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東大生が本気で夢中になる“ピンポン野球”の奥深い世界。「六大学野球のようなリーグを作りたい」

ピンポン野球サークル

エース:

清水川摩紘(しみずかわ・まひろ)さん

筑波大学附属駒場中・高等学校を経て東京大学3年。中学時代、西村さんに誘われて同競技を開始。同サークル立ち上げメンバーのひとり。エース投手としてチームを牽引。

選手兼投手コーチ:

西村匡矢(にしむら・まさや)さん

筑波大学附属駒場中・高等学校を経て東京大学3年。競技歴はサークル内で最長。同サークル立ち上げメンバーのひとり。選手として活躍しながら投手の指導も行っている。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 目標はピンポン野球を広め競技人口を増やすこと
  • 東大を軸に東工大、早慶等複数の大学で構成
  • 観察力や先を読む力が身につく

遊びから本気へ。ピンポン野球に沼ったワケ

野球のボールではなく、卓球のピンポン玉と、スポンジを巻いたプラスチックバットで行うピンポン野球。子どもからお年寄りまで幅広い層が手軽に親しむことができるスポーツです。ネーミングの響きから、“お遊び”に近い感覚があるかもしれませんが、楽しみながらも競技として真剣に取り組む団体もあります。

そのひとつが、東京大学を軸にしたピンポン野球のインカレサークル。エースとして活躍中の同大学3年・清水川摩紘さんと、選手兼投手コーチを担う同大学同学年・西村匡矢さんに、同スポーツの魅力や描く未来、サークルの特徴や学び等をお聞きしました。
直径わずか4cm、重さ3gにも満たない小さなピンポン玉に込める、壮大で熱い思いをお届けします。

ーまず、ピンポン野球との出会いを教えてください。

西村 このサークルでピンポン野球を一番最初に始めたのが僕です。中学1年の頃、先輩たちが校内でそのような遊びをしていたのを見て真似したことがきっかけです。

そこから清水川に声をかけたりして同期に広まり、大学進学後もみんなで続けようということで、インカレサークルという形になりました。設立して3年目になります。

写真左から、清水川摩紘さん、西村匡矢さん。


 

清水川 はい、中3の時に誘われました。ですからサークルの3年生のメンバーは、おもに中学時代からの友人たちになります。単なる遊びとして始めましたが、次第に競技性が強くなっていきましたね。 

西村 活動していくなかでピンポン野球連盟というのがあることも知りました。そういった存在があるのかと最初は驚きましたが、僕たちが独自にやっていたルールとの大きな違いはなく、今では連盟主催の大会に、毎回参加させていただいています。

清水川 ピンポン玉は軽いぶん空気抵抗が大きいので、飛距離には限度があるんです。頑張って飛ばしても20mくらい、100mレベルで飛ぶ野球よりも物理的な制約があるので、自然と似たようなやり方に絞られるんですね。

ーピンポン野球のどういった部分に魅力を感じますか?

西村 ボールが素直なところです。

清水川 めっちゃ哲学的(笑)。

西村 投手視点で言うと、ピンポン玉ってすごく軽いので、体の使い方をちょっと間違えて投げると、全然違う方向へ行ってしまうんです。ごまかしが効かないというか、しっかり突き詰めないとストライクゾーンにはまらない。逆に、ちゃんと投げれば自分の希望通りのコースへ行く。ボールは裏切らないんですね。

変化球の曲がり方もすごいですよ。想像できないくらいのカーブを描きます。これもやりがいがあります。

清水川 バッターからすると、軽いプラスチックバットを振っただけで、気持ちよくボールを飛ばせることが魅力だと思います。野球だとトレーニングで筋肉をつけてから、ようやく重い金属バットを振れるようになりますが、そこを省略して打つことができます。

気持ちよく飛ばした爽快感に近い感覚を得られると、さらに打ちたい欲が出てきて、野球の動画を参考にする等、研究するようになります。ピッチングも同じことが言えます。ですから、始めやすくて奥深いという、簡単に追求できるところもハマるポイントだと思います。

大切なのは「コミュニケーションエラーをなくす」こと

ーピッチャーとバッター、どちらが人気というのはありますか?

西村 どちらかというと打つ方に敷居の低い印象があります。ボールの空気抵抗が大きいので、投げる方はマウンドからホームベースまで届かない場合があるのです。なので投手に関しては、肩の力が必要になってきますね。体力テストのソフトボール投げで、ある程度距離の伸びる人が向いていると思います。

また、野球やソフトボールと同様の体の使い方をするのでそれらの経験者は有利と言えるかもしれません。

ー続いてサークルについて伺います。ご友人同士で作られたとのことですが、現在の特徴を教えてください。

清水川 古くからの友人だけでなく、どんどん新しい人が増えました。今年は15名の1年生が入り、計37名で活動しています。

入部動機は新歓で興味が湧き、体験に参加してそのまま入部というパターンが多いですが、新歓に限らずいつでも募集しています。東大と他大との割合は3:2ほど。他大は東工大、慶應大、早稲田大等になります。

ピンポン野球経験者はもちろん、野球部やバドミントン部出身者もいます。バドミントンも体の使い方がピンポン野球と同じなので、始めやすいかもしれません。僕は文化部出身で運動未経験ですが楽しむことができているので、本当に誰でもプレーできます。

西村 練習日の目標は月4回です。目黒区小学校の体育館開放や北区の地域体育館を利用して活動を行っています。どこも予約抽選なので外れることもありますが、現状月3、4回は確保できています。

練習日は平日夜が多く、稀に休日も行います。サークルということもあり、軽いアップから始めてひたすらゲーム形式でピンポン野球をします。毎回参加はマストではなく、開始時間に必ず集合しなければいけないということもありません。授業の関係で遅れて参加するのも普通で、パラパラと人が集まってくる感じですね。

ー“ピンポン野球あるある”があれば教えてください。

西村 プロ野球選手の投球フォームを真似て、周りがそれを当てる、みたいな(笑)。

清水川 僕は一時期、山本由伸選手を真似してましたね。みんな、すぐにピンときてわかってくれます(笑)。みんなに当ててもらいたくてやるのですが、なんか楽しいんですよ。

西村 そう言いながら、僕は完全に0から自分のフォームです。誰の真似もしません。というのも、僕は体がそんなに強くなくて、肩や肘を痛めがちなんですね。ですから怪我予防のためにも、自分のフォームを崩さないようにしています。

よく曲がるボールや伸びるボールを研究した結果、僕だけ他の人とは全然違うフォームになりました。

清水川 とんでもないフォームですよ(笑)。

ーメンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか?

清水川 それなりに礼儀は必要ですが、上下関係は緩いほうです。新入生がサークルに定着してくれることが大事だと思っているので、会話を通して居心地のいい環境作りに努めています。その子の興味に関することを話題にしたり、たわいのない雑談をしたり。安心、信頼できる先輩だと思ってもらえたらいいですね。

西村 僕はとにかくコミュニケーションエラーをなくすことを心がけています。僕が話すのは、ピッチングのことがほとんどですが、ほんの少しのボタンのかけ違いから、悪い方向に絶対いってはいけないので、身振り手振りを交え説明をしながら伝えるようにしています。

清水川 西村はすごく言語化が上手なので、後輩の体の動きをよく見たうえで、体を使ってわかりやすく助言をしています。そこに気を配っているということがわかりますね。

六大学野球のように、リーグを作りたい

ーサークルの雰囲気はどんな感じでしょうか。

西村 間違いなく言えるのは、もともと上下関係を気にせずに中高を過ごしてきた学生が多いということ。また、男子校出身者が多いので、そのノリに近い雰囲気がありますね。

清水川 全員男子なのでそういう空気になりやすいのかも。女子がいないのは課題です(笑)。新歓では女子にも声をかけましたし、SNSで広く呼びかけもしたのですが、興味があると連絡をくれるのは全員男子なんです。

西村 競技自体は誰でもできるけど、投手は先述したように肩の強さも必要だから、それがもしかしたらネックなのかもしれません。それでも、誰でも入ってほしいですね。

大学もどこでもいいんです。東北大のメンバーもいるんですよ。地元が東京で、帰省の時だけ参加してくれています。どんな形であれ、所属してくれるだけで嬉しいです。

ーとはいえ、構成している大学名を見ただけで萎縮してしまう人はいると思います。

清水川 そこもすごく課題です。友人の進学先がたまたまそれらだっただけで、大学は限定していません。学歴主義のように誤解されてしまうのが難しい部分だと感じています。

いずれもっと人が増えれば、大学を分けて各々にサークルを作り活動できたらいいと考えています。

西村 六大学野球のように、ピンポン野球でもリーグを作りたいんですよ。

ー素敵な目標ですね。詳しくお聞きしたいです。

清水川 根底にあるのは、競技を広めたい、競技人口を増やしたい、という気持ちです。連盟主催の大会に参加していますが、認知度がまだまだ低いので広報面も改善できたらと思っています。

メンバーを一定数確保できなかったので、今はインカレという形に収まっていますが、ゆくゆくは大学ごとにサークルを作り、そこで交流を図っていけたら。そのための第1歩ということで、今年は動画等を作成しSNS拡散を狙う等、新歓に力を入れました。
   
西村 普及を目指しての第1歩とは言っても、やっとその前のスタートラインに立つ努力をし始めたところ、と言ったほうが現実的かもしれません。

マイナースポーツで、まだ3年目のサークルなので、うかうかしてると一瞬で消えるんですよ(笑)。そういった危機感がずっとあるので、代替わりを見据えて存続できる人数を確保し、安定した状態を作ることが目下のミッションです。

清水川 そこから、せっかく連盟という束ねてくれる組織があるのだから、そちらと協力して普及活動をしていきたいです。今はまだ大会でご挨拶するだけなので、もっと規模を大きくして、説得力を持たせてから正式に意思表示をしたいと思います。

西村 連盟において、最初の世代の方の高齢化は残念ながら否めません。突然降って湧いたような20代前半の我々をどう受け止めていただけるかわかりませんが、何とか携わることができたらと思います。将来的に僕たちを希望の存在として見ていただきたいですね。

ピンポン野球ならではの「身につくチカラ」

ーこれまでのサークル活動で、印象深いエピソードを教えてください。

西村 サークル設立1年目の夏のことです。連盟主催の大会に本格的に参加する前に、連盟所属のなかで一番強いと言われていたチームさんと交流試合をさせてもらったんですね。その時に完全試合をされたんです。まるっきり打てなくて惨敗でした。

ですが今年、2年ぶりにそのチームさんと試合ができて、リベンジして勝てたのです。

清水川 西村が勝ち越しの3ランを打ちました。

西村 相手のエースがピリついていました(笑)。

清水川 この試合で選手としてのレベルアップを確信できました。これからは、後輩たちにも技術を継承していけたらと思います。

ーピンポン野球やサークル活動で身につく力とは何でしょうか。

清水川 観察力が磨かれました。投手としての話になりますが、バッターとの駆け引きの際に、アウトの取り方をすごく考えるんですね。その時に必要となるのが、対峙するバッターの前の打席や以前の対戦の分析です。相手の苦手な部分や特徴が対戦に活きてくるので、観察する力が身についた気がします。考えてみれば、対戦時はいつも頭を使っていますね。

西村 先を予測し組み立てる力もつくと思います。ピンポン野球は人数が少ないので打席がたくさん回ってきます。ひとりのバッターへの配球戦略をそれだけ立てなければいけません。例えば、第1打席で行った配球を第2打席以降は崩して投げれば、空振りやアウトを取りやすいだろう、と。未来のストーリーを自分で作れるようになりました。

また、日程管理能力も強くなります(笑)。体育館利用が抽選なので、スケジュールをがっちり管理しないと活動に支障が出てしまいます。ちなみに区の施設利用はまだまだアナログで、名簿を提出し抽選日に体育館まで行ってくじを引くんです…。利用させていただけるのはとてもありがたいですが、DXとは無縁な世界ではあります(笑)。

ー最後に、メッセージをお願いします!

清水川 少しでも興味があればぜひ体験に来てください。ピンポン野球を広めるべく、そこから競技に対する熱や愛情を持ってくれたら嬉しいです。
野球と同じように戦略を共有し、協力や励まし合いながらチームワークを高められて、仲間との絆も作ることができます。

西村 発展途上のサークルなので、やりたいことができます。サークルを大きくしてみたいという人もぜひ来てください。運動未経験の人は、変化球を究める僕が、技術的な部分を丁寧にコーチングします。悩みはすぐに解決できます。楽しく上手になりましょう。

キラキラと目を輝かせながら楽しそうに話してくれた西村さん。こちらがわかりやすいように言葉を選びながら説明してくれた清水川さん。お2人の話から、ピンポン野球の未来は明るく、そしていかに奥深く面白いスポーツなのかがよくわかりました。性別大学不問で誰でも大歓迎、今ならサークル運営や企画にも積極的に関わることができそうです。貴重なお話をありがとうございました。


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