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「厳しい指導でバレー嫌いになった」自分の経験を教訓に。松戸ダイヤモンド・本多洋祐代表の思い

松戸ダイヤモンド(中体連男子)

代表/コーチ:

本多洋祐(ほんだ・ようすけ)さん

松戸市立根木内中学校バレーボール部に所属し、関東大会出場など活躍。千葉県立小金高等学校、駒澤大学卒業後、小金高校男子バレー部外部コーチに就任。その後、2010年に社会人クラブチームの松戸ダイヤモンドを創設。現在は男女合わせて在籍メンバー90人以上の規模を誇る。さらに2024年、松戸市内の中学のバレー部数減少と運動部活動の地域移行を鑑み、中学生を対象とした松戸ダイヤモンド(中体連男子)を設立。母体である社会人チームの監督及び選手も兼務。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 松戸市内唯一の中体連加入男子クラブチーム
  • “楽しいバレー”で県大会出場を目指す
  • 経験豊富なコーチ陣が丁寧に指導

“楽しいバレー”をモットーに、今年2024年4月に結成されたバレーボールクラブチーム、松戸ダイヤモンド(中体連男子、以下U15)。松戸市では、男子のクラブチームで初めて中体連(日本中学校体育連盟)の大会に参加しました。そこで起きたドラマティックな展開とは。代表の本多洋祐さんに、チーム設立のきっかけや思い、今後の展望などを伺います。

バレーボールを嫌いになった中学時代

ーU15は、同名の社会人チームから派生した形で今年設立されました。母体のチームはメンバーが男女合わせて90人以上の大所帯です。まず、その母体を結成されたきっかけ、これだけ大きなチームに成長できた経緯を教えてください。

社会人になってもバレーを、もっと言えば“楽しいバレー”を続けたい。その気持ちが強くて、高校時代の同級生や後輩に声をかけて集めたのが始まりです。当時、たった6、7人でチームを組んで市民大会に出場しました。即席ということもあり普通に負けましたね(笑)。

そこから、メンバーの知り合いが入り、彼らの紹介でさらに人数が増えていきました。そういったことを繰り返していたら、何だかんだで男子と女子合わせて90名以上のチームになりました。

ただ全員がアクティブではなく、結婚、出産育児や仕事の転勤などでお休み中の人もいます。彼らはいつ戻ってくるかもわかりません。でも、バレーをやりたくなったらいつでも戻れる場所を用意しておきたいので、来なくても在籍するのはOKとしています。そういった方たちも結構いますね。

ー本多さんの原動力は、“楽しいバレー”を続けたい気持ちということでしょうか。

そうですね。もともと私は人の前に立つタイプじゃないんですよ。なのに、チームを立ち上げたというのは、我ながら本当にバレーが好きで、楽しみたい気持ちが強いんだなと思います。そしてそこには、中学3年間の“強制された厳しいバレー”からの解放が、大きく関わっています。

私がバレーを始めたのは中学の時です。当時の部活の先生は、全国的に有名でとても厳しい指導をする方でした。今の時代では考えられないようなことが、当時の部ではまかり通っていたのです。そんな状況でしたので、私は楽しむどころか、バレーを嫌いになりました。

関東大会にも出場したレベルでしたが、高校はバレーで行かず、一般受験で進学しました。それでも次第にバレーをやりたくなって、大学は体育会のバレー部に入りました。ですが、今度は経済的な事情から1年間しか続けることができなかったんです。

そこからは、先ほどお話しした通りです。なので、“楽しいバレー”は一貫して心がけています。U15もそれは同じです。U15を設立した理由には、今の子どもたちに自分のような経験を絶対にしてほしくない、という思いもあるんです。先生の言動や表情にビクビクしながらバレーをするよりも、楽しいほうが絶対に良いプレーが生まれますから。

自分の出身部が廃部に。「俺らで作ろう」

ーU15を作られた目的は他にもあるんですね。

監督の伊藤(伊藤祐樹さん)も私も、松戸市出身です。それぞれ別の中学でしたが、どちらも今は人数が集まらないからか、廃部になっているんです。一方で、バレーは人気がすごくあるじゃないですか。では、その地区でバレーをやりたい子たちは、どこでバレーができるのか。そう考えた時に伊藤と私が出した結論は、「だったら俺らでそういう環境を作ろう」でした。そこがスタートです。

ですから、松戸ダイヤモンドは、いわば自分の学校にバレー部がない子たちのための部活です。国が進めている運動部活動の地域移行の受け皿となり得るよう、松戸市内の男子クラブチームで初めて中体連の大会にも参加しました。

現在9名の中学生がいて、しかも半分が、バスケや陸上などの他競技から転向したバレー未経験者です。

加えて、小学6年生も4名練習に参加しています。彼らも進学予定の中学校にバレー部がないので、卒業後はそのままチームに入る予定です。練習は中学生と小学生に分かれて、別のメニューで行っています。

コーチ陣は、さまざまな実績や指導歴のあるメンバーで見ています。なかでも監督の伊藤は中学で千葉代表に選出、市内の強豪・市立松戸高等学校へ進み、そこでインターハイや国体(現国民スポーツ大会)に出場した実力の持ち主です。そこから日本大学へ進学し、卒業後は出身高校や複数の大学のコーチを歴任してきました。ですから、指導力には自信があります。

ーモットーは“楽しいバレー”。指導方針もこちらに通じるものでしょうか。

そうですね。「ずっとバレーを続けたい」と思えるような楽しいバレーを教えることです。伊藤と共通しているのは、中学だけで終わらせてほしくないということ。私みたいに指導が厳しくてバレーをやめるだけでなく、中学で燃え尽きたとか、受験でバレーが遠のき、そのままやめてしまったとか。結構そのようなパターンも多いんですね。高校、大学、大人になってもバレーを続けてほしいと思っています。

ただ、楽しいバレーをしようと思っても、それぞれ学校が違うことから、最初はみんな人見知りが激しくて。結成当初は楽しさを感じる余裕はありませんでした。

どうしようかと私たちコーチ陣が考えたのが、自分たちの普段のノリを出そうということ。例えば、点が入ったらみんなでコマネチをやるんですよ(笑)。そうしたら、子どもたちもみんな明るくなって、楽しくやるようになりました。もちろん、コマネチも享受しています。

また、当然ながら理不尽な怒り方は絶対にしないようにしています。モチベーションが上がるようなコミュニケーションを意識しています。

できないことがあれば、その点を注意するのではなく、こうしたらいいのでは、とその子にとってできそうなことを提案する。もしくは、できていることに対して、さらにやれることをアドバイスする。答えを教えるのではなく、考えるきっかけになるポイントを伝えるようにしています。

コートの中では本当に楽しくのびのびとプレーしてもらいたいんですよ。ただ、挨拶や準備、片付けなど最低限やるべきことは、しっかりやるように徹底しています。

そして目標は必要なので、「直近は県大会出場、いずれは全国大会出場」と掲げています。男子のクラブチームとして初めて出場した中体連の大会は、3年生ばかりの学校相手にボコボコにされました(笑)。チーム構成が1、2年生メインなので、体格が全然違いましたね。

ですが、次の大会で1勝できたんです。

ボロ負けからの復活。価値ある1勝をあげた喜び

ーその時の様子をぜひお聞かせください。

初めて出場した大会でボロ負けしてから、2か月後に初勝利することができました。初出場後はくさるまではいかないですが、子どもたちは多少なりともショックを受けていたので、なんとか一勝させてあげたいと思っていました。

伊藤とともにその思いを抱きながら、チーム一丸となって練習をしてきました。それが実を結んだことで、子どもたちの自信につながったと思います。

その試合でも、1点取るごとに全員でコマネチをやりました(笑)。ベンチにいる私たちも叫んでいましたし、チームは会場で完全に浮いていましたね。でも、他校の子たちはちょっとうらやましそうに私たちを見ていたんですよ。私たちのチームの子どもたちは、楽しいバレーをしていた。自信を持ってそう言えます。

保護者の方の喜びようもすごかったですね。リーグ戦だったので、負けた試合もあったのですが、その試合内容もすごく良かったんです。というのも、対戦チームが全国大会に出た学校だったんです。その相手に25点先取のところ、21点取ることができました。子どもたちも保護者の方も、そして私たちも、すごく手応えを感じたんですね。

必死に練習場を確保して、ひたすら練習して、今があります。立ち上げてまだ日が浅く、いろいろと不安が尽きませんでしたが、やってきたことは間違いじゃなかったと思えました。

ー現在の課題というと何でしょうか。

中体連に参加できたのはいいのですが、学校さんとの連携がなかなか難しいと感じています。みなさん古くからお付き合いがある中で、知らないクラブチームがポンと入り込んだわけですから、戸惑われている部分も多少あると思います。徐々に親交を深められたらいいなと思っています。

チーム数が多いほど、上の大会へ行くには狭き門となります。そこを潜り抜けるために切磋琢磨することで、全体のレベルが上がると思うんですね。今、松戸市内の男子バレー部は6校しかありません。ここに今年から私たちが加わり、今後、他のクラブチームさんもあとに続くと思います。学校もクラブチームも、お互いが高め合うようになれたらいいなと思います。

ー最後に、本多さんにとってのバレーボールとは。魅力を教えてください。

2つあると思います。ひとつは、1人では絶対できない競技であること。トスを上げる人、スパイクを打つ人、ブロックする人、レシーブする人と、各ポジションの人がいて成り立つ。その“みんなでやっている感”に魅力を感じます。

もうひとつは、自分的に難しいプレーができるようになった時の達成感がこの上なくたまらないことです。中学時代、今まで決まらなかったスパイクがバーッと決まった時の喜び、嬉しさは、大人になっても消えません。

年齢を重ねて今はできることが減りましたが、それでも比較的難度の高い技ができた時は、本当に嬉しいです。そして、もっとやりたい、まだまだやりたいという気持ちが湧いてくるんですよね。

これからも子どもたちと一緒に、バレーを精一杯楽しんでいきたいです。

“楽しいバレー”を語る際の本多さんは、表情がとても明るく、幸せそうでした。そして、思わず筆者も一緒にやりたいと思わせる魅力を感じることができました。母体チームが大集団である理由は、本多さんのハッピーオーラが、人を引き寄せる求心力となっていると確信。今年度立ち上げたばかりのU15も、いずれ多くの中学生が集まることでしょう。今後の活躍が楽しみです。貴重なお話をありがとうございました。


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