如水館高等学校チアリーディング部(WAVES)
監督:
岡本里絵子(おかもと・りえこ)さん
中学・高校で体操を経験し、日本体育大学に進学後チアの道へと進む。大学卒業後は跡見学園女子大学で2年間チアの指導経験を経て、同校のチアリーディング部監督に就任。就任1年目でJAPAN CUP3位を達成。今年で勤続23年目を迎える。
ひと目でわかる! チームの特色
- リーダーを軸に選手が自ら動ける環境作り
- 全体評価につながる細部までこだわった演技
- 1人1人を大切にする気持ちを育てる
華やかで見ている人に元気を与えるチアリーディング。広島県にある如水館高校のチアリーディング部は、JAPAN CUPの中国四国大会で20年連続優勝している強豪校です。さらに、2024年度は全国大会で準優勝という快挙を成し遂げました。「チアは戦いだと思います」と話す岡本里絵子監督に、準優勝までの軌跡を伺いました。
頼れるコーチとの2人体制。役割分担でチームがさらにパワーアップ
左:岡本里絵子監督・右:大森衣里子コーチ
ーまずは監督のご経歴を教えてください
中学、高校時代は体操競技に取り組み、大学でチアリーディングに転向しました。卒業後は跡見学園女子大学で2年間チアの指導経験を積み、25歳のときに如水館高等学校チアリーディング部の監督に就任しました。6年前から同校の卒業生である大森先生がコーチとして加わり、チームはさらにパワーアップしています。
ー今は監督とコーチの2人体制なのですね。
はい。以前は指導や曲選び、演技構成まで1人でやっていたのですが、大森コーチが来てくれてからは役割分担ができるようになりました。お互い得意分野が違うので、自然と補い合える関係になっています。
特に、大森コーチは曲選びやメンバー決め、演技構成などが得意で、とても頼りになる存在です。「曲との調和」が今のチームの課題だと思っているので、一緒に工夫しながら演技を作っています。
また、ここ数年で外部のトレーナーの方にも来ていただけるようになり、私たちだけでは手が届かなかった部分を専門家にお願いできるようになりました。
ーチアの指導で気をつけていることはありますか?
自分たちがどうなりたいかと考え、自分たちでチームを作っていけるようにするため「10は言わないこと」「やらせないこと」を意識しています。クラブチームではなく学校教育の一環なので、10を言わず選手に考えさせるようにしています。また、選手が自らやりたいという気持ちにさせるような声かけをしています。練習の指示も前日の反省を踏まえてチームで考えたものを大森コーチと相談をして決めています。
ー目指す10の域に達しないときは、どのように対応しているのでしょうか。
理想とする10のレベルに届かない場合は軌道修正しますが、きっかけを与えるだけにとどめ、その後は選手主体で動けるようにしています。また、私が修正すべきと感じても、そのまま選手に伝えることはありません。まずは大森コーチに相談し、同意を得たうえで伝えるようにしています。
入賞を逃した悔しさが2024年の準優勝に繋がった
ー2024年度のJAPAN CUPで準優勝という成績を収めていますが、道のりは大変でしたか?
大森コーチや顧問の仙田先生が週に1度寮に通って、いつも以上に選手たちとコミュニケーションをとるようにしていました。やはり指導者がいくら高い目標を掲げても、それだけでは勝てません。選手たちの思いとチームの目標をしっかりすり合わせていくことが、本当に大切でしたね。
ー目標を明確にすることは成績にも繋がりそうですね。
去年の全日本高等学校選手権は、4位という結果でした。実はこの大会、入賞はほぼ確実だと思っていたのですが、最後の最後で落としてしまって…。私たちもですが、選手も本当に悔しがっていました。そこから目標に対する意識が変わり、今年の準優勝に繋がったんだと思います。
ー具体的にどのような部分が変わりましたか?
「最後の最後まで何が起こるかわからない」という状況を身をもって経験したことが、選手たちの意識を大きく変えました。練習中のちょっとした妥協が本番での落下に繋がるかもしれないと思い、選手同士がお互いを厳しく律する場面が増えたんです。「妥協したら勝てない」という言葉を何度も掛け合い、「3本連続で上がるまでは帰らないよ!」と自分たちを鼓舞しながら、練習に打ち込んでいましたね。また、どれだけ頑張っても落下は起こりうると学んだことで、落下後の演技にも変化がありました。
JAPAN CUP当日も、私やコーチから声をかけるまでもなく、選手たち自ら気持ちを奮い立たせていました。目標は3位入賞でしたが、結果的に準優勝できて本当に嬉しかったです。
ー準優勝したらさらに上を目指したくなりますよね。
そうですね。もちろんトップは狙いたいと思っています。でも目指すのは、私たちらしい演技です。直接の加点には繋がらなくても膝やつま先の伸びといった所作にこだわり、全体評価を上げて、誰が見ても思わず「キレイだね」と言いたくなるような演技を目指しています。
落ちる前に手を差し伸べられるのがチーム競技の魅力
ーチームの雰囲気はいかがですか?
先輩後輩関係なく、全員とても仲がいいです。選手たち自身が「目標達成のための練習」であることをしっかり理解しているので、意見も積極的に出しやすく、出た意見もスムーズに受け入れられる雰囲気があります。ミーティングなども基本的には選手主体で進めるので、私たちはあくまでサポート役にまわることが多いですね。
ーどんな選手がチームに合っていますか?
志が高く、明るく元気な選手が合っていると思います。絶対条件としては、人を大切にできること。チームスポーツなので、人を下げて自分を上げようとする考えはチアには合いません。私は「ハートフルチアWAVES(如水館高等学校チアリーディング部の愛称)」と掲げているのですが、やさしい子に入ってほしいですね。
ー仲間を大切にする気持ちがチーム競技には重要ですね。
周りの誰かがキラキラ輝いているのを見たとき「おめでとう!」と言いながらも心の中では悔しさをかみ殺していることも珍しくありません。僻みや嫉妬でつぶれる前に、私から選手に声をかけるようにしています。
落ちているときには何を言っても響かないので、まずは選手を戦える状態に引き戻さないといけません。選手にも「落ちそうになったら自分から教えて欲しい。」と伝えています。手を出してくれたら引っ張り上げることができるので。チアって戦いだと思っています(笑)
ー心も鍛えられて、人間的に成長できそうですね。
経験者も未経験者も、3年間ここでやって良かったと思って卒業して欲しいんです。なので、メンバーを外れた選手にも演技を作るなど工夫しています。どうしても控えの選手は光を浴びにくいですが、役割を与えるなどして、「影の存在じゃないよ」ということも伝えています。
卒業したあと、しんどいときにチアを見に帰って来る子もいます。「やっぱりチアっていいですね。明日から頑張ります」と言って、泣きながら帰って行くんです(笑)そんな姿を見て、また私もパワーをもらう日々です。
ここで頑張ったものがあったという経験が、卒業してからも支えになってくれたらいい。と話してくれた岡本監督。チアリーディング部の母として、選手たちを温かく見守り、寄り添いながら背中を押しています。指導者層が手厚くなった如水館高等学校チアリーディング部は、これからさらに上の成績を目指して練習に励みます。今後の大会でもキレイな演技を楽しみにしています。
チームが気になったら…
如水館高等学校チアリーディング部(WAVES) |