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総フォロワー120万。東京スリジエが目指す、アマチュアバレーボールの未来

東京スリジエ

監督兼選手:

浅岡遥太(あさおか・ようた)さん

10歳からバレーボールを始め、中学時代は全国大会で優勝。その後、強豪の安田学園高等学校、国士舘大学へ進学。卒業後、東京ヴェルディに入団、リベロとして9シーズンプレー。2020年に退団後、東京都千代田区を拠点とした地域密着型6人制バレーボールクラブチーム、東京スリジエを結成。同チームは東京都実業団バレーボール連盟に加盟。地域リーグ所属。SNS総フォロワー数は驚異の120万人超えを誇る。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 東京都千代田区を拠点に活動し、地域リーグに所属
  • 楽しみながら天皇杯皇后杯本戦出場とリーグ優勝を目指す
  • Vリーグ出身選手が多数在籍、30代が半数超

「まだまだ、体は動く」。Vリーグに所属する東京ヴェルディでリベロとして9年もの間活躍した浅岡遥太さん。ある思いから、退団と同じ年にバレーボールのクラブチームを結成しました。それが、メンバーの半数以上は30代、地域密着型を謳う東京スリジエです。実力もさることながら、SNSを中心に人気を集めている同チームについて浅岡さんに取材しました。強みや得られること、バレー界の展望等を伺います。

「ベテラン×若手の融合」が、チームの武器

ー東京ヴェルディを退団後、ご自身でチームを立ち上げられました。どんな思いで作られたのか、チームの特徴も合わせて教えてください。

30代以降の選手が、楽しくバレーを続けられる場を作りたいと思い結成しました。

日本バレーボール界の頂点にあったVリーグ(※)は、毎年有望な若手選手が入り、チームのほとんどは20代が中心です。30代の選手はまだまだ動けても活躍する機会が減りがちなんですね。

※2024年10月より、Vリーグの上層にあたるSVリーグが新設。

そんな現状から、自分も含めてそうした選手たちが引き続きプレーできる環境を作りたかったのです。また、自分たちを応援してくださる、ファンの方々に応えたい思いもありました。

最初は、知り合いの退団した選手たちに声をかけて、男子10名ほどでスタートしました。1周回って「バレーが大好き!」と恥ずかしげもなく言えるようなメンバーが集まった感じです(笑)。

今はもっと増えて、男子が約20名います。女子も12、3名入り、’22年には女子チームも誕生しました。都内を中心に、男女一緒に練習しています。半数以上が30代です。これくらい年齢が高いチームは、地域リーグにはあまりないと思います。

メンバーはそれぞれに本業があるので、練習は平日と週末を合わせて4日程度、1回につき3時間ほど行っています。もちろん仕事優先ですから、遅れて参加もOKです。

ー30代の方が半数を超えるとのことですが、それ以外の方々はおいくつくらいが多いのでしょうか。

20代半ばです。なので、ベテランと若手の融合というのは強みのひとつだと思います。若手だけのチームは勢いがつけば脅威になりますが、崩れやすいという弱点があります。ですから、経験豊かなベテランと組み合わせることで、安定したチームが生まれるんですね。

若手選手たちには、いずれ年を取りベテランの域になったら、同じような立場、役割を担ってほしいと伝えています。

彼らにとっても、Vリーグ経験者の多いベテラン選手たちから、アドバイスをもらえることは大きなメリットだと思います。プレーや考え方等、いろいろなことを吸収できる環境が整っています。

Vリーグ等、何かに挑戦したければ相談にも乗ります。ただ、若手選手たちにも、ここでバレーを楽しく続けてほしい気持ちは強いですね。

「練習に来い」とは言わない

-チームの目標やプレースタイルをお聞かせください。

志高く、目標は天皇杯皇后杯全日本バレーボール選手権大会本戦出場です。10月に関東ブロック予選があり、そこを勝ち抜けば本戦に出られるので、まずは予選での勝利を目指しています。また、全国6人制バレーボールリーグ優勝も掲げています。

プレースタイルは、これというのは定めていません。基本的に対戦相手に合わせて、スタメン6名を選んでいるので、その時々によってスタイルが変わります。

相手チームのストロングポイントがセンターだったら、ブロックのいい選手を入れたり、サーブが強ければレシーブに秀でた選手にしたり。メンバーそれぞれの長所や持ち味を最大限に活かすことができたらいいかなと思っています。

ー練習では、どんなことを心がけていたり、大事にしていたりしますか。

監督としては、みんなが楽しく、かつ全員がボールに触れられるようにすることを心がけています。コートの外で待つことがないような、運動量が多めの練習メニューを考えています。

その一方で、自分は監督とは別に選手でもあります。また、ベテラン選手も多いので、指導するという意識はあまりありません。関係性もベテランは基本横並びです。若手に対しても、話しやすい環境づくりをしています。
ただ、締める時と楽しむ時のメリハリをつけることは大切にしていますね。

また、先述した仕事優先にもつながりますが、主体性を持ってほしいので「練習に来い」とは言わないようにしています。

なかには、週1回しか来られないメンバーもいて、そのメンバーがうちのエースなんです(笑)。住まいが遠方でなかなか参加できないのですが、それでも中心選手でいられるのは、自分でめちゃくちゃトレーニングをしているからです。体がどんどん大きくなっているのが目に見えてわかる。

来れなくても自分で努力しているのが伝わるので、あえて彼に来いと言う必要はありません。また、当然ながら「楽しくバレーをする」ことが根底にあるので、強制はしないです。

エンジニアから整体師まで。練習の場は、異業種交流会

写真提供:東京スリジエ


 
ーVリーグ出身者が多く、既に高い技術をお持ちの方ばかりです。入団は狭き門と考えていいでしょうか。

簡単には入れないと思っていただきたいです。うちのチームへの入り方は、3パターンあります。ひとつは、トライアウト。もうひとつは、スカウト。そして、最も多いのが紹介です。

全てにおいて、一定期間、練習生として参加する制度を設けています。スキルやフィジカル、社会性など含めてチームにフィットするかどうかを総合的に判断し、その後正式入団となります。

求める選手像を具体的に言葉で表すのは難しいですが、滲み出る雰囲気や、報連相といった社会人として当たり前のことを当たり前にできるか等は大切にしています。

人数がそれなりにいるので、試合は半分しか出られません。残り半分は、ベンチを温めることになるのですが、それでも諦めず熱意のある人、腐らず前を向いてチームに貢献してくれるような人に入っていただきたいと思います。

今入団してほしいのは、大学の1部か2部リーグでプレー経験があり、社会人になってもバレーを続けたいと考えている人です。対象地域は関東に限らず、就職を機に東京に来られる人等もぜひ相談していただきたいです。

先ほど、若手はベテランから吸収できるものが多いとお話ししました。これはプレー面に限りません。

選手たちの本業が本当に多彩なんです。会社員、教員、消防士、整体師、エンジニアなど。練習の場がいわば異業種交流会です。10も年上の人から、その業界についてや組織の中での生き方、立ち居振る舞い等を学ぶことができます。そういった面でも視野が広がると思いますね。

加えて、就職サポートも行っています。
うちのメンバーを採用したいと言ってくださるスポンサー企業さんが、ありがたいことに結構いらっしゃるんです。実際に、整体の会社さんに女子メンバーを4名働かせてもらっています。練習時間に配慮した勤務形態にしていただいています。

写真提供:東京スリジエ


 

フォロワー総数120万超の秘訣は「共感」。もう1つは…

ースポンサー企業さんは、20社以上とお聞きしています。

紹介が多いですね。うちは地域密着型を掲げていますので、千代田区長へ表敬訪問を何度かさせていただいたり、スポンサー企業さんのイベントとして、年に1回学校でバレーボール教室を開催したりしています。そうした活動を評価していただいているようです。

バレーボール教室は、千代田区バレーボール連盟さんとも話をしていて、バレーボール体験会として今後はもっと数を増やして開催する予定です。

あとは、これだけスポンサーがついてくださる理由は、SNSが挙げられると思います。Instagramだけでフォロワー数が約24万、他のSNSを含めると120万以上います。

フォロワー数を増やすコツをよく聞かれますが、シンプルにプレー動画を上げているだけなんですよね。ただ、長く続いたラリーではなく、あるあるなミスを抜粋して毎日投稿しています。バレーをやっている人ならよくやりがちな失敗プレーなので、共感していただけているのかなと思います。

ー特に、どんな動画が見られましたか。

最初にバズったのは、ミスプレーの動画ではなく、漫画『ハイキュー!!』の主人公・日向翔陽がやっているブロード(移動しながらスパイクを打つ攻撃スキル)を再現したものでした。海外からのコメントがたくさん来たんですよ。コメントが増えるほど視聴回数も伸びるので、すごいことになったと記憶しています。

『ハイキュー!!』効果はもちろんですが、手の内を明かしたくないからか、それまで動画を載せるバレーチームがなかったんですよ。自分的にそんなことはもうどうでもよくて、バレーボールの面白さや魅力が伝わればいいなと。結果、バレーボールをやったことがない人、見たことがない人も臨場感を味わえて、バズりにつながったのだと思います。

手探りのなか4年間、SNSを続けてきて思うのは"継続は力なり”です。今後も、毎日投稿を頑張ります。

写真提供:東京スリジエ


 
ーチームと浅岡さん、それぞれの今後の展望もお聞かせください。

結成から4年経ち、人数が増えたほか、ベテラン選手たちは言うまでもなく“いい歳”になりました(笑)。40歳以上が出られるマスターズという9人制バレーの大会があるのですが、いずれそこに出場するのも面白いなと思っています。

また、今は20代半ばの選手が多い女子チームの勢いがあります。結婚や出産で一時離れる可能性もありますが、また戻って来たいと思ってもらえるようなチームになってほしいです。ママさんバレーでもいいですが、今のようなバリバリの6人制バレーをママになってもやってもらいたい、そんな気持ちも持っています。

男女ともに、生涯スポーツとしてバレーを長くやってほしいです。うちの最高齢は52歳。他のみんなもそれくらいを目指して、一緒に楽しみながらプレーを続けたいですね。うちに関わった人たちがみんなハッピーになる。そんなチームが理想です。

私も動けるまで動きたいです。大きな怪我をしないよう、体を鍛えながら現役を続けようと思います。

ー最後に、バレーボール界の未来についてもお願いします。

Vリーグ所属のチームに加入することは、年々すごく難しくなっています。だからこそ、Vリーグだけじゃない、私たちのチームのようないろいろな選択肢があるということが、バレーをしている学生のみなさんに、もっと広く認知されればいいなと思います。

Vリーグは、本当に選び抜かれた選手がいくべき場所であってほしいんです。例えば男子なら身長が190cm以上じゃないとNGとか、そういう世界です。でも、身長が180cmくらいでも上手な選手はたくさんいるんですよ。彼らにこそ、地域に密着したリーグやうちのチームの存在を知ってもらいたいです。大学卒業と同時に、バレー人生を終えてほしくないですから。

バレーボールは、つながることが面白いと思うんです。2m以上の高さからどんな豪速球が放たれても拾い上げて、そこから床に落とさずにラリーが続く。それって、すごいですよね。コート上のボールだけでなく、バレーの魅力そのものも世代を超えてずっとつなげていけたらと思います。

「バレーを楽しみながら、ずっと続けてほしい」。取材中、何度もこの言葉が出た浅岡さん。そんな思いを込めて立ち上げた東京スリジエは、Vリーガーが“超エリート”なら、“普通のエリート”レベルの方々にまさしくぴったりなチームと言えます。それぞれが仕事を持ち、「楽しむ」を合言葉に高みを目指す。入団するにはハードルが高いですが、バレーと共に歩む人生の幸せなカタチが、確実に見つかるでしょう。貴重なお話をありがとうございました。


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