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「背が低くても武器は作れる」春高バレー常連、広島桜が丘高校 門田岳史監督が築いた36年の軌跡

広島桜が丘高等学校女子バレーボール部

監督:

門田岳史(もんた・たけし)さん

広島桜が丘高等学校の前身「広島第一女子商業高等学校」の時代から36年間、女子バレーボール部の監督を務める。赴任後3年目で県大会ベスト8に導く。春高バレーやインターハイ等の全国大会に4回出場。

ひと目でわかる! チームの特色

  • 全国大会4回出場。ベスト16の経験も
  • 背が低いチームだからこその戦い方を身につける
  • バレーボール“以外”を大切に

広島市東区にある広島桜が丘高等学校は、クラブ奨学生制度を設けるなど、スポーツ全般に力を入れています。

なかでも女子バレーボール部は、前身の広島第一女子商業高等学校の時代から続く、伝統ある部活のひとつ。春高バレーやインターハイといった、バレーボールチームなら誰もが目指す全国大会に合計4回出場している実績もあります。

36年前から同部の指揮を取る門田岳史監督に、今のチームの特徴と強さの秘密を伺いました。

令和に入って快進撃が続く! 昭和から令和への時代の流れ

ーまず、最近の戦績を教えてください。

令和5年に開催された全国私立高等学校バレー選手権で全国ベスト8が、最近の戦績です。そのほかにも、令和2年、令和3年は春高バレーで、令和元年はインターハイで全国大会に出場しました。令和2年のインターハイも県大会で優勝し全国大会の出場権を獲得しましたが、残念ながら新型コロナウイルスの影響で全国大会のみ開催が中止に…。令和2年の春高バレーでは、ベスト16に入りました。

ー門田監督のバレーボールや指導のご経験もお聞きしたいです。

私は、中学校の部活でバレーボールを始めて大学生まで続けました。私の父親がバレーボールをしていたので、幼い頃からバレーボールという競技は身近な存在でしたね。父親に連れられて、試合を観に行くことも多かったですよ。その頃はバレーボールに興味がありませんでしたが…(笑)。

バレーボールを始めると父親は喜びましたが、ライバル校に勝てない日々で、私自身は本当にしんどかった思い出があります。今もライバル校に勝つんだ!という思いで監督をしていますね。

大学卒業後は、広島桜が丘高等学校の前身である広島第一女子商業高等学校の女子バレーボール部の顧問に赴任しました。それからずっとここで指導しています。

ー長く同じ学校でバレーボールの指導をしていると、昔と今で違う点に気づいたりしますか?

延べ200人以上の女子バレーボール選手を見てきました。最近はバレーボールをしたくてこの学校を選んでくれる選手ばかりなので、何も言わなくても自ら取り組んでくれます。

昔はまったく強くなく、地区予選でも1回勝てば良いくらい。クジでうちに当たる学校はラッキー!と言われるようなレベルだったんですよ。そのころは選手にバレーボールをさせるだけでも大変でした。でも、就任から3年目で県のベスト8に入ることができました。そこから目標を高く掲げるようになり、今に至ります。

バレーボールチームでは珍しい平均身長の低いチーム

ーバレーボール選手としては背が高くないチームとお聞きしました。

うちのチームは全体的に背が低いです。過去と比べても他のチームと比べても低いと思います。今年もですが、ここ数年170cm超えの選手はチームに片手もいません。
春高やインターハイで勝てた試合の年も、最高身長が168cmでした。

ーバレーボールは高さも重要だと思いますが、背が低いチームでも勝てる理由はあるのでしょうか?

うちは伝統的にレシーブが良い。レシーブはどこに出しても恥ずかしくないチームです。粘り強いチームとよく言ってもらえますが、日々の練習もレシーブが中心です。

男子だとアタックの強さやスピードが速いので、拾ったらもうけもんですが、女子のバレーボールは男子と違い、拾って当たり前。ブロックポイントがあればラッキーです。普段からブロックの上から打たれるものだと思って練習しています。

ー小さくても勝つためにはポジションなども重要でしょうか?

数年前から1人に2つのポジションをさせていました。ミドルの選手がサイド、アタッカーがセッターなどですね。全国大会に連続出場していた年は、2セッターでしたよ。他のチームがやらないことをやることで、“背が低くてもどこからでも攻撃できる”という武器ができます。

ーオポジットのような攻撃特化型の選手がいないイメージですが、身長も関係あるのでしょうか。

攻撃専門のチームではないし、個人的にオポジットを置いた戦い方があまり好きではありません。うちは、全員でレシーブに向かいます。それに、大学に行ってバレーを続けると想定したら、レシーブができる選手を育てた方が今後の出場機会の確保になると思っています。

バレーボール“以外”のところに強さの秘密がある

ーチームの雰囲気はどうですか?

人のために頑張るという選手が多いです。“誰かのために”という感情は、この年代の子にはなかなか生まれにくいかもしれないけれど、それができるのがバレーの良いところですよね。

それに、前は島から通う選手もいたほどうちは遠方から通う選手が多いのですが、うちには寮がありません。すべては保護者の協力があってバレーボールができています。周りが選手のために動いてくれるから、選手も結果で返そうとしてくれるのかもしれないです。

ー部活動を通して人を想う心も育ちそうですね。

うちはそんな指導ばっかりです(笑)。勝つためにはどうするべきか、1人ではできないスポーツだからこそ考えなければいけません。人との関わり方を考え、人を観察し、理解することも教えています。

声を出すこともそうです。自分のしようとしていることや意見を伝えなくてはいけないので、大きな声を出さなければいけません。そして、相手のことを知ろうと思ったら、まず自分のことを知ってもらう努力も必要になります。
ボールを触る以外の部分の指導にも力を入れています。

上手くなくても一生懸命やる選手に入ってほしい

ーどんな選手がチームに合っていると思いますか?

上手くなくても良いので、一生懸命な選手が良いですね。ボールを最後まで追いかけたり、ブロックを飛んだあとの行動まで考えたり、バレーに真面目な選手がうちのチームに合っています。

何度も言いますが、声が出る選手も良いですね。全国大会の会場なんて広いうえに会場の声援がすごくてコートの中からでも声は届きません。そんな中で戦うことを考えると、大きな声を出せる選手に魅力を感じます。

ー卒業後の進路はみなさんバレーボール選手でしょうか。

そんなことはありません。もちろん大学でもバレーを続けたくて進路を決める選手もいますが、なりたい職業のための専門学校にいく人もいます。就職する人もいるので、卒業後の進路はバラバラです。

技術はバレーボール以外の道では役に立たないかもしれないけれど、バレーボールを通して得たものを、次のステージでも活かせるようになれば良いなと思っています。

取材が終わってから「もう一度花を咲かせる」と、ぽろっとこぼしていた門田監督。来年度の選手権に向けて、アツいものを感じられました。また、選手を“娘のようなもん”とも表現され、監督と選手の絆やつながりの強さも伺えました。次のステージを見据えた指導は、卒業したあとも役立つでしょう。今後の活動にも注目したいですね。


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