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林、髙田、エブリン、町田…バスケ女子日本代表の「勝利ポイント」徹底解説!

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女子バスケ日本代表はパリ大会をどう戦うのか。元女子バスケ日本代表で、現在は2024年度3x3日本代表サポートコーチを務める伊集南さんに、女子バスケの見どころをお聞きしました。

教えて、伊集 南さん!
女子バスケ、日本の勝機は?

#1 女子日本代表の特徴や強みとは?

経験豊富な日本代表の特徴やポジション別のキープレーヤー、初戦のアメリカ戦予想等、観戦がさらにワクワクすること間違いなしの、伊集さんによる独自解説をお届けします。

ー女子日本代表の特徴や強みを教えてください。

伊集さん メンバー12名全員が東京大会はじめ過去の大会経験者です。とはいえ、経験値から選ばれたというよりは、チームプレーにコミットできる選手たちが呼ばれていると解釈するべきでしょう。

監督の掲げるチームコンセプト“走り勝つシューター軍団”として、強豪相手に勝ちにいくこの12名は、大変なセレクションを経て選ばれた勇士たちです。まず、敬意を表します。

強みは、12名全員がシューターですから、相手が止めてきても全員の力で乗り越えられること。また、身長が1番高くても髙田真希選手の185cmと、出場国唯一のスモールラインナップで、素早く動けることも特徴です。

そして何と言っても、極限の状態となっても笑顔でいられるのが、最もすごいところだと思います。バスケットボールはハードなスポーツですから、最後は無酸素状態と言ってもいいくらい過酷なんですね。

そんな状態でも、日本はエナジーを上げて楽しそうにプレーができるのです。これは、相手からしたら相当嫌だろうし、脅威だと思います。

#2 どんな人? 恩塚亨ヘッドコーチについて

ー恩塚亨ヘッドコーチについてもお願いします。

温厚でありながら、すごく芯のある人だなと思います。選手、スタッフと真摯に向き合い、今の日本代表を作り上げているところをリスペクトします。

そしてやはり、世界で日本がどうやって戦えるかということを突き詰めて考えてくださっている。このことは、普及育成世代から持つべき視点であると、改めて考えさせられる部分でもあります。

#3 ポジション別! キープレーヤー

ーポジション別に、キープレーヤーを挙げていただきたいです。

<ポイントガード(PG)>

宮崎早織選手です。東京五輪からステップアップしたプレーヤーで、スピードも状況判断も世界トップレベルの速さを誇ります。スタメンを担えるほどにもなりました。彼女はきつい時でもスピードが変わらない、むしろ極限の状態になるほどに、エネルギーを上げていけるガードのひとりです。

ガードと言えば、町田瑠唯選手も欠かせません。東京大会では1試合18本という素晴らしいアシスト記録を打ち立てました。最初からでも途中から出ても鍵となる存在なので、彼女にも注目しています。

<シューティングガード(SG)>

山本麻衣選手です。東京大会では、3x3の日本代表メンバーでした。彼女の爆発的得点力はマストになるでしょう。彼女は身長が163cmと小さいほうですが、フィニッシュスキルが本当に多彩で、海外の大きい選手にどんどん立ち向かえる選手です。バスケをやっている子どもたちはぜひ見習ってほしいなと思います。

<スモールフォワード(SF)>

林咲希選手も欠かせない選手のひとりです。シュートチャンスがない時はリバウンドを拾ったり、コートを走り回ったり、数字には表れない目立たない仕事を積極的にしてくれています。そこでコツコツと徳を積んでいる選手ですね(笑)。

そのような地道にシュートできるシチュエーションを作り出しているからこそ、周りからの信頼があったり、チャンスが回ってきたり、そしてちゃんと決めきることができるのです。私は、そんな彼女のプレーが大好きです。

<パワーフォワード(PF)>

馬瓜エブリン選手です。馬瓜姉妹のお姉さんのほうですね。まさに、先述した女子日本代表の強みを体現してくれています。常にアグレッシブで、エナジーをどんどん上げることができるキープレーヤーです。

昨年から復帰して、代表まで上り詰めるパフォーマンスは素晴らしく、多くの人に勇気を与えてくれています。みんなを鼓舞しながら、かつ得点など結果もちゃんと出してくれる選手です。コート内外での貢献度が期待されています。

<センター(C)>

髙田選手です。長身でフィジカルの高い海外の選手をひとりで守りきれる力が素晴らしいです。特に、さまざまなタイプのガードに合わせられるスキルがすごいと思っています。常に落ち着いていて、いろいろな状況のなかで今自分が何をしたらいいのかを体現できる選手です。

得点では彼女の3ポイントシュートの確率が、勝敗を左右する肝になってくるのではないかなと思います。

以上がポイント別の注目選手です。スピーディなバスケを展開しながら選手たちが判断する部分もあれば、チームとしての戦略、戦術も出してくると思うので、毎回特定の選手が活躍するというよりは、各試合12名の誰かがヒーローになるような戦いになるのではないかと思いますね。

#4 初戦のアメリカ、勝機を掴むポイントは?

ー初戦はアメリカです。どんな戦いになるでしょう。

初戦こそ何が起きるか分かりませんが、出だしの入りはかなり大事になってくると思います。

アメリカは日本の強みであるスモールバスケやスピーディさにそこまで慣れていないと思うので、フィジカルで対応してくると思います。打開策は、テンポの速いバスケと、最後までしつこく戦い抜くこと。

当然ながら我慢したり、ディフェンスでゾーンやプレスを仕掛けたりする時間が出てくると思います。ですが粘り強さで、アメリカにフラストレーションを貯めさせて、判断を遅らせたり、いい気持ちでプレーさせない。その中で、日本はスピーディなバスケットをし続ける。物怖じせずに勇気を持ったアタックを誰がするのかがとても楽しみです。

私は、宮崎選手とエブリン選手に期待したいですね。また、東京大会の決勝戦、アメリカ相手に活躍を見せてくれた本橋選手にも注目しています。

アメリカをロースコアで抑えて、10点ビハインドで勝利できたら一番いい形だと思います。

ー日本以外の注目国を挙げるとしたらどこになりますか。

同グループのベルギーです。国のレベルも上がってきているので要注意です。中国もいいバスケをしている印象です。予選は日本とは別のグループですが、勝ち進めば対戦すると思うので、中国に勝って、決勝戦で日本は再びアメリカと対戦してほしいですね。
開催国フランスのバスケにも注目です。

#5 最後に伝えたいこと

ー最後に、総評をお願いします。

選手たちは今、想像以上に責任や覚悟がのしかかっていると思います。注目されているからこそ、選手もコーチもいろいろなことを言われているはずです。ありきたりかもしれませんが、ただただ、バスケを楽しみながら頑張ってほしいです。マイナスな部分は見ずにプッシュして、どうか自分たちのバスケを魅せてくれることを願っています。


監修:

伊集南(いじゅ・みなみ)さん

沖縄県出身。NBAに魅了されて中学からバスケをはじめ、糸満高等学校卒業後、筑波大学ではインカレ優勝、ユニバーシアード日本代表にも選出。卒業後はデンソーで活躍、3x3日本代表に選出。引退後は同社に嘱託社員として在籍しながら2024年度3×3女子日本代表チームのサポートコーチに就任。ほか、3x3代表部会、3x3委員会に所属、Wリーグの理事も兼務。

 

 

パリ大会

 
日程:2024年7月26日(金)~8月11日(日)/バスケットボール競技:7月27日(土)~8月11日(日)
会場:ベルシー・アリーナ、スタッド・ピエール・モーロワ
参加国:男女各12か国

 

女子グループフェーズ組み合わせ

 
【グループA】セルビア(10位)スペイン(4位)中国(2位)プエルトリコ(11位)
【グループB】カナダ(5位)ナイジェリア(12位)オーストラリア(3位)フランス(7位)
【グループC】日本(9位)ドイツ(19位)アメリカ(1位)ベルギー(6位)
※国名の下のカッコ内は2024年2月11日現在のFIBAランキング
※女子予選ラウンドは2024年7月27日~8月5日、準々決勝は8月7日、準決勝は8月9日、3位決定戦と決勝戦は8月11日に開催予定
 

AKATSUKI JAPAN 12名

 
吉田 亜沙美(PG / 165cm / 公益財団法人日本バスケットボール協会)
髙田 真希(C / 185cm / デンソー アイリス)
町田 瑠唯(PG / 162cm / 富士通レッドウェーブ)
宮澤 夕貴(PF / 183cm / 富士通レッドウェーブ)
本橋 菜子(SG / 164cm / 東京羽田ヴィッキーズ)
林 咲希(SF / 173cm / 富士通レッドウェーブ)
馬瓜 エブリン(PF / 180cm / デンソー アイリス)
宮崎 早織(PG / 167cm / ENEOSサンフラワーズ)
赤穂 ひまわり(PF / 184cm / デンソー アイリス)
馬瓜 ステファニー(PF / 182cm / CASADEMONT ZARAGOZA)
山本 麻衣(SG / 163cm / トヨタ自動車 アンテロープス)
東藤 なな子(SF / 175cm / トヨタ紡織サンシャインラビッツ)

※平均:173.6cm
※ポジション(P)=PG-ポイントガード、SG-シューティングガード、SF-スモールフォワード、PF-パワーフォワード、C-センター
※JBA公式サイトより抜粋
 
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