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独自路線で「日本一」へ! 少年野球の西花畑ウインディーズ 向段監督「おしゃれにもこだわりを」

西花畑ウインディーズ

監督:

向段武史(むこうだん・たけし)さん

都城商業高等学校(宮崎県)卒業後、社会人野球の沖データコンピュータ教育学院(福岡県)を経て、8年前に西花畑ウインディーズの監督に就任。技術重視の指導と選手の個性を尊重する柔軟な指導方針がモットー。「日本一」を合言葉に、野球技術だけでなく人間形成も重視。常に指導法をアップデートし、選手の可能性を最大限に引き出す。

コーチ:

川崎佑(かわさき・ゆう)さん

東福岡高校1年時に明治神宮大会に出場し、チームの初優勝に貢献する。翌年の選抜高校野球大会にも出場。卒業後は社会人野球の沖データコンピュータ教育学院に進む。5年前に西花畑ウインディーズのコーチに就任。土日の休みをほぼ少年野球の指導に費やしている。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 不要な挨拶や声出しは一切なし
  • 自主性を重視した指導
  • ウエアや髪型で「おしゃれ」を表現

福岡県で1996年に誕生した少年野球チーム「西花畑ウインディーズ」。チーム名は地元の西花畑小学校にちなんで名付けられました。2024年6月にミズノドリームカップ福岡県予選での優勝を果たすなど、着実に実績を重ねています。
その強さの秘密は、自由な雰囲気と徹底した技術指導にあるようです。8年間チームを率いる向段武史監督、そして監督をサポートする川崎佑コーチにお話を伺いました。

向段武史監督(左)と川崎佑コーチ。

指導方針の常なるアップデート

ー監督としての指導歴を教えてください。

向段 8年目に入りました。その前にコーチとして4年ほど経験があるので、指導者としてのキャリアは合計で12年になります。私は都城商業(宮崎県)から社会人野球チームの沖データコンピュータ教育学院(福岡県)を経て、このチームのコーチに就任しました。
子どもたちに野球を教えるにあたり、「本物を教えるには本物を知らないといけない」と考え、東福岡高校在籍時に全国大会で優勝した経験を持つ川崎コーチを5年前にコーチに招きました。

野球を教えるのは楽しいです。教えることで、自分自身が学ぶことができます。私が現役でプレーしていたのは20年前なので、知っているのは「20年前の野球」です。時代遅れにならないよう、指導方法も常にアップデートするよう心がけています。

西花畑ウインディーズの歴史と現状

ーチームの歴史と現在の在籍人数をお聞かせください。

向段 チームの結成は1996年で、元々はソフトボールチームでした。この地域で年に1回ソフトボールの大会が行われていたのですが、大会終了後もチーム活動を続けたいという声があがり、チームができたと聞いています。その後軟式野球のチームになりました。

現在、在籍しているのは25人です。内訳は、6年生が8人、5年生と4年生がそれぞれ3人ずつ、3年生が7人、2年生が3人、1年生が1人です。3年生が多いのは、チームのInstagramアカウントを開設したことがきっかけです。

部員数が増えたもう一つの理由は、保護者の当番制を廃止したことです。当番制がなくても、野球好きのお父さん、お母さんたちが積極的に協力してくださいます。試合の日も送迎当番を設けず、現地集合としています。チームの雰囲気づくりにも気を配っており、他のチームでよく見かける監督用の椅子やテントなども置いていません。

ーチームの活動スケジュールをお聞かせください。

向段 週末は公式戦やオープン戦などほぼ試合を行っています。毎週木曜日が週に1回の全体練習の日で、それ以外は自由練習です。近くのバッティングセンターから廃棄する予定のボールをいただいて、ロングティー(ネットを張らないティーバッティング)などの練習に自主的に取り組んでいます。保護者の方も手伝ってくれていて、選手のお母さんたちがボールを拾いながらコミュニケーションを図っています。

技術指導とフィジカルトレーニングの方針

ー技術指導で特に重視していることはありますか?

向段 「勝利至上主義」という言葉があります。勝つことで多くのことを学べると私は思っており、そのためには何よりも技術が重要だと考えています。
そのため、流行の理論に惑わされることなく、原理原則を大事にしています。具体的には、小学生の間は走塁と守備を徹底的に練習する方針です。走塁と守備は、自分の意識次第ですぐに改善できるからです。

特に力を入れているのがスローイングです。土日の練習で200球近く投げることもあり、平日の練習も合わせると、年間で約3万球投げることになります。小学校3年からこの練習を始めた場合、4年間で約12万球になります。これだけ投げれば、フォームがしっかり固まると思います。
打撃は中学、高校に進むと体が大きくなり筋力もつくので、そのときに力を入れても遅くないと考えています。

ー従来の少年野球の指導と比べて、特徴的な指導方針はありますか?

向段 昔は「バットを上から出して打ちなさい」とか「ゴロは前に出て取りなさい」といった指導が一般的でしたが、今は状況に応じた指導を行っています。
例えば、守備の際も状況に応じてゴロを前に出て捕ったり、待って捕ったりと、より柔軟な指導を心がけています。バッティングでも、スリーボールのときに次の球を見送らせるチームが多いと思いますが、三回振るチャンスがあるのでうちのチームでは打たせます。

また、「小学生だからまだ早い」という考えを持たないようにしています。例えば、ファーストゴロの際、小学生の場合はセカンドが一塁ベースカバーに入ることが多いですが、うちのチームでは必ずピッチャーにカバーに入らせます。上のカテゴリに上がってやらないことはやらせません。バックアップや牽制球のカバーリングも全て行わせます。
小学生でも「野球」をしているのですから、大人と同じ「野球」を徹底して行っています。

ー体力づくりについてはどのような取り組みをしていますか?

向段 自分が思うように体を動かせないと技術も身につかないと思うので、選手の体力と運動能力の向上を目指して、フィジカルトレーニングも重視しています。具体的には、サイドステップや跳び箱、ハードルを使ったトレーニングを行い、総合的な運動能力を高めています。メディシンボールを使ったトレーニングも取り入れています。

よく「小学生なのに」と言われますが、ゴールデンエイジと呼ばれる時期に、さまざまな動きを経験させることが重要だと考えています。その時期を逃すと、運動能力を高められる時期は二度と来ないので、上のカテゴリに進んだときに差が出ます。

ー選手の個性や健康面についてはどのように配慮されていますか?

向段 子どもたちを型にはめず、多くの引き出しを持ってもらうことを意識しています。「自分には一芸がないから」とあれこれ試す子もいて、試合中に右打ちから左打ちに変わったり、オーバースローからサイドスローに変えたりする選手もいます。

小学生なのでまだ一芸がなくても良いと思うので驚きますが、否定せずにまずはやらせてみます。これは本人の野球人生なので、できるかできないかを考える前に、どうやったらうまくいくのかを意識しています。

技術指導だけでなく、選手たちの健康管理も重要な課題です。熱中症やケガの予防には特に気を配っていますし、パフォーマンスを最大限に引き出すためには適切な栄養摂取も欠かせません。

そこで力を入れているのが食育です。栄養士の協力を得て、経済的な負担が少ない食育を行っています。選手には弁当の他におにぎり5個、チーズとゆで卵を2つずつ、オレンジジュースを持たせています。

これらは食べやすく、すぐにエネルギーになる食べ物で、空腹状態を作らないようにしています。おにぎりの大きさはまちまちです。中にはちゃんと食べない子もいるので、しっかりチェックしています。

ー練習はどのような雰囲気で行っていますか?

向段 とても自由な雰囲気です。練習着も自由で、Tシャツやハーフパンツで練習に参加してる子もいますし、紫外線が強い時期はサングラスの着用もOKです。以前は音楽を流しながら練習をしていたこともあります。塾やスイミングスクールに通っている子は途中で帰ることもあります。
形式的な慣習にとらわれないことを目指しているので、グラウンドに入るときの挨拶や無駄な声出しは一切行っていません。

チームの成果と指導方針の効果

ー6月に行われたミズノドリームカップ福岡県予選で優勝しましたが、その勝因をお聞かせください。

川崎 今年の優勝には、昨年からの積み重ねが大きく影響しています。昨年は6年生が3人しかおらず、現在の6年生たちがほぼ主力として試合に出場していました。その経験が、今年の成功につながったと考えています。
また、昨年も決して弱いチームではなく、準優勝という結果を残しています。今年はその経験を活かし、さらに成長した選手たちが力を発揮できたのだと思います。

選手の自主性を重視した指導法

ー選手との接し方で心がけていることはありますか?

向段 グラウンドでは、選手自身で考えさせることを重視しています。プレー後には必ず「なぜそうしたのか」と行動の理由を聞くようにしています。最初は説明できずに首をひねる子が多いのですが、そのうちに自分の考えを言葉で表現できるようになります。

小学校、中学校、高校、大学と進むにつれて監督が変わり、指導方針もさまざまです。現代ではYouTubeなどでも情報が得られるようになりました。そのため、最終的には何が正しいのか自分で考え、自分で自分をコーチングできるようになってほしいと考えています。
監督やコーチが言ったことがすべて正しいわけではありません。こういった考え方を選手たちと共有するようにしています。

一方で、野球以外のコミュニケーションも大切にしています。学校生活の話を聞いたり、言葉遣いについて指導したりしています。また、合宿に行ったときは動画や手紙を保護者に送ることもあります。

卒団式はホテルで行い、コーチ陣もスーツを着て参加します。涙あり感動ありの卒団式を通じて、選手たちの成長を共に喜び合っています。

「おしゃれ」な雰囲気作り

ーチームの特徴を一言で表すとどんなチームですか?

向段 一言で言えば、「おしゃれ」なチームです。チームでポロシャツやハーフパンツ、パーカーなど、多様なウエアを用意しており、選手たちは好みのウエアを選んで練習に取り組んでいます。
なかには髪を三つ編みにするなど、自由なスタイルを楽しんでいる子もいます。日ごろから選手たちには「格好よくいよう」と声をかけています。

川崎 チームの「おしゃれ」へのこだわりは、ユニフォームにも表れています。今年新調したユニフォームには、グラウンドのそばに咲く「桧原桜(ひばるざくら)」をあしらっています。

卒団後の進路選択について

ー小学校を卒業して中学校に上がる際の進路はどのようなものでしょうか?

向段 私自身は、野球を続けるならレベルの高いところに進んだほうがいいと考えています。ただし、今の時代は野球だけをやっていても十分ではありません。勉強など野球以外のことにもしっかりと取り組める環境が大事だと思っています。

川崎 最近の傾向としては、中学校の部活で軟式野球を続ける子よりも、クラブチームで硬式野球を始める子が多くなっています。

日本一を目指すチーム運営

ー西花畑ウインディーズではどのようなことが学べますか?

向段 まず第一に、野球の技術面を徹底的に学ぶことができます。私たちは子どもたちに「日本一になれ、優勝しろ」と常に言い聞かせています。これは単なる掛け声ではありません。

私自身も監督として日本一の評価を受けられるよう、他のチームの監督に負けないように常に努力しています。自分が日本一の監督にふさわしいか、また保護者の方々も日本一のチームの保護者としてふさわしいかを常に意識しながら指導を行っています。

野球に関する新しい知識や情報を吸収することも重視しています。野球への情熱があるからこそ、こうした学びも苦になりません。
さらに、身だしなみも重視しています。これは子どもたちだけでなく、指導者である私たちも率先して実践しています。

ー野球を通じて子どもたちにどんなことを伝えたいですか?

向段 野球は非常にリスクの大きいスポーツだと考えています。10回打席に立って3回ヒットを打てば評価される、つまり7割は失敗を経験するスポーツです。その3割の成功を目指して懸命に練習するのです。

しかし、これほど難しいことに挑戦しているにもかかわらず、野球の技術だけでは社会に出たときに必ずしも評価されるわけではありません。そのため、野球だけがすべてではないと子どもたちに伝えています。

一方で、野球に取り組むからには一生懸命やること、勝ち負けにこだわること、そしてそのために技術を身につけることの大切さも強調しています。選手たちは野球が上手くなるためにチームに来ているのですから、その目標は徹底的に追求すべきだと考えています。

ーどのような子どもたちに入団してほしいですか?

向段 西花畑ウインディーズは、野球が大好きで上のレベルを目指したい子どもたちに合うと思います。

取材を終えて、西花畑ウインディーズの特徴が鮮明に浮かび上がりました。
監督やコーチが子どもたちと真摯に向き合い、全力で野球を教えている姿勢が印象的でした。技術指導はもちろんのこと、子どもたちの自主性を育む取り組みや、野球を通じた人間形成にも力を入れている様子が伝わってきます。
また、保護者が自主的にチーム運営に協力している点も、このチームの大きな強みだと感じました。当番制を廃止するなど、従来の少年野球チームの運営方式にとらわれない先進的な取り組みを行っていることも特筆すべき点です。
西花畑ウインディーズは、野球技術の向上だけでなく、子どもたちの全人的な成長を支援する、新しい形の少年野球チームとして、今後の活躍が期待されます。


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