時間に質問したり指導を受けたりできるので、強くなれる環境が整っているんです。

ー優秀な指導者がいるのは心強いですね。

また、アシュラSDで練習する選手たちには、一般のお客様やクラブに通うジュニア選手たちと触れ合ったり、指導したりする機会があります。

外部の人と関わることで、応援してもらっている実感を得られたり、教えることで逆に技術の理解が深まったりと生徒たちにとっても良いことづくめです。

ーアシュラSDの存在はチームにとって大きいですね。

実際、アシュラSDで練習していた選手の中には、先日の全日本ジュニアの県予選で上位陣を上回り、本戦通過を決めたケースも出てきました。

競争意識の中でチーム力が底上げされている証拠だと思いますし、アシュラSDという拠点の存在は大きいですね。

卓球界で活躍する人材を育成へ

ー今後のチームの展望はありますか?

チームとして日本一を目指すとともに、最終的には日本のトップに立ち、世界に羽ばたくような選手を育てたいですね。

しかし、それは一握りの選手にしかできないことだと思います。そこだけを目指すと、そこから外れた選手は何も残せないと感じてしまうなと。

そうではなく、全ての選手にとって最高の環境を作りたいと考えています。

ー具体的にはどんな環境でしょうか?

過去の卒業生には、分析担当として日本代表に帯同した者や、メディア側として世界卓球を取材した者もいます。
それぞれの選手が持つ特徴を活かして、卓球を軸にしつつ社会で活躍する準備ができる環境にしたいと思っています。

選手という“卓球をする”立場だけでなく、“卓球を支える”立場でも活躍できる人材を育てていきたいです。

ーそれは素晴らしいですね。

フィジカルトレーナーやメンタルトレーナー、栄養士、マッサージ師などスポーツの専門家を練習に招いているのは、選手の強化はもちろんですが、こうした職業を身近に感じて選択肢を広げるという意味合いも大きいです。

外部コーチの小林さんもTリーグの監督のほかに、卓球場や飲食店を経営をしています。卓球を中心に、どのようにビジネスを展開しているのかを実体験を踏まえて話してくれることもあります。

選手たちにとっては貴重な学びの場ですし、大きな財産になっていると感じています。

ー卓球が強くなる以外のことを学べるのは非常に価値のあることですね。

卓球の技術だけでなく関連する知識も身につけ、やがては競技経験を活かせる職業に結びつけてもらいたいという思いがあります。

最終的には、選手一人ひとりの技量に応じたサポートを行い、トップレベルから支える側まで多様な形で卓球界に貢献できる人をたくさん育てていきたいです。

再び全国の表彰台に登った静岡学園卓球部は、強くなれる環境が整っていました。また、強くなるという一面だけではなく、「卓球界に貢献できる人材を」と多方面から卓球界へ卒業生を送り込もうという展望もあります。選手たちの卒業後の活躍が今から楽しみです。



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