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女子サッカー継続には、心技体と…もう1つ。ノジマステラ神奈川相模原アヴェニーレ(U15)コーチ 福田あやが導き出した楽しさの伝え方【PR】

本企画は、株式会社モルテンが展開する女子スポーツを応援する「Keep Playing」とのタイアップ企画です。女子サッカーまたはバスケの選手や指導者を対象に、現在のそれぞれの取り組みへの思いや競技環境についての現状などを伺います。

ノジマステラ神奈川相模原(WEリーグ所属)のU-15チーム、アヴェニーレ。チーム名は、イタリア語で「将来・未来」を意味し、ノジマステラ、ひいては世界の女子サッカー界の将来を担う可能性のある選手たちが日々鍛錬に励んでいます。

今回は、同チームの創立時に指揮を取られた後、日本とインドの数々のチームや大学、学校で監督、コーチを歴任し、2024年より再びアヴェニーレのコーチを務められている福田あやさんを取材しました。

様々な年代やレベルの女子サッカーを見てきた福田さんが考える、女性プレーヤーが競技を続けられる環境、持つべき意識とは。インドサッカーの現状や人生のどん底を経験して得た気づきとともにお話しいただきます。

Keep Playingとは?

日本における女性スポーツ(※)の競技登録者数は高校を卒業後、大きく減少してしまいます。どんな競技レベルやライフステージでも、スポーツの持つ魅力に惹きつけられ、仲間と出会い、プレイを楽しみ、続けて欲しいと考えています。このメッセージが多くのスポーツをする人・みる人・支える人に届くことで、興味・関心につなげ、スポーツを継続する環境がより良いものになることに繋がっていくことを目指しています。
※2022年バスケットボール、サッカー、ハンドボールの女性競技登録者数を参照
高校生から18歳以上になると競技登録者数はバスケットボール74%、サッカー29%、ハンドボール80%減少。

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心技体にあと1つ。最大限の力を発揮するために必要なもの

ーアヴェニーレのコーチを務める前は、インドで活動をされていたそうですが、改めて渡印した経緯を教えていただけますか

人生の岐路となる出来事があった時に、1人のインド人臨床心理技師の方と出会ったことがインドへ行くきっかけとなりました。

これまで、私はノジマステラのチームや大学でサッカーの指導者をしていて、渡印直前は、母校の早稲田大学で監督をさせていただいていました。その時に、酷く体調を崩したんです。この時点で「サッカー界に自分の居場所はもうない、私の人生は終わった」と、勝手な思い込みなのですが(笑)、当時はどん底に突き落とされたような気分になっていました。

一方で、指導者としての勉強を続けながら大学で監督業を行っていくうちに、指導者の枠を超えた、いろいろな知見を得るべきだとも考え始めていました。

サッカーの戦術やマネジメント、ライセンス取得ももちろん大事なことですが、それらを学んでいくと、最終的には人間のパフォーマンスを生む原点、本質的な部分とは何なのかという疑問にぶち当たるんです。でも、指導者としての知識を学ぶことも必要だと思い直して、また目の前の勉強を始めるのですが、結局ぐるぐるとループに陥り、悶々としていました。

そこから辿り着いたのが、脳でした。パフォーマンスを最大限に発揮できるかどうか、その鍵は脳が握っていると。もっと言えば、“心技体脳”の4つのバランスが整うことがベストだと私なりに見出したのです。

そのタイミングで、インド人の女性臨床心理士さんとお話しする機会がありました。
その方曰く、経済成長著しいインドでも最近は社会的ストレスが加速しスポーツや健康など、余暇という部分に人々の関心がいき始めているとのこと。

そこから何か一緒にできればという話になり、今や世界一の人口でまだまだ発展途上であるインドの方が、日本よりも挑戦するハードルが低く将来の可能性も感じ、また、自分を見つめ直すチャンスとも考えてインドへ渡る決意をしました。

とはいえ、サッカーと無縁だったわけでもありません。

メインの仕事と並行して、パーソナルレッスンや学校でコーチをしました。徐々に私立大学で脳科学やwell-being(ウェルビーイング)の講義を持たせていただけることにもなり、結局、サッカーの仕事にも携わることができました。
※well-being(ウェルビーイング):身体的、精神的に健康な状態であるだけでなく、社会的、経済的に良好で満たされている状態にあることを意味する概念

愕然とした、インドの女子サッカーの環境

ーインドの女子サッカー事情をお聞きしたいです。

前に進んではいますが、レベルも環境も本当にまだまだです。

男子は10年ほど前に、海外から有能な選手を招いてインディアン・スーパーリーグというプロリーグを立ち上げましたが、当初はいまいちパッとしませんでした。

ただ、W杯の北中米大会からアジアの出場枠が8.5に広がったことで、ここに来てサッカーの機運は高まっていると感じています。前回のカタール大会も比較的距離が近いことから観戦に行った人も多く、全体的にはサッカー熱は上がってきていると思います。

ですが、女子はなかなか難しい。一度、私が住んでいたデリーの選抜チームの練習会に呼ばれて出向いたことがあります。選ばれた子たちのはずなのに、インサイドキックの蹴り方も怪しくて…。インドは広いので地域ごとに選抜チームがあるのですが、都市部のデリーでそのレベル。そう考えると、より環境が整いづらい地方の競技力については想像に難くありませんでした。

生活が豊かになり、スポーツや健康に目を向け出した人が多い中でも、やはり女性は早くに結婚して家に入り、家事育児をするべきという文化が根強く残っている。そう考えると、選抜チームや練習会開催自体が前進とも言えます。女子サッカー人口も徐々に増えていると思うので、本当にこれからという感じです。

ーそこから現在に至るまでの経緯もお聞かせください。なぜ日本に戻られたのでしょうか。

インドでサッカーを教えている最中に、怪我をしてしまったからです。思いのほか大怪我で...。治療費などを考えると日本でしっかり治した方がいいという結論に落ち着き、仕事を調整したうえで帰国しました。

ノジマステラとの接点は、たまたま行った試合観戦です。手術後、リハビリをしている時に、ノジマステラのトップチームの試合を観に行きました。そこで、アカデミーコーチを探していることを知り、お声がけをいただいたのです。

当初はインドへ戻ることも考えていたし、怪我もしていたので臨時コーチから入らせてもらいました。ですが、次第に思いが強くなり、正式に就任という形を取らせていただきました。

というのも、私はアカデミーの初年度の監督をしたんです。上昇気流だったトップのコーチもしていました。約10年の時を経てクラブの変わらない良さ、変わった良さ、いろいろなところが見えて愛着が再燃したのです。また、生き方や人生の捉え方など、自分を見つめ直す時期を越えての出会いであったことも大きかったです。導きというかご縁を感じて戻ることにしました。

時間を忘れるほど楽しいと思える環境作りが、私の使命

ー大学部活、インドのチームや学校、そこから今のアヴェニーレと、さまざまなレベルや年代の女子サッカーを見てこられました。指導や考え方に、変化はありますか。

根本となる考え方、原点は変わっていないです。

“サッカーは楽しい”という気持ちを持ち続けてほしいんですね。サッカーを知れば知るほど、その楽しさって、一言で表せないくらい深いものになるんですよ。ワクワクして夢中になって、もっと上手くなりたいと時間を忘れるくらい没頭できる。この先の人生が変わっちゃうくらいの楽しさなんです。

そうであることを伝えたいし、そういう気持ちになれる環境を作っていくことが私の使命だと思っています。それは昔から変わっていません。

ただ、先述したように楽しさやその使命を見失った時期はありました。振り返るとそれは自分の成長過程だったと思いますが、ライセンスを取っていく中で、セオリーや戦術などにフォーカスしすぎていたのです。

その時は、サッカーで勝つための知識や経験、実績を持たないと、人の上に立つ資格がないと思っていたので、とても苦しかったですね。選手にも相当迷惑をかけたと思います。

要らない鎧を脱ぐきっかけとなったのは、やはり人生のどん底に落ちたことと、そこから赴いたインドです。その過程で様々な人たちといろいろな考え方に出会ったことが私を目覚めさせてくれました。そして、その時期に古くからの仲間や家族のありがたみを強く感じられたことも、思い出すきっかけになったのかなと思います。

全ての経験があったからこそ、サッカーの原点に立ち戻ることができて、自分の人生における大事なことも見つけられました。そこから今は気持ちにゆとりができて、広い視点で指導にあたることができていると思います。

ー改めて気づいた“サッカーの楽しさ”は、今どのように伝えていますか。

端的に言うと、ここは自分を開放できる居心地のいい場所なんだよ、ということを選手たちがわかるように、表情や言葉で表現することを心がけています。

なぜなら、楽しい気持ちは、自分のパフォーマンスを最大限に活かすことができた瞬間に味わえるもの。そのパフォーマンスは想像力と創造力を駆使したことで生まれるからです。そして、その能力は個性を否定されずに自分を開放できる場所、つまり安全安心な環境のもと発揮できると脳科学で証明されているのです。

日本は “みんなと一緒” を重視しがちで、個性を出しづらかったりしますよね。でも、ここではのびのびと自分を出してほしいと思います。

具体的なアプローチとしては、基本的に明るい表情で接するようにしています。元気な声で挨拶したり、時には「ヤッホー」と陽気な声かけをしたり。「私はオープンマインドですよ」ということを表情や言葉で伝えるんですね。

人と人は、鏡のようなもの。最初はみんな引いていましたが(笑)、次第に慣れて相応のリアクションをするようになりました。心の開放ですね。

また、見逃されがちな部分をキャッチするようにしています。例えばプレーなら、右サイドから突破して中央の選手がゴールを決めた場面があったとします。パスをした選手もシュートをした選手もナイス!です。

でも、ボールは来なかったけれど逆サイドで走っていた選手や、リスク管理をしてラインを上げてバランスを取った選手も、一見関係ないようでちゃんと貢献しているんですよ。そういう選手たちを私は褒めます。

ピッチ外でも同じことが言えます。集合時にひとり遅れてきた選手がいたとします。たいがい注意すると思いますが、実は一番遠いマーカーを拾いに行っていたから遅れてしまったならどうでしょうか?そんな気配りができるという点を私は拾ってあげたいのです。

そこから、自分が良かれと思ったことをジャッジしてくれる、見てくれている、という安心安全につながるかなと思います。

これを続けていると、試合中、監督の顔をうかがうプレーがなくなるんですよ。「こう言われたから、やってみました。合ってますか?」というちょっと自信がなさそうな顔つきで私を見るのではなく、「私、考えてやってみたよ、見てくれたよね、どう?」といったドヤ顔に変わるんです(笑)。

「私がハッピーに輝ける場所はどこ?」その意識が続ける力になる

ー“楽しい”の先は、サッカーを続けたいという気持ちにつながりそうですね。

そうですね、やはり原点は楽しさで、それがあるから続けたくなるのだと思います。

勝利すること、優勝やプロになることなど、サッカーを続けるための要素はいろいろあります。それらの価値は絶対的にあると思いますが、続けるには心技体脳の4ピースを全部育てることが大事です。そして、心と脳の土台となるのが、楽しい気持ちなのです。本当の意味で、楽しさの意味がわかっているかが大切だと思います。

ーそのうえで、女子サッカーは中学生以降の競技人口が減少しているという問題を抱えています。たとえ本質的にサッカーは楽しいことがわかって続けたいと思っても、やめてしまう人がいるという現実がある。何がハードルになっていると思われますか。

ひとつに、気軽にサッカーに触れられる機会が少ないことがネックかなと思います。

私はストリートサッカーで育ったんです。幼稚園の頃から日本代表や読売クラブに所属していた大人たちと一緒に、その辺でボールを蹴っていました。

家族で行った海外旅行先でも、広場でサッカーをやっていたら混ぜてもらったり。日本でも公園に行ったら、その場にいた何人かに声をかけてゲームをしたり。
そこは年齢も性別も関係ない、ボールさえ蹴ることができればOKで、上手だったら認められるといった世界なんです。

今はボール遊び禁止の公園が多いので、そこは何らかの打開策を考えるべきですが、個人的には手軽に簡単に、自然発生的にサッカーをできる文化がもっと浸透したら幸せだなと思います。

そのような “作られない環境” が必要だと思う一方で、“カテゴライズしなければいけない環境 ”もあると思います。それがスクールやアカデミーです。ハードルとなっているもうひとつは、そのカテゴライズすることがうまくいっていないが故に、続けるのをやめてしまうのではないかと考えます。

技術的にまだ未熟な子がレベルの高いチームに入っても自分のためになるかと言えばそうとは言えないし、上手な子が弱小チームにい続けても伸びません。

成長に合わせたところに、うまく入ることができていない子が意外と多いのではと思いますね。その子のレベルを見極めて、適切な場所に入ること。そこから継続につながるのではないかと思います。男子の中でだってチームを移籍したって、その子の最適な場所が一番です。

ー最後に、福田さんが女子サッカーに携わり続ける理由を教えてください。

渡印経験を始め、さまざまな出会いを通じて、自分がハッピーで輝いていられるのはどこかと、自分軸で物事を考えられるようになったんですね。そこから出た答えが、やっぱりこのサッカー界にいることだったからです。

体調を崩した時の自分は、サッカーに捉われすぎていて、大好きなはずなのにサッカーに苦しめられていたんです。でも、それは自分の考え方次第であると気づきました。

サッカーは国や人種、文化、障害も病気も全部超えて世界中で愛されているボーダレスなツールです。このおかげで、私は30代後半になってもいろいろな人やもの、世界とつながれました。そして、自分の思考を変えることもできました。改めてサッカーは素晴らしいと感じ、「やっぱり好きだな」と思えたのです。

世界平和を実現する一環として『フェアトレード』という制度があります。最近友人から教えてもらい勉強しているんです。その品目にサッカーボールもあって、ボールを買うことだけでも世界を救う一助になれるんです。子どもから大人まで世界中で愛されているスポーツだからこそ叶えられる夢の実現性がサッカーにはある、と私は本気で考えています。

自分が輝けば、周りも照らすことができる。それがどんどん広がれば、世界が良い方向に向かうと思うんです。大それたことを言っていますが、本当に願っていることです。世界がハッピーになるって最高なことだと思うんですよ。だからこそ、私は大好きなサッカーにずっと触れ続けていたいです。

人が年齢や経験を重ねていくことで目指す先や形が変わっていくのは自然です。自分がハッピーに輝ける場所はどこなのかという意識や視点を持つことも、何かを続けたいと思う力になると思います。



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