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あの言葉は言いません…“怒られてバレー嫌い”だった監督による「自主性を育むジュニアバレークラブ」

福岡県福津市福津ジュニアバレーボールクラブ

コーチ:

北川新二(きたがわ・しんじ)さん
北川美陽子(きたがわ・みよこ)さん

福岡県福津市を拠点に活動中の同クラブを指導する傍ら、一般社団法人「監督が怒ってはいけない大会」の理事も兼任。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 自ら考え実行する力を養う
  • 勝利を重視しないが勝負は捨てない
  • トレーナー常駐

福津ジュニアバレーボールクラブをご夫婦で指導されている北川新二さん、美陽子さんに、福津ジュニア誕生秘話をはじめ、指導方針や運営体制についてお話を伺いました。 

最初は体育館も借りられず、指導方法も手探り状態

 

 

ー福津ジュニアを立ち上げた経緯を教えてください。

美陽子さん 2008年、福岡県への帰郷をきっかけに福津ジュニアを作りました。私自身、子どもの頃からバレーをしていたのですが、地元に戻るとジュニアチームがなくなっていたんです。近所の方々は、私がバレーボール選手だったことを知っていたため「子供たちにバレーボールを教えてほしい」という声も集まり、福津ジュニアを立ち上げるに至りました。

ー美陽子さんには「バレー嫌い」の時期があったそうですが、そこからチームを立ち上げるのは大きな決断だったかと思います。当時はどのような心境でしたか?

美陽子さん そうですね。バレー、嫌いでした(笑)。選手時代の練習はすごいスパルタだったし、コーチに叩かれることも…。振り返るときつい思い出がいっぱいです。もうバレーなんてやりたくないって思っていました。

それでもチームを作ったのは、先ほどお話しした近所の方々からの要望もありますが、娘と息子の影響も大きいんです。二人がバレーに興味を持ち始めていて、私が選手だったと知っていたこともあり一緒にやりたいと。地元で自分の子どもたちとバレーができたらいいなとは思っていたので、チームがないなら作ってしまおう、といった感じでした。ですから子どものために作ったという側面もありますね。

 

 

ーチームをゼロから立ち上げるのは相当大変なことだと思います。設立当時はどのような状況でしたか?

美陽子さん 本当にめちゃくちゃ大変でした。最初は体育館すら借りられなかったんです。当時バスケチームが毎日使用していて「半分でもいいから貸してほしい」とお願いするも、「両面使うから貸せない」と軽くあしらわれる始末。このまま交渉していてもらちが明かないと思い、教育委員会に話をしに行きました。当時の教育長が、小学校時代のバレーの監督だったこともあり、これもなにかの縁だと思って相談へ。

あまり良い思い出がなかったその監督と会うことは勇気が入りましたが、状況を説明して「どうしたらいいですかね?」と聞くと、クラブチームのことは教育委員会の管轄外のようで「なにも関与できない」との回答、正直がっくりでした。

チームを作ったものの練習はできず、これからどうしようかと悩んでいたところ、突然バスケチームの監督さんから連絡があったんです。月曜日と金曜日であれば、半分使わせてくれるとのことでした。なぜ急に貸す気になったのかはいまだに分かりませんが、私がたくさんの方々に練習場所の相談をしていたことが、良い意味で作用したのかなと。本当に諦めなくて良かったです。

ーチーム始動まで大変でしたね。始めてからは順調でしたか?

美陽子さん 決して順調ではなかったです。最初は指導方法に悩みました。自分ではプレーできても教え方が分からず、SNSもない時代だったので本を読むなどして独学で研究。全てが手探り状態で、当然他のチームとの交流もありませんでした。

その頃にちょうど北川(新二さん)が練習に来るようになって、そこから色々と変化がありました。彼の社交的な性格をかって外交的な仕事をお任せしたところ、他のチームとの交流が生まれるようになりました。その結果、他のチームのコーチから指導方法を学ぶことができ、設立から約2年ほどでやっと試合に出られるまでのチームに成長しました。

子どもたちの自主性を育む、福津ジュニアの指導方法

ー初めての試合はいかがでしたか?

美陽子さん 想像よりも試合になっていたと思います。小学生の試合はサーブが入れば点数が入ることも多く、特に新人戦はサーブの打ち合い。現行のラリーポイント制では、相手のミスでも点数が入るので、点が積み上がるんです。サーブ権がなければ点数が入らなかった時代と比べ、点が入りやすくなりましたね。一方で、記録や審判といったプレー以外の部分は全然ダメ。子どもたちも私も緊張してしまって改善点しかないといった感じでした。

ー試合に出始めチーム力をつけていく中で、大切にしてきた指導方針を教えてください

美陽子さん 私たちのチームでは選手の自主性を大切にしています。これは他の競技にも共通することですが、試合中に大人が手助けできることはほぼなく、選手たちはコート内で起こる全ての問題を自ら解決しなければなりません。子どもたちが自分の頭で物事を考え、対処できる能力を身につけることが、私たちの目指すところです。

ー試合中、子どもたちはどのような方法で問題を解決しているのでしょうか?

美陽子さん 例えばミスが起きたとき、コート内にいる6人が学年関係なく集まって会話をしています。ルール上、長すぎると好ましくないので注意を受けることもありますが…。練習時から「集まって話をする」ことを重視しているため、試合中も同じ行動をとっているようです。

新二さん 誰かがミスをしても、その子を責めるのではなく励ましていますね。ミスをした子もそれを受けて、ちょっと笑いながら「ごめんごめん」と反応することも。他にも、コートの中央に落ちてしまったボールに対して「今のは誰のかな?」と声をかけあって、同じ状況が再び起きないように「次はそこに来たら私が行くね」と互いに確認しあっています。

 

 

ー素晴らしいですね。そのような自主性を育むために、具体的にはどのような取り組みをされているのですか?

美陽子さん 練習中、子どもたちによく質問をしています。例えば「どうしてそのプレーをしたの?」とか「なぜネットにかかったの?」といった質問です。そして私から答えは言いません。子どもたちの回答を待ちます。

もちろん最初からスムーズに答えることはできないので、まずはヒントを与えながら。例えば「いつもどうやってプレーするって言ってたっけ?」と尋ねると、「正面です」といった答えが返ってきます。そして「今はどうだった?」と続けると、「横だった」と答えるので、「そうだね」となるんです。こういった質問を繰り返すことで、子どもたちもすぐに答えられるようになりました。自分で考える習慣が身についているのだと思います。

ただ、成績にはあまり結びついていません。でもそれを気にしてはいないんです。正直なところ、成績だけを追い求めているわけではないので。それよりも私たちは子どもたちの成長に重点を置いて指導しています。もちろん勝ちたい試合もありますが、敗北から学ぶことも多いです。子どもたちは、勝敗にかかわらず楽しみながらプレーしていますし、「もっと練習したい」という意欲は、負けたときこそ強く感じるもの。勝利で得られる喜びもありますが、それは一時的なものだと、私個人としては考えています。

新二さん 試合前、子どもたちにプレッシャーはかけませんが「今日も勝ちに行こう」「優勝を目指そう」といった声掛けはします。やはりスポーツの本質は勝負にありますし「負けてもいいよ」とは絶対に言えません。勝利を望んではいないけど、勝負は捨てないというのが、私たちのスタンスです。

ジュニアチームに「トレーナー」を迎えるメリット

ー子どもたちへの声掛けなどで気をつけていることはありますか?

美陽子さん ネガティブな言葉は使わないですね。たとえ子どもたちがミスをしても「大丈夫、その打ち方でOK」「ネットにかかっても打てるようになるよ!」とポジティブな表現を使います。サーブが外れたり、アタックがネットにかかったりしても、「思い切り良く打ったね」と良かった点を評価。結果的にミスになったとしても、やはり過程が大事なので「それは絶対入るようになるよ!」とか、そういったニュアンスで伝えています。

 

 

ー他にも、福津ジュニアならではの特色があれば教えてください

新二さん 昨年からチームにトレーナーさんをお迎えしています。整骨院の先生でもあるため怪我の相談も可能です。さらに月1回、トレーナーさんによるトレーニング指導を通じて、子どもたちは新しい動きを習得。様々な動きを取り入れることで、バレーによる負傷リスク軽減にもつながっています。

ー導入しようと思ったきっかけは?

新二さん 成長期の子どもたち、特に小学校高学年になるとオスグッドで膝の痛みを訴える子もいるんです。さらにジャンプや急停止といった動作も多いので、なおさら膝に負担がかかります。保護者の方々から「良い病院はありませんか?」と相談されることも増え、それなら月に1回、整骨院の先生を招いたら良いのではないかと考え、この取り組みを始めました。非常に好評なので、他のチームにもおすすめしています。

ー最後に、福津ジュニアでは「こんな子を待っている!」というアピールをお聞かせください

新二さん 他のチームで嫌な思いをしてしまって、スポーツを辞めたいと思ったり、すでに辞めてしまったりした子どもたちにはぜひ一度来てもらいたいです。月に1回でもいいですし、来たいときにいつでも来てください。私も中学生の時にスポーツをやめてしまった経験があるので、少しでもそういった子たちの助けになれればと思っています。

美陽子さん 私は全員ウェルカムです。勝利至上主義のチームではないので、バレーボールに少しでも興味のある方なら、どなたでも歓迎します。初心者の方も、バレーは難しそうと感じられている方も、全然大丈夫。バレーボールは絶対に誰でも楽しめるスポーツです。皆さんが安心して取り組める環境を用意してお待ちしています。


福津ジュニアバレーボールクラブ チームが気になったら…
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