豊田大谷高等学校陸上競技部
顧問:
鈴木豪師(すずき・ごうし)さん
小中学校時代はクラブチームで野球に取り組み、中学の部活動を機に陸上競技に転向。以降、大学まで陸上選手として競技を続ける。愛工大名電高校、皇學館大学にて長距離選手として競技を続ける。大学卒業後は名古屋の高校で教員を経験したのち、豊田大谷高校へ。陸上部(男子長距離)の顧問として、今年で8年目を迎える。
ひと目でわかる! チームの特色
- 愛され応援される選手の育成
- 人としての土台を作る教育教育
- 充実した環境
ハイレベル化する高校陸上界。全国からスカウトをする高校もあるほど各校の競争が激化する中、その多くが愛知県内中学出身者という豊田大谷高校陸上部。
全国レベルで戦うためにチームで大事にしていることや、教育の場において顧問としてできること、行いたいことなど、教育とスポーツの両面からお話をお聞きしました!
豊田大谷ってどんなチーム?
ー入部方法について教えてください。
最近はスカウトが多いですね。各大会や中学校はもちろんのこと、クラブチームにも赴きます。その中で競技力やこれからの伸びしろはもちろん、人間性も重視しています。何よりこの長距離という辛い競技をするにあたって続けられる子、走ることが好きな子、辛いことを頑張れる子、速くなりたい気持ちの強い子には声を掛けたくなります。
また、そういった推薦だけでなく一般入部でも入ってきてインターハイや駅伝メンバー入りをしている選手もいます。
また、競技会での走りだけではなく、アップで体を冷やさないなど、細かいところにも気を使えているか。レース展開や終わった直後の対応などを見て声を掛けることもありますし、実際に選手と話すことも多いです。
過去にはここに入るため、県外から家族で引っ越してきた子や、電車で片道2時間かけて通学している子もいます。家族の協力はもちろんのこと、本人のやる気がなければ続けられないと思います。
家が遠い子は通学時間が長い分、睡眠時間が削られていて、本当は睡眠をしっかりとらなければならないんです。ですが、朝4時起きで朝練にくる生活を3年間続けていたら、それだけで精神的に強くなっていきますね。
ーチームの目標やテーマなどはあるのでしょうか?
チームコンセプトとして、「応援される選手になりましょう」とういうことは勧誘の時点でも言っていて、そこは選手たちも共通認識としているところです。
顧問や家族の方はもちろん応援してくれるけれど、それ以外の方たちにも応援してもらえるような取り組みを日頃から積み重ねられているのか、というところはすごく大事だと思っています。挨拶や授業態度、大会等外に出たときの振る舞い方などから応援してくれる人は増えると思うんです。
基本的に長距離は個人競技ですし、駅伝においてもやはり走る時は一人。肉体的にも精神的にも強さが求められる競技をするにあたって、声援はかなり力になります。だから、自分が周りに与える影響が巡り巡って自分のためにもなるんです。
例えば昨年の東海大会への出場が決まった生徒は、先生方に愛されるようなキャラクターで、その子のために先生方が静岡まで足を運んでくださったこともありました。休日にもかかわらず、です。生徒がしっかりチームのコンセプトを体現してくれていたんだなと実感しました。
もちろん選手にとって競技力は必要ですから、低酸素トレーニングやクロスカントリーのコース、近所にはオールウェザーの競技場など環境も整えています。立地的にアップダウンが激しい地形なので、ロードにも適していたりとランナーにとっては充実しています。
しかし、まだ高校生で学校という枠の中、指導者や保護者の方の支えがあってやれていることでもあるので、人としての土台を作る教育に重きを置いています。
ー陸上部の雰囲気について教えてください。
チーム方針として「メリハリを付ける」ということを大切にしています。個人競技ですが集団練習も多いので、そこで全員がタイムを守る意識を持つなど、厳しくするところはこだわってやっています。
ただ、練習が終わると先輩後輩関係なくわちゃわちゃしていますね。学校の近くに温泉があるのですが、そこに一緒にお風呂に入りに行ったと部活日誌に書かれていました(笑)。
この温泉というチョイスからも分かる通り、子どもたちは常日頃から自分の体のケアに気を使っています。トレーナーさんを呼んでマッサージをしてもらったりもするのでそういったところから自然と気を付けるようになったみたいです。
その流れで、今年度からは新しい取り組みも始めました。トレーナーの専門学校の学生さんに、休日や大会時に来ていただいているんです。トレーナーの卵である学生さんには実践の場になりますし、選手たちは専門的なケアを受けられる。まさにウィンウィンな関係ができています。
ーケアなどは都度学ぶ機会を設けているのですか? また、どんな取り組みを行っていますか?
複数のコースのうちスポーツコースがあり、授業の中でアスリートに必要な知識を学んでいるんです。さらに外部講師を招いて睡眠や栄養に関する講習会を実施したり、少ないですが企業様と連携して物資提供をいただいたりもしています。
また、今年は保護者の方向けに栄養講座も開きました。うちには寮がないので基本的にみんな実家から通うことになります。そうなるとやはり食事や睡眠という基本的な生活の部分はご家庭に任せなければいけないんです。
しかし、専門的な栄養の知識がない親御さんも多いので、スポーツ栄養の専門家をお呼びして、講座を開きました。親御さんたちからは良い反応を頂きました。
競技力の向上も良い教育も両方提供したい
ー指導するにあたり、先生ご自身が行っていることは?
基本的にトレーニングメニューは、毎週僕が選手一人ひとりに合わせて組んでいます。豊田大谷に赴任した7、8年前は県大会出場レベルの選手すらいなくて、そんな中「必ず5年以内にインターハイ選手を輩出する」と初めての部内ミーティングで話したんです。
そんなほぼゼロベースのところから「最短で力をつけていくには?」と考えたとき、基礎の徹底は当然として、それ以上に他がやっていない独自の取り組みが必要だと感じました。そこで、学校の裏山を開拓してクロスカントリーを整えたり、校内でいつでも低酸素トレーニングができる環境を導入したりとかなり大胆に動いてきました。
同時に、選手たちは懸命に努力を重ね、4年目でインターハイ初出場を果たしました。以降は4年連続でインターハイに出場し続けています。
また、地域のスポーツイベントへの参加や、ボランティアで裏方などの機会を経て、子どもたちも支えてもらっているという意識が身についたように感じます。
生徒たちには人として大事にすべきことを教えながら、「速くなりたい」という思いにもしっかり応えていけるよう、今後もいろいろなものを提供していくつもりです。
ー先程「部活日誌」と仰られましたが、こちらはみなさんどのようなことを書かれているのですか?
1日の食事内容と練習メニュー、睡眠時間、体調確認、1日の走行距離と月間走行距離の集計、その日に感じたことを書き溜めています。やはり、目に見える形で残すというのは大切ですし、自分の体が資本となる競技だからこそ、日誌を通して自分自身と向き合う時間を作っているんです。この日誌は毎日書き続けるため、だいたい1人あたり3年間で約16冊ほどになります。
面倒くさいところはあると思うのですが、少し頑張って毎日書いて提出してもらっています。こういうものを地道に積み重ねていける選手の方が、ここぞの場面で実力を発揮できると思うので、そこはこだわりを持って取り組んでいます。
選手たちに毎日提出させるからには自分もしっかり答えないといけないと思って、なるべくチェックしてコメントを入れて返しています。どうしても時間がないときは、写真だけ撮って家で付箋にコメントをまとめて後で貼るなどしています。
ー卒業後の進路について教えてください。
大学へ進学して競技を続ける選手が多いです。
最近は大学からスカウトが来て、箱根駅伝や全日本大学駅伝を目指すため進学する生徒も増えてきました。ただ、地域柄と言いますか、就職する子も中にはいます。今年は豊田市内の世界的に有名な企業へ内定をもらった選手もいます。
子どもたち自身の目指す先、例えば大学や専門学校で新たな夢を追いかけるのか、それとも社会人として働きながら競技を続けるのか、それを一緒に考えながらサポートしています。
教師という仕事柄どうしても忙しいこともありますが、子どもたちに何を提供できるのか、常に考えていたいと思っています。環境や、競技力向上のためのノウハウしかり、それだけではなく「人として」応援される選手になれるよう、一人ひとりとしっかり向き合って指導しています。
いよいよ今年も駅伝シーズンが到来、本格的なスカウトの時期です。豊田大谷でなら競技者として、人として大きく飛躍できる3年間を送れるでしょう。
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