東京理科大学Ⅰ部体育局サッカー部
主将:
小川翔吾(おがわ・しょうご)さん
小学1年でSCH.FCにてサッカーを始め、中学は東急SレイエスFCで活動。日本大学藤沢高等学校サッカー部では、1年からルーキーリーグに全試合出場し、3年次は部長を務める。東京理科大学サッカー部では3年より主将を務め、チーム改革を推進しリーグ戦での躍進に貢献。
部長:
塩野堅也(しおの・けんや)さん
小学1年から下石神井少年サッカー団で活動。6年で第3ブロックトレセンに合格し、トーマスカップに出場。中学はワセダクラブForza’02で、クラブユース全国大会を経験。横河武蔵野FC U-18を経て、東京理科大サッカー部に1年の10月より途中入部。3年次より部長を務める。
ひと目でわかる! チームの特色
- 練習も運営も完全に学生主体
- レベル別に2チームに分かれて練習
- サッカー以外のスキルも身に付く
1969年に創部し、今季の関東大学サッカーリーグ東京・神奈川2部で優勝、念願の1部に返り咲いた東京理科大学Ⅰ部体育局サッカー部。「こんなに学生主体で活動している部活はそうそうない」というチームの実態とは。主将の小川翔吾さん、部長の塩野堅也さんに取材しました。
※取材はリーグ戦期間中に行いました。
チーム躍進のカギは「夜練」
ー まずは、チームの現状を教えてください。
塩野 リーグ戦12試合を終え、10勝2分けという好成績で折り返すことができました。チームの雰囲気はものすごくいいですね。
昨シーズンは1部に初昇格を果たしたものの、1勝3分けであとは全敗。その結果、今季は2部スタートとなりましたが、1部復帰に向けて日々みんなで頑張っている状態です。
ー 2部降格というメンタル的にも厳しいなかで、勝ちを積み上げていくことは容易ではないと思います。チームを率いる立場のお二人は、どのように選手たちに働きかけたのでしょうか。
小川 昨年の悔しさをバネに、今やれることは全部やろうという姿勢でチーム改革に取り組みました。その中でも特に大きかったのが、朝練をやめて夜練にシフトしたことです。
以前は朝練のみでしたが、遠方から通う選手が始発電車でも練習開始に間に合わなかったり、授業のために早退せざるを得なかったりと、課題があったんです。
とはいえ簡単に夜練へ変えられるかというと、そうではありませんでした。練習場所が確保できなかったのです。グラウンドを探し回り、スポンサーさんの協力も得て、なんとか夜練を実現することができました。
僕たち幹部の熱量を他の選手も感じてくれたのか、チーム全体のモチベーションも上がり、そこから良い方向へ進み出したと思います。
トップとサテライトの2チームに分かれて活動
ー 幹部であるお二人が主導となり活動されているんですね。チーム体制について詳しくお聞きしたいです。
塩野 学生主体で運営しているので、そもそも代によって体制が異なります。ただ、基本的な構造は共通です。主将、副主将、そして僕の務める部長といった役職があり、その下に各部門を配置。各部門では、スポンサー対応やグラウンド確保、練習試合の調整などを行い、選手とスタッフは全員がどこかの部門に所属します。
小川 戦術や分析は幹部の複数人で考えています。ですが他の代では主将がそれら全てを担うなど、運営方針は代ごとにかなり違いますね。
ー サッカー経験の有無や強豪校、クラブチーム出身など、選手たちのバックグラウンドについてはいかがですか。
塩野 入部条件は「やる気」だけなので、プロを目指していた選手から高校時代はサッカーをやっていなかった選手まで在籍しており、実力や経験には大きな開きがあります。そのため、トップとサテライトにチームを分けて練習しています。
トップは関東・都リーグ昇格を目指して戦う一方、サテライトは、関東・都リーグ所属大学のBチームが参戦する「サタデーリーグ」で実戦経験を積んでいます。
小川 僕は高校までプロを志し、レベルの高い選手たちの中で揉まれながらサッカーをやってきました。ですから、このようなバラエティに富んだ選手層のチームは新鮮です。そして、それ以上に難しさを感じます。
塩野 特に難しいのは、チーム全体のスキルを押し上げることですね。トップの選手だけが高みを目指すのではなく、サテライトからもトップに絡む選手が出てくるのが理想なんだと思います。ただ現実はなかなかできていないので、試行錯誤しながら練習しているところです。
練習量が少なくても、勝機はある
ー お二人ともサッカーでの高い実績を持ちながら、スポーツ推薦を使わない形で東京理科大学(以下、理科大)に進学されました。その理由と、大学でもサッカーを続けるに至った経緯について教えてください。
小川 高校時代は真剣にプロを志望していて、J3のチームに練習参加もしていました。ですが将来を考えた時に、サッカー選手としての人生を歩むことに不安を感じたんです。
今思えば、そこまで深く考えなくてもよかったのかもしれません。でも、当時の僕は悩んだ末にサッカーと同じくらい頑張っていた学業を優先し、理科大に進みました。
サッカーをする生活が当たり前だったので、入部は自然な流れでした。毎日の勉強や受験は、サッカーがあったから頑張れたと思っています。逆に自分からサッカーを取ったら何も残らないかもしれません(笑)。それくらいサッカーが大好きです。
塩野 僕は高校3年の時にサッカーを一時期やめたんです。それもあって、指定校推薦で理科大に入学しました。
サッカーから離れた理由はいくつかありますが、なかでも大きかったのは所属クラブのリーグ降格です。降格したのは自分たちのせいという罪悪感と悔しさでサッカーに対する意欲が低下してしまいました。
さらに、本気でプロを目指すメンバーたちの熱量が本当にすごくて、自分はそこまでではないと思ってしまったのも、サッカーをやめてしまった理由の一つです。
なので大学入学後はしばらくサッカーから距離を置いていました。でも、強豪校や海外へ行った元メンバーたちを見て、サッカー熱が次第に再燃したのです。そこで体験入部をさせてもらったところ、みんな温かく受け入れてくれたこともあり、途中入部をさせてもらいました。
ー理科大というと理系難関大学の1つで、勉強が大変そうなイメージがあります。それでも体育会の部活に入る意義は何だと思いますか。大学でサッカーをやって良かったと思えることを教えてください。
小川 高校時代の厳しい指導や挫折を経て、むしろ今の方がサッカーを心から楽しめています。チームを率いる立場として責任は重いですが、その中でも充実感を味わえているのは大きな収穫です。サッカー部に入ったおかげで人生がすごく充実しています。
塩野 僕も今は大きな充実感を感じています。相手が強豪だったとしても勝機はある。そのための戦術を考えるのが楽しいです。
1週間のうち6日間を練習に費やしている強豪と比べたら、僕たちの部の練習量はかなり少ないです。平日練習は週に3回ですし、日曜に試合が入ったとしても、軽めの調整を土曜に行う程度です。
即ち強豪と僕たち、どちらが強くなるかといったら、現実的に考えれば僕たちではありません。でも、勝利する可能性はあると思うんです。その勝利はどうすれば得られるか、戦術を考えることに今は大きなやりがいを感じています。
学生主体だからこそ勝利の価値が大きい
ー 学生主体の運営ということで、他にもユニークな取り組みがあれば教えていただけますか。
小川 スポンサー獲得も自分たち学生が担当しています。先輩方は、企業様へ熱意を伝えるために手書きの手紙を送り、作成した資料をもとに直接プレゼンテーションしています。その結果、2社の企業様に協賛をいただくことができました。今回の夜練も、協賛企業様のご支援によって実現したんです。
塩野 リーグ戦参加の条件である監督や社会人スタッフ、試合時の分析担当など、専門性の高い役割については外部の方々にご協力いただいています。ですが、チーム運営は完全に自分たち主体です。こんなにも学生の裁量が大きい部はあまりないと思いますね。
ー チームとして、またリーダーシップを取る立場としての目標を伺いたいです。
小川 2部リーグ優勝、そして1部復帰。これだけです。
実際に手が届く位置に今来ているので、最後まで気を緩めることなく優勝を目指して戦っていきたいと思います。
塩野 部長としては、このままペナルティポイント(※)を加算されることなく、運営もリーグ戦も無事に終えることが目標です。
※ 東京都大学サッカー連盟の規定で、試合運営の不適切対応や会議の無断欠席などで加算。各大学10ポイント未満が求められる。
ー最後に、理科大サッカー部の魅力とは何でしょうか。
小川 最大の魅力は、競技面と運営面の両方で大きく成長できることです。高いレベルでサッカーに打ち込める環境がある一方で、チーム運営では企業様とのやり取りや外部との調整など、社会に出て必要となるスキルを実践的に学べます。学生の間にこのような経験ができることはかなり価値があると思います。
塩野 練習メニューや戦術はもちろん、活動のほぼ全てを自分たちで考えて行っているからこそ、勝利の瞬間は格別です。
昨年1部で掴んだ唯一の勝利では、まるでリーグ優勝でもしたかのようにみんなで喜び合いました。もちろん降格時は悲しみも味わったのですが、みんなで一喜一憂できることも、僕たちのチームの良さだと思います。
学生主体で運営を行いながら、リーグ戦で勝ちを積み上げていくという厳しい環境を走り抜けた東京理科大学Ⅰ部体育局サッカー部さんはとても魅力的でした。
小川選手、塩野選手が揃って口にした“大きなやりがい”を感じられる経験は、なかなかできるものではありません。社会に出る前に目標達成へ向けてやりがいを持つことができたお二人を見て、羨ましい気持ちになりました。これから何かに全力で打ち込みたいと思っている高校生には、このチームの一員になることも選択肢の1つとしてぜひ考えてみてほしいです。
チームが気になったら…
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