錦糸公園ものまねプロ野球
主催:
桑田真似(くわた・ますに)さん
1978年生まれ、兵庫県神戸市出身。ものまね芸人と翻訳家の二刀流。関西学院大学卒業後、大阪学院大学会計課勤務、ニュージーランド、豪州での日本語教師活動を経て、吉本お笑い養成所NSC東京10期に入学、卒業。TOEIC990取得のほか剣道参段、宅地建物取引士等の資格も。講演会登壇やメディア出演も多数。
ひと目でわかる! チームの特色
- プロ野球選手のそっくりさんが集結
- 錦糸公園がホームグラウンド、地域交流が最優先
- 試合中にルーティンや名場面を再現
趣味感覚で楽しんでいるスポーツに、“クスッと笑える要素”が加わったら、最高の気分転換になると思いませんか。それを実現してくれる草野球のイベントがあるのです。
ものまね芸人・桑田真似さんが主催する野球イベント「錦糸公園ものまねプロ野球」。桑田さんを筆頭に、おもにプロ野球選手に似ている方々で構成されています。全員が芸人かと思いきや、そうではなく…!? ヴェールに包まれた謎の企画集団について、桑田さんを取材しました。
錦糸公園と言えば、以前はポケモン、今はニセモン
ー どんな活動をされているのでしょうか。
メンバーが流動的なので、チームというよりも、イベントと言った方が近いかもしれません。2016年頃から、野球選手のそっくりさんを集めて、錦糸公園で草野球をやっています。練習ではなく、毎回試合をしています。コロナ前は年間70試合やっていましたが、今は20試合くらいです。
おかげさまで対戦したいと言ってくださるチームさんが増えて、今応募されても試合は4か月ほど先になります。リピートするチームさんも多く、今日もこの取材前に1ゲームしましたが、相手は3回目となる常連さんでした。
錦糸町駅近くにあるひがしん(東京東信用金庫)さんや駅直結の駅ビル、よみうりカルチャーさんなど地域の企業さんとも対戦させてもらいました。ひがしんさんは、毎年両国国技館を貸し切って、取引先の商品販売や技術を紹介する「ひがしんビジネスフェア」を主催しています。そこに僕たちを呼んでくださり、メインステージに立つこともできました。
両国に本社を戻したスポーツ報知さんの墨田区版では、墨田区の6大スポーツに錦糸公園ものまね野球を入れてもらっていて、僕らをひとりずつ紹介してくれる連載もあるんです。地元の方々との交流ってすごく良いなぁと思っています。
ですから、目標を聞かれたら「墨田区のランドマークを目指しています」と答えることもあります。錦糸公園といえば、ものまねプロ野球。そんなイメージが浸透したらいいなぁと。
錦糸公園って、少し前まではポケモン GOの聖地だったんですよ。レアキャラを捕まえることができると、深夜までたくさんの人が集まり、スマホをいじっていたのです。でも、ポケモンの次は、“ニセモン”です。我々が「錦糸公園の名物になれたら」と思っています。
人気のヒミツは、ルーティンの真似や名場面の再現
ー対戦するみなさんは、どういったことを喜んでくださいますか?
そっくりなのはビジュアルだけじゃないというところですね。試合中、各選手のルーティンの真似や、名場面の再現をすること等が人気の理由かなと思います。
例えば、今江敏晃監督のそっくりさん・明日江敏晃(あすえとしあき)さんは、打席に入った時に、今江選手のように“必ず見逃す”というルーティンをします。
村田兆治選手のそっくりさん・村田兆似選手だと、足を上げた瞬間が似ているので、それを毎回やってもらっています。
僕の場合は、桑田真澄選手の名シーンを再現します。1995年の試合で、サード側に上がったファールボールに飛びついて肘を怪我した場面です。ファールが上がったら、必ず全力で追いかけるご本人さんの野球のプレースタイルを再現しております。
そこから、本物の桑田選手は661日間のリハビリを経てマウンドに復帰するのですが、その際に桑田さんはマウンドに肘をついて挨拶したんですね。そのシーンも毎回やらせていただいています。対戦相手の方も一緒になって、「おかえりー!」と言ってくれます。
そんな歴史的に誰もが知ってるような出来事の再現やルーティンのほか、試合後に行うものまねクイズもあり、そういったところがみなさんの期待していることだと思います。
ー最近、特に人気のものや新作があれば、ぜひ教えていただきたいです。
リクエストを喜んでもらえている気がします。プロ野球等では際どいプレーがあったら、ビデオリクエストをしますよね。僕たちはビデオではなく、そのプレーに関わった選手が実際にスローで動いて再現するんですよ。それを見て審判が判定します。
この茶番は対戦チームさんと事前に打ち合わせをして、リクエストとなったらそのチームさんも参加してくださるんです。打ち合わせでは、このことで試合進行が少し遅くなる旨も伝えています。みなさん、こういった茶番を楽しんでくれていますね。
また、プロ野球だけじゃなく、高校野球やYouTuberがやってる野球チャンネルのものまねもします。最近は、メジャーリーグのトリックプレーや隠し球のものまねもしています。そのような少年野球や公式試合などでは、ご法度のものをあえてやるんです。チームさんには、遊びやエンターテイメントに近い感覚で捉えてもらっています。
オリラジ、はんにゃ、トレエン、華やかな同期
ーお話だけでも楽しい気分になります。そもそも、なぜものまねプロ野球を始めたのですか。
「桑田真澄に似ている」とずっと言われていて、このこととお笑いをつなげることができたのがきっかけです。
もともと、僕は学生の頃からお笑い芸人になりたいと密かに思っていました。兵庫県出身なので笑いが身近にあったし、高校時代にやった漫才で“ウケる”ことの快感を覚えてしまったからというのもありました。
ですが、大学に行かせてもらったからには就職をするべきだとずっと我慢していたんです。でも、社会人になっても気持ちを抑えきれず、会社を退職して吉本養成所(NSC吉本総合芸能学院)に入りました。
同期には、オリエンタルラジオ、はんにゃ、フルーツポンチ、インポッシブル、トレンディエンジェルなど、錚々たるメンバーがいました。意を決して入所したものの、徐々に限界を感じ始めたんですね。
途方に暮れていた時に、昔からよく顔が似ていると言われていた桑田真澄さんの真似をしてみたら、ウケたんですね。「桑田真澄です」と言うだけで、掴みができたんです。僕は高校時代は剣道部に所属していたので、野球は未経験でした。似ていると言われても、申し訳ないですが、何とも思わなかったんです。
ですが、笑いが取れるようになってから、有名人の誰かに似ていることは財産だなと思いました。そこから、既に活躍されていた清原和博さんのそっくりさん・リトル清原くんと一緒に、ものまね芸人、桑田真似として活動を始めました。
そして、桑田さんを真似るからには、野球を知っておかなければいけないと思いました。それまでの僕はエンタイトルツーベースもインフィールドフライも分からなかった。また、動画を見ながらルールを確認したところで、やはり実際にマウンドに立たないとピッチャーの気持ちは理解できないなと。そこで練習場所を探したら、近くにあったのが錦糸公園でした。
野球掲示板で練習相手を募って、練習を始めました。2014年のことです。そこから1年半くらい、ずっと練習だけをしていたのですが、そのうち参加者が試合をしたいと言い出したのです。僕は野球というものがわかればそれでよかったので、試合の必要性は感じていませんでした。でも、試合をしてわかる心理や投げる感覚もあると気づいたんです。
試合のメンバーは芸人仲間や掲示板で参加してくれた人たちです。彼らをよく見ると、野球選手の誰かに似ているなと思ったんですね。そこから、似ていると思う選手のユニフォームを着て、キャラクターも寄せてもらうようにお願いしました。これがものまねプロ野球の始まりです。
ー現在のメンバーは、どのような方々で構成されていますか。
プロのものまね芸人は数人しかいません。僕と、則本昂大選手のそっくりさん・測本昂大さん等です。測本さんは普段「どストライクきの」という審判のキャラクターで活動しています。
あとは、僕がそっくりさんとしてスカウトした一般の方々がいます。例を挙げるなら、大和選手のそっくりさん・まね田大和さん。ただ野球をしたいから参加していたのに、僕に言われてやってくれている人です。最初は赤見内銀次選手のそっくりさんでプレーしてもらっていましたが、自ら前田選手を希望して、ユニフォームも用意してくれました。
岸孝之選手のそっくりさん・岸リトール孝之さんも、もとはキャッチャーの助っ人でした。実は、彼はロッテが好きだったのですが、岸選手のことを調べて試合を見るうちに、楽天ファンに。今はノリノリでやってくれています。
ふたりとも人前でパフォーマンスするなんて、想像していなかったと思いますが、次第にやる気になってくれたようです(笑)。
また、福浦和也選手のそっくりさんとして有名だった方が、イチローのそっくりさんのレパートリーも持っていたので、「ぜひ試合に参加してもらいたい!」とSNS上で公開ドラフト指名をして連絡をとらせていただきました。そんなパターンもあります。
他に、持ちネタのひとつとしてものまねをするお笑い芸人がいます。清宮幸太郎選手のそっくりさん・リトル清宮さんがそうですね。「ジャンふじたに」という芸人で、レパートリーのひとつとしてそっくりさんをやっています。あとは、自ら志願してきた人もいます。
芸人以外の方の本業は、会社員や自動車整備士に介護士、自営業等、さまざまです。
笑ってもらえて、幸せです
ー全員で何名くらいいらっしゃるのでしょう。また、どうすれば入れますか?
認定そっくりさんは35名います。基準を作ったんですね。写真に名前をつけてSNSに投稿し、1万くらい見られないと認定しません。コメントも重視していて、数は達していても批判が多いと残念ですが認めていません。
明日江さんで3万5000くらいインプレッションを取ることができました。なかなかそんな数は出ないので、さすが明日江さんです。彼は、ヌートバー選手のそっくりさん・ハタラカーズ・ニートバーも真似してくれていて、本業は会社員です。今、一番広報活動を頑張ってくれています。
その認定そっくりさんのカテゴリーの他に、一般の助っ人さん枠も設けさせていただいていて、そこも含めると70名弱います。
今は、現メンバーで試合が成り立つので大々的に募集はしていません。ですが、YouTubeや僕のHPに「誰々に似ていると5人以上に言われたことがある方は連絡ください」と一文を添えて、メールアドレスを載せています。ですので、そこから応募していただければと思います。まずは、助っ人枠からのスタートになります。
ちなみに、今なら大谷翔平選手のそっくりさんに需要があると思います。巷の大谷そっくりさんは、もう人気者かもしれませんが、さらに注目を浴びることができるのではないでしょうか。既に『Oh! 他人翔平』という登録名を作って、そっくりさんが現れるのをお待ちしています!
ー大事にしていること、目指していることを教えてください。
対戦チームさんに、グラウンド代やボール代、審判代などの対戦諸経費をご負担いただいています。ですので、対戦相手チームさんに満足していただくことを第一に考えています。
期待している以上のものをお届けして、対戦して楽しかったな、またこのチームと対戦したいなと思ってもらえたら一番いいなと思っています。
目指していることは、個人のプレーで言えば、直球勝負をしていきたいです。ストレートだけでイニングを終われたらいいなと思っています。
また、たまに始球式や野球イベントに呼んでいただけるんですね。今まで5回くらいあるのですが、1回もストライクが入ったことがないんです。いつか、本物の桑田さんのようなきれいなカーブでストライクを決めたいです。
ものまねプロ野球としては、先述したことと矛盾するようですが、本音を言えば目指すことはもうありません。僕は野球というものを体験できればいいので、これ以上のものはないんですよ。いつやめてもいいとさえ思うこともあります。
ーとはいえ、ずっと夢だったお笑い芸人になる道を一度は諦めかけて、光明となったのがこの錦糸公園ものまねプロ野球と言えると思います。対戦相手の方が笑ってくれたり、沸いてくれたり、いわば夢が叶ったことに対して何か思うことはないのでしょうか。
そう考えると、幸せが一番近いのかな。笑ってもらったときに、自分の存在価値を感じます。笑いが取れなかったら、僕という人間の価値がないのかも。価値を見出したくて、そのための手段のひとつがものまねなのかもしれないですね。
これまで、ただ笑わせたいとか、ウケると気分がいいとか、お笑いやものまねを仕事とする理由について漠然としていたのですが、今整理することができました。
今後も、錦糸公園ものまねプロ野球はオファーがある限り続けようと思います。対戦してみたい方がいらしたら、ぜひご連絡ください。
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