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演劇『ハイキュー!!』で須賀健太にバレーボール指導も…名コーチが語る「PTAバレーの意外な世界」

東京都世田谷区立九品仏小学校PTAバレーボール部

コーチ:

藤田賢直(ふじた・まさなお)さん

小学校2年生からバレーボールを始め、中高大、社会人の全てでバレーボール部に所属。2007年より、九品仏小PTAバレーボール部のコーチ就任。大人気漫画『ハイキュー!!』の演劇では、6年間指導にあたった。

ひと目でわかる! チームの特色

  • PTAバレーならではの練習レベル
  • 自分の生活スタイルに合わせて参加OK
  • コーチ歴20年のベテランが指導

「い〜ち、に〜、さ〜ん、ナイスキー! ナイスファイト!」

閑静な住宅街に佇む小学校の体育館。毎週水曜の午後は、児童とはまた別の活気あふれる声に包まれます。

今年で創立72年を迎える九品仏小学校。そのPTAバレーボール部で、長きに渡りコーチを務められている藤田賢直さんに、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』(主演:須賀健太さん)のバレー指導の裏話や、PTAバレーボール(以下、PTAバレー)の魅力、指導の在り方、九品仏小の目指すバレーについて、たっぷりとお話しいただきました。

『ハイキュー!!』指導のきっかけと裏話

 

 

ーPTAバレーとの接点はいつだったのでしょうか。バレーとの出会いも教えてください。

知り合いの紹介で、2007年から正式にコーチとして指導させてもらっています。ただ、その前からたまに顔を出していたので、それを含めると約20年くらいになります。長いですね。

バレーボールは、小学校2年生から地域の少年団で始めました。そこから地元の中学、崇徳高等学校を経て、明治大学に進み、いずれもバレー部に所属。卒業後は企業のチーム等に入り、2年ほどバレーを続けました。

高校ではエースをやったり、大学ではこの頃にリベロというポジションができたのでそれをやったり、企業のチーム等でもいろいろなポジションを任されました。どんなところでもできるけれど、これといってずば抜けたものはないという、器用貧乏です(笑)。

ーそのオールマイティな才能と実力から、『ハイキュー!!』の舞台版のバレー指導のオファーがあったとお聞きしました。

知り合いの方から、「どのポジションも教えられる指導者を探している知人がいる」と相談されて、お受けしたんです。

主演の須賀さんをはじめ、みなさん初心者でしたが、熱量がすごく高かったですね。飲み込みが早くて上達するスピードに驚いた記憶があります。

公式の練習日以外も練習をしたいと言われたので、ファンの方々に見つからない場所はどこかと考えて九品仏小に許可をもらい、体育館に来て練習してもらったこともあります。部外者は入れない、安全な空間ですからね。

 

PTAバレーボールの知られざるリアル

 

ー閉ざされた空間と言うと、PTAバレーもある種、知る人ぞ知る世界というようなイメージがあります。部員の方々の共通項は「子供がいてPTAに所属している保護者」というだけで、バックボーンはさまざまな方々が集まっていそうですね。PTAバレーの特徴とは何でしょうか。

確かにメンバーの方々はいろいろな背景をお持ちです。だからこそ、入部動機も多岐に渡ります。PTAバレーは、PTA在籍期間しか参加できないんですね。ですから、その瞬間にかけたいと熱意を持って参加する人がいる。その一方で、バレー云々より、人間関係のつながりを持ちたいという目的で入る人もいます。ですから、技術や能力もかなりバラつきがあります。

 

 

そういった特徴を踏まえると、PTAバレーが目指すものは、高みではなく“中心値”であると思っています。中心値とは、上手な選手と、ビギナーや発展途上の選手がお互いに歩み寄り、チームとしての方向性を決めた後、それに対してみんな同じ目線の高さで前進すること、と言えばわかるでしょうか。それこそが、PTAバレーだと思いますね。

クラブチームなら、自分の実力に合わせてチームを選べて、勝利にもこだわることができますが、PTAバレーはそうではないんです。

九品仏小が所属するブロックの他の学校を見ても、結局その中心値の高いチームが勝っていると思うんです。例えば、ずば抜けて上手いエース任せのチームと、抜きん出た選手はいないけれど、みんながそこそこのレベルで意見を言い合うチームが対戦するとします。中心値が高く、そして勝つのはたいてい後者なんですね。

ただ、指導する側としてはその中心値の決め方が難しい。できない選手ができる選手のレベルに近づけるように練習メニューを組んでいますが、練習の難易度が高すぎると、ついていけない選手が出て活動が成り立たないですし、逆に簡単すぎると上手な人たちが飽きてしまう。できる選手にとっては、ちょっとジレンマを感じますよね。

ですが、PTAバレーは、バレー以外で得られるものが多いのも大きな魅力です。そうしたことも含めて、割り切ってPTAバレーを楽しんでいる人が多いと思います。

 

バレー以外にもある、入部のメリット

 

ーPTAバレーの魅力について、もう少し詳しく教えてください。

子供や先生方との繋がりも強いので、関わり方がバレーボールだけではないことです。飲み会が顕著に表れますね。自分はビールバーを経営しているので、そこで飲み会を開催していただけるのですが、PTAバレーの人たちは良い意味でバレーの話をほとんどしません(笑)。ですからかえって、人生における必要なエッセンスになり得るのがPTAバレーなのかなと思います。

クラブチームは、勝敗の結果によっては、飲み会の場が熱くなりすぎることもあります。それはそれで、貴重な時間で意味のあることだとは思います。

 

 

ー長年、指導をされてきました。昔と今を比べて、変わったこと、変わらないことはどういったものですか。

圧倒的に違うのは、僕が入りたての頃の部員は年上の方々ばかりでしたが、今は同年代、もしくは年下の方々が多いということ。当たり前のことですが、この年月の変化によって指導法も変わりました。

昔は、部員の方から練習メニューの提案があって、それに準じて考えていました。それでも、僕がまだまだ若く、かつ社会人チームでも現役時代だったため、「男性と女性は違います」など部員の方からさまざまな意見が出て、ちょっと戸惑った時期もあったんです。

打開できたのは、年月を経て結果がついてきたからだと思っています。ブロックごとに行われる大会で、1位の学校は圧倒的に強かったのですが、九品仏は常に2位をキープできるようになったんですね。そこから、自分の意見や練習法を受け入れてもらえるようになりました。

また、その結果を見聞きした人から、クラブチームのコーチをやってほしいと声がかかり、並行して指導を始めたんですね。そこで結果を出せたことも、信頼を得られた要因のひとつとなったと思います。

変わらないのは、先々の予定を立てることができない、ということ。みなさん、仕事や家族の予定がわかってから、ようやく自分の予定を決められるんです。この部活動の優先順位って、いくら意欲があっても3番目、4番目にならざるをえないんです。

大きな大会となると先に入れ込むことはできますが、それ以外はギリギリにならないとわかりません。また、自分は元気でもご家族が不調であれば、お世話や看病で練習は休むしかない。そういったことは当たり前で、許容される世界なんです。ですから、一見敷居が高そうでも、全然そうではなく、自分のペースで参加できます。

 

九品仏小PTAバレーが目指すもの

 

ー最後に、九品仏小の目指すバレーをお聞かせください。

お子さんの卒業とともに、部員も卒業となるので(練習参加はできますが、試合には出られなくなります)、その年のメンバーによって目標は変わります。ただ、今は人数がとても少ないので、メンバーを増やさないと始まらないです。チームとして動くのが難しいので、ひとり一人の技術をあげる練習を重点的に行っています。

 

 

具体的には、サーブやスパイクを入れるようにする。これらは、クラブチームに入っている人や学生の方ですと当たり前のことなんです。ですが、PTAバレーはそうではないんですね。当たり前のことを、当たり前にできるようになる、という作業を今やっています。

ですから、未経験の方も気軽に入っていただけると嬉しいです。運動不足解消や気分転換にもいいと思います。技術が上がれば、バレーボールがもっと楽しくなるはずです。

理想を言うと、いろいろな課題があると思いますが、九品仏小のPTAバレーはもっと門戸を広げてもいいのではないかと思っています。バレーボールクリニックじゃないですが、外部の方にも来てもらって、ポイントごとに練習会のようなものを開催できたらと思いますね。

 

ー入部するのに少し勇気が必要と思われがちなPTAバレーですが、実はビギナーの方や、育児が少し落ち着いて自分の時間を作りたい人などにぴったりの活動と言えます。特に九品仏小は、メンバー数の少ない今が入りどきですね。新しい自分を発見できるかもしれません。藤田さん、貴重なお話をありがとうございました。 

 

藤田さんの経営するビールバーはコチラ。
「Wailele ~Hawaii & American Beer Bar~」


東京都世田谷区立九品仏小学校PTAバレーボール部 チームが気になったら…
東京都世田谷区立九品仏小学校PTAバレーボール部
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